【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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風呂のある、家

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 僕とハキが掘った2つの水溜まりで皆には馬を洗ってもらう。アルアインさんはプンプンしながら装備の整備だ。僕が装備着けたままぬかるみに入ってったから…。

「ユカタ君、この辺で良いかな?」

「すぐに岩盤だろうから高さは出さなくて良いよ」

 鎧を脱がされ服になった僕はジュンにお願いして石の壁を作ってもらう。北向きに両翼10m程のU字形の内側を掘り返すと、すぐに水が上がって来るのが分かる。沈み込む石壁で上からの流れが堰き止められているのだろう。

「ユカタ君~、靴が泥だらけになるから道を作っても良いかなぁ」

「寝床の分は大丈夫?」

 大丈夫なら良いだろう。乾いた地面へ向けて点々と石柱を生やすと、その上に石の橋を掛けた。人1人通るのがやっとの幅だが、限界まで消費を抑えているに違いない。

「お、お風呂も、良いかな?」

「水浴びの壁?」

「ううん、お風呂」

 お風呂は寝床の近くが良いかも知れない。水は沢山収納出来るので考えを述べると、家の基礎だけでも作ろうって事になり、僕とジュンは皆に断りを入れて拠点に戻った。

「じゃあ、すぐ作るねっ」

「ちょっと待って。この場所水害で水が上がるかもだから、床を高くした方が良いと思う」

「…確かに水場が近いし、そうかも」

 そう言って家の基礎を作り始める。設計図も無しに基礎を作り、橋を作った要領でどんどん床となる石版を敷いていく。結構デカいが、大丈夫か?

「ジュン、無理しちゃダメだよ?」

「私、野営で壁を作りまくったおかげで慣れたみたい。魔力量も増えてるし、効率良く魔力を使えてるんだよ」

 数時間で消える土のブロックだったのが、維持時間が伸び、消滅しない石壁が作れるようになり、石壁が石板に変わり、量も作れるようになったと言う。

 浴室予定地には穴を掘って通水性のある石ブロックを詰め、トイレ予定地には深い穴を掘って石板で壁と蓋をした。

「タマゲルとか、いないよね?」

「滅多に見ないね。少ないのかも」

 今は仕方ないので後々入れようって事になった。入れないと溢れちゃいそうだしな。

「壁を作ったら後はお風呂で終わりにするね」

 屋根は無いようだ。ここまでの移動で一度も雨がなかったから、後回しにする判断らしい。魔法の石板で周りを囲み、部屋の仕切りが出来たら出入りの穴を開けて今日の所の寝床は完成だ。最後に石壁で寝床の周囲を囲み、馬の寝床と敵の侵入への対策を取った。

 次は水周り。浴室に石板の箱を埋設して洗い場の床に石壁を敷く。洗い場の流し水が地面に染みて行くそうで、脱衣場の床も同じく石壁の床にするみたい。

「お風呂楽しみだねっ」

「けど、どうやってお湯にしたら良いんだ?」

「そう、だよね。水魔法が使える人いなかったんだった…」

 楽しみに水を差してしまったが、一々お鍋で沸かして注ぐのは時間が掛かり過ぎるよな。ジュンは腕組みして唸る。何か考えてるのだろう。

「あ、それならっ」

 で、浴槽の真ん中に石板で作った蓋のできる筒が設置された。大きさは一抱え程もあり、持ち上げるのに難儀しそうだが、動かして使う用途はないので浴槽とくっ付けてあると言う。

「どう使うの?椅子じゃないよね?」

「ふふっ、お尻が焼けちゃうよ」

 筒の中に火魔法を入れて、熱で湯を沸かすと言うのだ。知らずに座ったら大惨事間違いないな。1日1回ならレイナでも撃てるだろうし、後でレイナに頼んでみるってさ。

 トイレとキッチン、食卓を作る。石の椅子はお尻が痛くなるので毛皮を切って尻当てにしたが、これも新調した方が良いだろう。

「ベッドは石じゃ、硬いよね」

「今夜は皮を重ねて雑魚寝かな。それより魔力は平気?」

「まだまだ平気だよ?」

 ジュンは平気と言ってるが、寝ないと回復しないので、普段は温存気味にしてあまり使えないのが魔力であるが、寝床と外壁が出来たので、夜警を免除する代わりにもう少しだけ魔法を使ってもらう事にした。









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