【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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魔法から、物理へ

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 義母様の部屋の隣を使い始めてから7日掛けて巨木の処理をし、1日空けての9日目。今日から門前の壁の新築となる。ジュンにより門と一部の壁、発着場との隙間にある詰め物が取り除かれると建築士達により整地がなされた。

「深くまで足場を埋めたようですが、これじゃあまだまだ浅いですぜ」

 土台が消えて凹んだ地面を見た弟子の1人が感想を述べた。実際の土台はもっと深く、穴を掘って攻め入る敵が諦めるだけの深さまで土台を埋めるのだそうだ。物理建築では壁の表裏は切り出した石を隙間無いように削って石垣にし、中に砂利と土を詰めて嵩増しするんだって。そして空堀のある砦だと、敢えて空堀に降りてそこから穴を掘られたりするのだとか。敵が来ないように空堀を掘ってたのは間違っていたようであり、この土地だと岩盤のある約8mまでは掘らなきゃいけないらしい。街の壁ってそこまでやってんのか?聞いてみると、こんな事してるのは城や砦だけらしい。だがココは隣国との境界に当たるので、砦としても成り立つよう義母様が指示なさったと言う。なので岩盤に届くまで土砂や粘土を収納し、内と外に切り出した石を粘土で挟みながら敷いて行く。そして内側に残土と水を流し込み、上から石を乗せて転圧した。この状態で水を回収すると重石が下がり、締まった土に変わる。コレを地上に出るまで何度も繰り返し、最後に水平になるよう薄く削ぐように回収して土台が完成した。物理建築だと石を叩いたり削ったりして水平を出すんだそうな。

 昼食を挟んで午後は出入口を作る。このために特別に切り出した巨石を並べ、積んで行く。内装は魔法建築で作るので、骨組みを建てる感じで壁と屋根になる四角くい通路となった。

「領主様、やっとるかの」

 棟梁兄が仕事の合間を縫って見に来たが、僕の作った出入口を見てダメ出しをした。

「土台はソレで十分だが、上は全部撤去だ」

「やり直しって事?」

「そうだ。そんなんじゃあ崩れちまうわい」

 言われた通りやってみる。一旦全てを回収し、1段乗せる毎に削って水平を出し、段を重ねて屋根を乗せた。屋根も隣と密着するように隙間を削り、粘土が要らないくらいピッタリ密着させた。

「どうじゃい?」

「凄い。見違えたよ」

「外は魔法で塗ったくっちまうがな、一番重要なのは芯なんじゃ。コレだけの事で寿命が100年、1000年と変わって来よる」

 大型の荷馬車が通れる通路が4つ出来て夕方。本日の仕事は終了となる。他の仕事に就いていたジュンに通路の中や手付かずな場所を埋めてもらった。

 集合住宅と外壁の建築が並行して進められる中、ジュンを筆頭にした何人かは紙の生産を始めていた。水が使えて匂いが届きにくい南の壁際、水無川の上に煙突のある高床の建物を作って紙の原料になる草を煮ている。作り方も変えたそうで、自然に水分を落とす方法から原料を押し固める方式に変えたと言う。重量があって大きくは作れないが、この方が表面が滑らかになるそうだ。

 色々な仕事を任されていたアルアインさんから仕事の手が幾つか離れた。皮の加工が獣人達に任せられるようになり、鞣し皮や膠の生産が始まった。今の所コレ等はポーチの材料としてしか使われないが、いずれは他の物の材料としても使われるらしい。同時にポーチ作りも複数人体制で生産されるようになったと言う。

 手の空いたアルアインさんはポーチの出来具合を見ながら金属加工に手を付けた。まだインゴットを作って貯めてる段階だと言うが、金銀鉄の塊が出来たそうで、出来上がった金の延べ棒は義母様の部屋に飾られている。その内現金化して皆の給与にするのだと。

 皆の給与を掘るために、僕は毎日壁作りに勤しむ。一日で得られる量は金貨1枚に全然満たない程度だが、平地全体を掘り返せばそれなりの量になるはずだ。野菜作って売った方がお金になりそうだけどな。










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