女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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なーんかヤな予感

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 大きい門が閉まってしまった。今夜は泊まるしかない…と思ったら小さい門から出入り出来るとテイカ談。あまり利用して無かったので忘れてましたてへぺろ、と。

飯屋でゆっくり夕飯食って小門に向かうと、小門からカンテラを持ったサミイが入って来た。
なーんかヤな予感。

「家族が帰って来ないのか?」

「あ…、カケルさま!門が閉まっちゃったので外に泊まってると思ったんですけど、居なくて…。」

「街道沿いを来るんだろ?」

「はい…」

俯いてしまった。抱き締めて撫でてやる。

「テイカ」

「お任せ下さい」

話の分かる娘で助かる。テイカはサミイのお世話をしつつお留守番。武器がナイフだけでは心許無いからな。
イゼッタを背負い、装備を持って外に出た。

(クリープして門から逃げる。サミイの親の居る場所まで移動してクリープ)

 真っ直ぐな街道を滑る様に進む。この時間の畑ゾーンは誰も居ない。もしかしたら麦畑でイチャコラしてるカップルが居るかも知れんが。

(人が居なければ高度四百ハーンまで加速)

すんなりと空に飛び上がった。
街道沿いを真っ直ぐ行くと森に入る。ここからは野獣とモンスターの縄張りだ。
程無くして減速した。この下に居るのか。
真下に移動すると馬車的な何かが一台倒れてる。馬的な動物は十匹程度の犬っぽい野獣にお食事されている。人はどうやら外には居ないようだ。

「イゼッタ、やれるか?」

「愚問」

背負った肩から両腕を突き出すと、指先から放たれた十本の電ノコが犬っぽい野獣をバリバリ切り裂いて行く。野獣の悲鳴が無くなると、辺り一面血塗れの肉片だらけに成り果てた。
なるべく血の着いて無さそうな場所に降りる。

「サミイが心配してたので来た冒険者だ。生きてるかー?」

家族の名を出せば警戒心も和らぐだろう。
馬車的な乗り物から声がした。

「もっ、もう大丈夫なのか!?」

「荷を引く家畜は食われちまったし、辺り一面血の海になっているが大丈夫だ」

「早く逃げないと血の匂いで新しいのが来る」

「た、助かうわ!なんじゃごりゃあ!?」

女の声で出て来るとは現金な奴め。

「荷車を捨てるか起こすか選べ、時間は無いぞ」

「お、起こすから手伝ってくれ!」

岩を担いで鍛えた怪力が火を吹…重いぜ…。
ほぼ俺の力で何とかドカッと起こしたが馬的な動物も居ないし、押すか引くしかないんだよな。

「キャッ!」

「中に居るだろうとは思っていたが奥さんの方も無事だったようだな」

「あんた、何でそんな事まで知ってんだ…?」

「俺はサミイのトコの客だからな。知り合いでも無きゃわざわざ助けに来るかよ」

「そ、そうか…」

取り敢えずイゼッタと親父を乗せて馬的な動物の代わりに荷車を牽く。さて、命掛けない程度に頑張るか…。

(この場から街に向かって死なない程度の速度で逃げる!)

バキッ

「うぐぇぇぇ…」

人体が出すべきでない嫌な音と共に、荷車が出した事の無いような速度で走り出す。

(馬具の革帯を肩に掛けてて良かった。腹だったら内臓飛び出てたわ。けどこれ鎖骨折れたな)

痛みで逆に冷静になる。脳内物質もドバドバ出てるのだろう。街まで脂汗たらたら飛び続け、街に辿り着いた。

「カケル様!」

「カケルさま!パパママー!」

テイカに抱き抱えられる俺と、娘と抱き合う父母。門兵も慌てて飛び出して来た。

「ダワンにメリダ!一体どうした!?」

「魔獣に襲われてた」

イゼッタとサミイの父母が状況を報告している間、俺はとても痛かった。テイカに抱かれて落ち着く努力はしているが、イゼッタ早く来てくれー。

「カケル!今終わった」

「イゼッタ様、カケル様は鎖骨を折っているようです」

「すぐ診る」

折れた右鎖骨を見て手を添えたイゼッタだが、回復魔法だと折れたままくっったかないか?

「イゼッタ、このまま回復させたら、折れたままになりはしないか?」

「任せて」

「任せた愛しい妻よ」

指から光のビームが患部に優しく突き刺さる。
湖でやったあれの応用か。骨が動く感覚がして、次第に痛みが消えて行く。イゼッタがホッと息を吐く。
俺もホッと一息、術式終了のようだ。

「明日まで安静」

「仕方ないな。宿が取れれば良いが…」

「宿の事は心配しなくて良い。家に来てくれ」

新しい動物を連れて来たサミイの父ダワンがそんな事を言ってくれた。金はあるけど甘える事にしよう。
特別に門を開けてもらい、動物を荷車に付けて戻って来た。住民特権だな。
そして皆で寝具店へ向かった。

サミイの家でお茶と軽食を振る舞われ、謝辞を受けた。その言葉だけで充分な成果だ。

「パパ、ママ、わたし、カケルさまの所に嫁ぎます」

「…だ「良かったわねサミイ」…」

「うん!直々帰って来るね!」

妻力…。その後ダワンは無口になった。
俺も無口にならざるを得なかった。

「カケル…」

「第二夫人おめでとうございます」

愛妾がとんだ出世だ。
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