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容赦しない
しおりを挟む通された広間の上座には老婆が一人、座布団の上に座ってる。左右に弓を持ったのが一人ずつ居るが、これは護衛だな。
広間の左右もジジババが、お茶を啜って座ってる。
部屋の真ん中に座布団を二枚敷かれたので、此処に座れと言うのだろう。
胡座をかいた瞬間を狙って左の護衛がイゼッタに弓を放つ。
矢は俺の右肩に突き刺さり、護衛の左脇にはナイフを突き立てた。
体に負担の掛かる速さの攻撃に、丈夫な肋骨は砕き割れた。呼吸なんてさせるつもりは無い。
「俺を狙うなら笑い事で済ませても良かったが、妻を狙うと言うのなら容赦しない」
矢傷の痛みも感じぬままに、相手の傷口をグリグリと痛め付け、肺に血液を流してやる。
「がっ!ああ…」
「やはりあの時の男だった」
「お前は何時も止めないな。此奴の事嫌いなのか?」
「あんなの止められないよ。それより許してあげて」
無視してグリグリしていると、呆けて居たジジババ共がざわつき出す。
「かっ、カケル!ジュワ様になんて事しやがる!?」
カヤンの奴も呆けてたか。
「先に撃って来たから身の程を弁えて貰っているだけだ」
「カケルと言うたか。馬鹿な孫が粗相した事は詫びよう。どうか儂の命で納めてもらえぬか?」
「なんで?」
「馬鹿でも可愛い孫だからな」
「隣に居るのも孫だろ?一人居れば良いじゃん?」
「カケル」
…全く、お人好しなお嬢様だ。
ナイフを手放しジュワと呼ばれる馬鹿から離れると、イゼッタが寄り添い回復を唱えだす。
回復掛けても肺に入った血は無くならないからな。存分に苦しめ。
回復の効果で肉が元に戻るのを確認しながら少しずつナイフを抜いて行く。
「イゼッタよ、今更だが肺に入った血はほっとくと固まって腐って結果死ぬぞ。肺の中を洗って水分を出せ。でなけりゃ無駄だ」
「やってみる」
肺の中に水を満たし、血液毎消滅させる。
それが出来なきゃ馬鹿は苦しんで死ぬ。
麻酔も無しにそんな事すればどんな苦しみがあるか想像もつかん。
まあ、外傷が治って肺の洗浄が終わった所で失血死するけどな。
肺を洗われてどれだけ苦しむか見物だったが、失血性ショックで意識が飛んで静かな物だった。
「何とか…」
「どうかな?血を流し過ぎて死ぬぞ。とは言えもう手は無いがな」
「本当に?」
「活性化させて血を増やしてみろ。しかも短時間にだ。出来なきゃ死ぬ」
「何処を…したら良いの…?」
「背骨だ」
背中に向けて光が走る。魔法は万能じゃない。多分死ぬだろうと座布団に座りお茶を催促する。
お茶を飲みつつ五分程待っただろうか。イゼッタの術式が完了したようでぐったりしている。
「何とか…なった…」
「本当に…感謝する」
ババアがイゼッタに頭を下げている。馬鹿は部屋に移動させられた。
「次は殺すからね?」
聞こえがしに宣言すると、此方にも頭を下げた。
「聞きたい事があったけど此奴等じゃ答えられなそうだし帰るか」
「待て、我等に答えられる事なら答えよう」
「なら聞くが、俺の肩に刺さりっぱなしのコイツは何時になったら治してくれるんだ?」
「え?ああ、フォルネ」
「はい」
お前はフォルネと言う名か。弓を置いて寄って来て、魔法でジワジワ抜いて行く。回復した肉が盛り上がって鏃を押し返してる感じだ。
「ジュワは私の姉なの。殺すのだけは勘弁して欲しい」
胡座をかく俺の前で土下座して頭を垂れるフォルネ。目の前には謀らずとも張りのあるズボンがある訳で、じっと見据えて生唾を飲んでいる。
気になって仕方なさそうなので手短に説明すると、ジジババ揃って引いてた。
俺が好んで食った訳じゃ無いのに…。
「で、収める方法を探してんだ」
「私は知らない。お祖母様は知ってますか?」
「知らんよ。そもそもドラゴンを食う機会も無いからの」
だろうな。男で無い時点で解ってた。
「だが、その勃起が状態異常であるならば治す方法は見付けられる筈だ」
異常な状態とは思っていたが、状態異常とは考えてなかったな。確かに、地球では勃起させる毒を持つ虫が居ると聞いた事がある。
探してみる価値はあるな。
此処にはもう用事も無いし、イゼッタが回復するのを待って家に帰った。
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