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僕の、村
しおりを挟むチラッと見ただけなので詳しい場所とか分からなかったが、どこかの宿屋にエヴィナと会いたい者がいるそうな。と言う訳で受付嬢に場所を教えてもらい、待ち合わせの宿屋に行く事になった。
「ここか?」
「僕に聞くなよ」
エヴィナは聞くが、当然僕には答えられない。受付嬢から聞いた場所はちょっと高そうな見た目の宿屋が向かい合わせになっていて、高そうな宿屋だからすぐ分かると言った受付嬢をここに連れて来て問い詰めたい気分になる。だが違うなら反対側の宿に行けば良い話だ。とにかく中に入って聞いてみる事にした。
「エヴィナ様…、はい。承っております」
カウンターに立つ執事服の男性に聞いて、ここが正解の宿だと分かった。ロビーの端にある席に掛けて待てと言われて待っていると、執事服に連れられて女性が階段を降りて来た。
「お嬢、探しやしたぜ?」
「何だお前ぇか。良いトコ泊まりやがって」
階段を降りて来たのはエヴィナのメイド、ライラであった。メイド服からパンツスタイルに変わり、エヴィナみたいな鎧をまとってまるで冒険者みたいだ。
「パー家を辞めて来やした。これからはウェストモーア家に仕えたく存じやす。旦那様、どうぞ好きにお使い下さい」
「オレのメイドじゃ無くなったって訳か」
「奥様のメイドでもありやすよ」
「そか。まぁ良いや」
「貴方様」
「断る理由はないね」「そうでは無くっ」
「…2人共僕の妻だよ」
「俺は?」
「…家族「妾だろ」「お妾ですわね」家族だっ」
「しっかり仕込んでおきやす」
何を?とにかく明日は出発なので、それを伝えて準備をしてもらう。馬がもう1頭必要だし、また金が掛かるな。
「戦車ならちょろまかして来やしたぜ?」
「お、悪りぃヤツ」
「退職金でさぁ。お嬢も乗りたいかと思いやしてね」
なんと、ライラは戦車を馬毎かっぱらって辞めて来たと言う。大丈夫なのか?聞くと払い下げる寸前のを持って来たと言うが、馬齢8歳ってまだまだ現役じゃないか。
細かい準備があると言うのでライラとは別れる。今日の分の宿代を払っちゃってるそうなので、合流するのは明日の朝だそうだ。
で、朝。朝食を食べて馬を引き取り西門に向かうと、門の外には既に戦車が停められていた。アレが、戦車か。
初めて見る戦車は多くて2人が前後に乗れそうな小さな荷車で、軽さと速さ、そして取り回しを重視した造りになっている。車輪は細く、沈み込むようにハの字に開いていて2つしか付いてない。落ちたら大怪我間違いないぜ。
「おはようございやす。お嬢、こっちに乗りやすかい?」
「お、良いね。…だが止めとくぜ。ハキ、お前ぇソイツに乗せてもらえ。その方が早く行ける」
エヴィナは戦車に乗りたいのを我慢してハキを乗せろと言った。この中で馬を操れないのはハキだけだ。車の中でじっとしていた方が安心ではあるな。
「旦那様ぁ」
「僕も戦車乗ってみたいんだけど。良かったなハキ」
「…ちぇ」
時間があれば僕も乗せてくれるそうだ。ハキは少しグズったが、諦めて戦車に向かい、車の前側に安置された。
「お、おお。馬の尻が近ぇ…」
「本来は立って乗るが、初めてだろうし座ってろ。落ちたら捨てて行くからな」
「お、おう…」
落ちたら拾ってやるか。
「うおーっ速ぇーっ!怖ぇーっ!」
渋々乗った戦車だったがすぐに楽しそうに怖がりだした。良いなー。実際の速度は速歩程度だが、地面と近いから早く感じるとエヴィナは言う。
「ハマると病み付きになんだよな」
「良いなー」
「旦那様~っライラの姉御が乗り方教えてくれるってー!」
「良いなー」
休憩中は馬を休ませなきゃだし、移動中は馬が1頭空いてしまうので、廃村に着くまでの間僕は一度も乗せて走ってもらえなかった。
「ここがユカタ村ですね?」
「何その村名」
「旦那様の村ですから。ウェストモーア村にしやすか?」
廃村に着くとメイドが村の名前を勝手に付けた。だがいつまでも廃村じゃいけないんだよな。
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