女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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寝てなされ

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 現在、夜明け前。衰弱してた女以外をそっと叩き起こす。イゼッタの耳元でそっと囁く。

「イゼッタ、起きろ。お留守番させるぞ?」

「っ!起きた、今起きた」

飛び起きてハァハァと肩で荒い息をしている。体に悪い起こし方をしてしまった。次は俺の隣で寝てるシトン。寝る時は隣のベッドでアズと一緒だった筈なんだが…?

「シトン、起きないと口にちんぽ突っ込むぞ?」

「……んぁ…」

寝たふりして口開けやがる。ねじりん棒でも突っ込んだろか。イゼッタが杖の先をシトンの口に捩じ込んでた。

「アズはもう起きてるよな?」

「挿れてくれたら…起きるかもぉ~…むにゃむにゃ」

何と滑舌の良いむにゃむにゃだこと。

「今日も泊まるからその時にでもな」

「…おはようございます。約束ですよ?」

俺はシトンを背負って寝てる女をお姫様抱っこ、イゼッタはアズをおんぶして窓から外に飛んで出た。シトンの実家の穴から外に出て、物音を立てぬよう飛んで荷車に向かった。
荷車が荒らされてなくて良かった。とは言えそもそも何も積んでないし、ホルストすら付けてない。その上形が奇抜で売っても直ぐに足が着く。
静かに乗り込んだら門が開くまで待機だ。

「カケル、朝御飯、用意しとけば良かった」

由々しき事態である。髪を撫でつけそっと囁く。

「寝てなされ」

敷物も無く硬い床では寝難そうだが皆静かにしてた。空腹を耐え忍ぶはらぺ娘イゼッタを撫でながら待つ事数時間。空が白むと共に辺りの時間も動き出す。
ミギギギギーっと扉が開いて街への入場が始まった。それからの行動は早かった。門前に並んでいる商隊は殆どが生鮮の行商の常連組で、ほぼ顔パスで通り抜けて行く。勿論俺達は止められて、ギルド証など見せたり女の入場料を払ったり、後ろの商隊にご迷惑お掛けしてしまった。
無事に街に入ったら「ご飯」…泊まってた宿に荷車を置いてご飯にします。

「ご飯~」

「宿屋で食べるからお待ちなされ」

宿屋前に着いたらイゼッタに女を担がせ窓から部屋に侵入させる。後は荷車を駐車場に置いた俺達が玄関から帰ってくれば良い。《パーティーメンバーがまだ部屋で寝てるから鍵を預ける必要無し作戦》だ。

「カケルーおかえりー」

宿屋の玄関に入るとさっきまで一緒だったイゼッタが飛び付いて来た。女もゆっくり降りて来たので食堂で朝食となった。


 朝飯食って、今は皆でギルドに来ている。シトンとアズの帰還報告と女のギルド証作りだ。身分証が無いと街に入り辛いから作らない訳には行かないのだ。
シトンとアズは別の受付に居たが、受付嬢が泣いて笑って怒ってた。依頼人の商隊と護衛が全滅したと思ったら生きてた事に喜び、モンスターにヤられてた事に怒り、そこから助けられた事に喜んで避妊魔法を受けてないシトンに怒ってた。後は説教なので聞いてない。

「名前はリュネと言います。出身はボラフ村…でした」

「ボラフ…」

此方では受付嬢がリュネと名乗る女の出身を聞いて固まっている。

「生き残り…ですか?」

小さく俯くのを頷いたと取ったのか、その後は速やかに登録が進み、ギルド証は発行された。


「あいつ、説教長過ぎ」

「自業自得よ」

此処はギルドの二階、資料室。お喋りする部屋では無いのだが、俺達の他に人は居ないので大丈夫だ。

「シトン、アズ。これからどうする?俺とイゼッタは教会で魔法の解除をしてもらうつもりだ」

「私は装備の買い直しですね」

「あたいもだなー。その前にちょっくら家に寄るけど」

「仕送りか?」

「シトンは良い子」

「良くなかった、つーか悪かったから。迷惑掛けた分余計に感謝しないとなー」

「あの…、私の事、聞かないんですね」

静かに佇んでいたリュネがポツリと口を開く。

「聞いて欲しいなら聞くが、此処で話せる話か?」

「…そうですね。けど聞いて欲しいです」

「宿に帰ってから」

「急いでないならそれでどうだ?」

「分かりました。それでお願いします」

面倒事で無い事を祈る。



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