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言葉の、刃
しおりを挟むセーナ達が村を出て20日。後4~5日は帰らないと思うが、この20日で村は一回り姿を変えた。
まずは外壁。村全体を囲う壁が厚みと高さを増し、落ちたら危ないと言う事で二段構造となった。それでも一段4mはあるので落ちたら怪我をするだろうし、外側に落ちたら助かる見込みは無い。内側は斜めになっているので怪我しない事を祈る。
次に家。壁を厚くする事で獣人の家を改築する事になり、せっかくなら僕達の家も壁に付けようと言う事で門の左右に二階建ての家が新造された。門の上にも建屋があり、上から土魔法の石板を落とす事で閉門出来る仕組みだ。開ける時は魔法を解く必要があるが、外から人が来る事は無いのでここは閉めっ放しだ。僕達の家があった所は厩舎として作り変えられ、安全に馬を寝かせる事が出来るようになった。
風呂と炊事場はそのままだが、家へと繋ぐ屋根付きの通路が出来た。通路は内壁としても使われるので中は暗いが、モンスターの油脂で簡易的なランプを作ったので移動については問題無い。獣人達は明かり無くても歩けてるしな。
拠点と水場、水場と畑を内壁で閉じた。これは水害対策だ。水害はまだ経験無いが、なった時は水源一帯が水に覆われる事だろう。東西の移動が出来るように、内壁の上に通路を設けてもらった。手摺りも無いので落ちたら怪我なのはここでも変わらずだ。
村の西、湿った草薮は畑に変わり、一角は堆肥作りの場所として囲われた。そこには草薮から排除された草と食事に使われなかった生ゴミ、そして食事の後に出た物が混ぜられて堆肥になる日を待っている。子供達は近付かない。僕も近付きたくないが、僕のポーチを犠牲にしたのでそのまま僕の仕事となってしまった。新しいのを作ってもらう予定だ。
男の子達が成長した。とは言え遊びの延長だが、2人は外壁に登って見張りをするようになった。朝食食べたら1周回り、遊んで昼飯食って昼寝して、夕飯前に1周回る。たまに獲物を見付けると、大人に言って狩りに連れてってもらってる。
女の子達は逆にあまり変わらない。元から働き者だったからな。料理や洗濯と言った家事も出来るようになり、僕の居た村ならもう唾を付ける男が出始める頃だろう。
「レイナ様ァ、旦那様の目がいやらしいですゥ」
「マキ姉…あたし達、犯されちゃいます?」
「あらあら、いけない旦那様ね」
「旦那様は素晴らしいお方ですよ」
酷い話だ。ちょっと見てただけでいらやしいだの犯すだのと冤罪を吹っ掛けられる。ませたモンだ。
「僕はいけない旦那様だから二度と話し掛けないでくれ。謝罪は受け付けないから」
「ユ、ユカタ君っ、そんな事言っちゃダメだよ!?」
「面と向かって悪口を吐かれたんだけど?僕皆の悪口言った事無いんだけど?」
ジュンは女の子達を弁護する。悪気は無かったとか、まだ子供だからとか。
「諌めるのも大人の責任だよね?なのに一緒になってさ」
「そ、それは私が悪かったわ。この通り、謝るから皆は許してあげて」
「お静かに」
話を割ったのはエリザベス様。良く通る声は皆を黙らせる力がある。
「小さい子が起きてしまいますわ。貴方様、皆の不手際は私の不徳の致す所。以後、この様な心無い言葉を使わぬよう徹底致します。どうか、この場は収めて頂きとう御座います」
エリザベス様が腰を折り、頭を下げる。何か言うまで姿勢を変えないつもりだろう。
「…任せるよ」
正直、誰に言われても僕のヘソは戻らない。この場に居たくない気持ちでいっぱいの僕は畑の隅の農具小屋へ逃げ込んだ。
「引っぱたいちゃえば良かったのに」
「何でいるんだよ」
1人で入ったハズなのに、なぜかロシェルがそこにいた。あの場に居なかったと思ったが、まさか居たのか?
「ユカタはさ、あの子達としたい?」
「別に」
「だよね。あンたおっぱいおっきい方が好きだし」
抱き着いて、僕の顔を柔らかさで包むロシェルに、ちょっと泣いた。
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