女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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おたすけを〜

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 少し早めの夕飯を食べて、俺とイゼッタはナーバーグに向かった。教会の裏手から中に入るとナンシーが集めたであろう住民が十人程、邪神が見下ろす長椅子に座っていた。

「カケル様、お待ちしておりました。どうかこの者達の話を聞いて頂けませんでしょうか?」

聞いてみた。
家を壊すな。
出て行きたくない。
領主だけ何とかしろ。
そんな感じ。

「分かった。好きにしろ。その代わり、明日からの命は自分で守れよ?」

当たり前だだの今までそうして来ただのと憤慨していたので早々に解散してもらった。

「私の力が至らぬばかりに…」

「気にすんな。不快になっただけだ。今夜はしっかり戸締りして寝ろよ?」

「戸締りは欠かさずしております」

「今夜から兵士は敵となる。平民の振りしてナンシーさまーおたすけを~…なんて言われてホイホイ開けるなよ?」

「わ、解っております!」

「イゼッタよ、この言葉を信じるか?」

「多分無理。せんせ、開けちゃう」

「俺もそう思う」

「でしたらどうすれば信じて頂けるのです?」

「人の悪意に気付けない者を信じるのはちょっと無理かなー」

「先程の者達の言葉は「そこじゃ無い」…では、まさかあの中に!?」

「中に、と言うか全員だ。個人絡みが六人、その他四人、外で聞いてたのが一人。揃って仲良く一箇所に向かってるぞ。此処から北西のデカい家だ」

「それ、多分私んち」

「領主館、みたいな?」

「ん」

彼奴等が領主館に入って領主様と話をしだしたら始めようか。ナンシーにお休みを告げると、自分とイゼッタに《阻害》を掛けて教会を後にした。


 上空から見下ろす街並みは、暗い。シルケには街灯は無いが、酒場や家から灯る光で多少は明るいのが俺の知る限り普通なのだ。ナーバーグにはその灯りがほんの数箇所しか無い。教会と数軒の民家に、壁守の松明、そして領主館だ。
《感知》にてウォッチしてる十一人のマヌケは領主館のエントランスで待ちぼうけを食らっている。で、二階の奥の部屋に三人居るどれかが名も忘れた領主様に違い無い。
ドア付近の奴が廊下に出た。コレは執事だろうか?階段の上で立ち止まり…話でもしてるのか、暫くして平民を引き連れ部屋に移動した。

「イゼッタ、街全体に魔法で風を起こせるか?」

「ん、おんぶして」

イゼッタを背負って杖を渡すと、ごにょごにょ唱えて風を出す。壁守の松明を軽く吹き飛ばす勢いで街に風が吹き荒ぶ。

「そろそろやろうか」

人と、街の数箇所を外して指定して、街全体を全て《散開》させた。
木も家も、着てる物も全てだ。
そこにイゼッタが唱えた風が当たるとボロボロと崩れて障害物に当たり、障害物を破壊して行く。
壁は倒れて民家共々粉々になり、領主館は折れた木が玄関を破壊した衝撃で一階が半分程傾いた。
中の奴等は外に放り出され動けないでいる。まあ死んでは無いだろう。
お手伝いに投擲武器石ころを投げ付けてやると、ズボボッと貫通して領主館を半壊たらしめた。

「イゼッタ、平気か?」

「問題無い」

「雨も降らせてやろうかと思うんだが出来るか?」

「普通の雨くらいならやれそう」

魔力を少しずつ送り魔法の生成を促してやると、辺り一面に水の玉が発生し、風に乗って街を溶かして行く。全裸になった兵士は風雨に晒され泥塗れ。俺なら風邪を引く自信がある。

 無慈悲な風雨は深夜まで続いた。と言うか深夜には終わってしまった。イゼッタが寝ちゃったのだ。仕方ないね。兵士や領主館の奴等は泥んこプロレスでもしたかの様な状態で途方に暮れている。
俺は《集結》で魔物を集めた。



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