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酒を飲む振り
しおりを挟む夕飯は無事にスープと焼肉を食べて、今は焼肉を焼いた陶板でソーサーを焼くテストをしている。何気に三人ともソーサーを練るのも焼くのも初めてと言うので三人三様薄く伸ばして交代しながら焼いている。
「いつ引っくり返したら良いのか分からないんだけど…」
「オレは焼けるまで何度も引っくり返したぞ」
「俺は焼けたのを見てから引っくり返したぞ」
「どちらでも良い訳ね」
「「焼けりゃ良いんだ」」
焼けた三枚、各自千切って食べ比べ…、うん。変わらない。
「どれも変わらないと思う」
「オレのは硬いかな?」
「カケルさんのは心做しか柔らかいかも?」
「どうだろう?」
「オレのと比べると柔らかいよね」
「味は一緒なのに、不思議ね」
「牛乳とかバターとか卵とか、酵母を使えればもっと美味いのが出来るんだが、どれも見た事が無い」
「ぎゅう?は分かんないけど卵食うの?まじで?」
「バターは見た事あるけど…、あれ油よね?」
「食う食わんはともかく、材料はあるのか。バターの原料になる乳の事だよ。ギューのニューならギューニューだな」
「お前さん、こーぼってなんだ?」
「果物に付いてる白い粉っぽい奴、見た事無いか?」
「あるー」「汚れだと思ってたわ」
「汚れみたいなもんだしな。あ、代わりにエールが使えたわ」
「エールにバターにミルクに…、卵はちょっとアレだけど、高級なソーサーになりそうね」
「所で、卵ってどんな鳥のを使うんだ?」
「なんだろ?そこらに飛んでる奴?」
「養殖してるタージョはお肉の為に飼ってるみたいだし、卵は食べないみたいね」
「鳥肉養殖してるのは初耳だ」「オレも」
王侯貴族の上の方しか食べられない鳥なのだそうで、バターもそうだが量産されない、されにくい世界なんだとつくづく思う。
今出来るのはエールで練るだけ、と言う事で、明日はエールを買ってこよう。売ってるの見た事無いけどな。風呂に入ってエッチして寝た。
「申し訳ございません。小売はしてないのです」
翌日になり、商業ギルドで話を聞くが、答えは芳しく無かった。予想はしてたがなんで売ってないんだろ?
「なんで?」
ワーリンが俺の心を代弁してくれた。エールは店で飲む物。すぐに味が落ちるので消費の多い店で使うのが普通なんだと。酸化防止剤も密閉容器も無いからな。
結果、酒場にて酒を飲む振りして《収納》すると言う、なんともせこい真似をしているのだが…、二人共、何故普通に飲んでいるのか。
「魚の干したのうまー」
「味が濃いわねー。冷えたエールに合うわー」
楽しんでいるなら何よりだ。酔っ払って寝はがしてる二人を雑木紙で巻いて橇風呂に寝かせ、買い物等してキャンプに帰った。
二人が寝てる間にソーサーを試作する。暖房のお湯の上で温めたエールを水の代わりに入れて練る。練った物は蓋をしてお湯の上で温める。一次発酵したら嬉しい。
暇な時間は無駄にせず工作等する。火の鉄板は一つしか無く料理し辛い。なので竈を作った。上下を塞いだ円筒を作り、横に薪を入れる穴を空けたら煙突を突き刺す。そのままだと俺達は死んでしまうので、竈を壁側に配置して配管を外に繋げた。その上に焼き窯となる半円の蓋を乗せて完成だ。
「ワーリーン、火ぃ着けてくんない?」
「んぐ~」
目は閉じてるが手は伸ばしてるのでやるって事だろう。火口と火打ち石と打ち金を渡すと、わしっと掴んでガチッと鳴らして火種が出来た。すげぇ。けど手を離せ、離せ!
毟り取った火種をふーふーして薪に火を付けた。煙もちゃんと外に出てるようだ。よしよし。
寝かしてる生地を見てみると、ほんのり膨らんだように見える。発酵の力か、それとも炭酸の力なのか?丸めてペタン、丸めてペタンを数回やってたら、焼き窯が暖まるまで再び放置した。
「んふ~、あったか~い…」
良かったな。
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