320 / 385
肉と、野菜
しおりを挟む畑の整備が早められる事で、ジュンには再び壁の施行に戻ってもらった。そしてロシェルはジュンの護衛に就いてもらう。雑過ぎるからだ。ロシェルのポーチをハキに貸し、同じ作業をさせた所、効率が段違いだったのだ。弁当入れを持ってかれたロシェルは機嫌を損ねたが、弁当はジュンのポーチに入れとけば良いし、セーナ達が帰って来たらハキのポーチを作ってもらう事で納得してもらった。多分今夜は、夜更かしする事になるだろう。
予定通り、眠気を残して起こされて、今日も村の造成に励む。皆謎にやる気があるし、領主の僕が動かなきゃ格好付かないよね。
「なーなー旦那様。畑に何植える?」
湿った草薮にて、地面を畑にするべく掘り返しながらハキは畑の未来を夢見る。麦に色々な野菜、果物も良いよな。僕も買い付けに行きたかったよ。
「セーナ達が買って来る種だからなぁ。戻るまで僕にも分からないよ。みんな、町でどんな野菜が売ってたか覚えてない?」
「根菜は多かったわね」
「実物もありましたが樹生なのか草生なのかは不明です」
僕も少しは覚えているが、皆にも思い出してもらう。野菜は根物、葉物、実物の順に出荷量が多かった。そして葉物は種類が多く、実物、根物と少なくなっていたハズだ。根物の収量が多く、実物は少ない事が窺える。時期的に少ないって事もあるかも知れない。そして、高くて買うのを見合わせた果物。マキの言葉は野菜と果物が合わさったモノだ。フサベリーやアカナスは草生の果物と野菜、名前が分からない果物は枝が付いてたので多分樹生だと思う。とにかく名前の分からない物が多かった。
「兄貴ぃ、俺達肉だけでも全然良いんだぜ?」
「草も美味いって分かったけどよ、肉ならそこらで獲れんじゃん」
遊んでやれなくて悪いが野菜も食わないと栄養偏るぞ?それに幼虫集めて遊んでる男の子達は大事な事を忘れてる。
「獲ってもらって食わせてもらってる、だろ?」
「そーだぞガキ共。腹一杯食わせてくれる旦那様は離しちゃいけない旦那様だ」
「お前だってガキだろーが」「俺等と歳変わんねークセに」
そんな事言ったら僕とも5つ6つしか変わらないじゃないか。彼等よりはお姉さんのハキは眉間に皺を寄せつつも、諭すように言葉を連ねた。
「俺はお前ぇ等より小せぇ頃から働いてっかんな。町の大人はな?働かねぇと食わせてくんねーんだ。んで、何かに付けて殴りやがる。旦那様に会って、クソ共から逃げてなきゃ、こんなに良い暮らし出来なかったぜ」
「俺達悪い子だもん。親に捨てられた捨て子だもん。なー」「なー」
「遊んでて良いぞ?」
お姉ちゃんは親の顔も知らないんだぞ?口を噤んだハキを撫で、男の子達に諭す。
「働き方を覚えるのは大事だと思うし、学を付けるのも将来の金に繋がるから大事だ。けど子供の頃は鳥を撃ったり走り回ってるくらいの方が子供らしくて良いと思うぞ。村の子なんて農民か兵士、冒険者になるくらいしか働き口ないもんな。後な、お前達はこの村の住民で、僕達の家族だよ」
「俺、狩りするヤツになりたい!」「俺も!」
将来の展望が見えているのは親の影響だろうな。だがそのためには何が必要か。後々考える事もあるだろう。その考えが思い付くまでは走り回っていれば良い。僕だって似たようなモンだったしな。
一方の女の子達は大人達にくっ付いてお手伝いしてる。働き者はモテるそうで、男の子達と遊ぶ機会も減ってるみたいだ。男の子達が僕達の傍で幼虫掘りしてるのは、遊び相手が居なくて寂しいからなのかも知れないな。そんな訳で、午後はロシェルと2人で追い掛け回してやった。が、捕まえるのは専らロシェルで、僕は始終追い立て役であった。男の子達曰く、ヒトにしとくのが勿体ない。尻尾と耳の無い獣人に違いない、だそうだ。ヒトの形をしたウォリスだと、僕は思ってる。
30
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です
再投稿に当たり、加筆修正しています
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる