女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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ペアルック

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 トカゲモドキのドロップを回収し、その場で昼飯にした。下に降りてもトカゲゾーンになると予想されるし、がっかり感が強い。

「肉にでもなればなぁー」

「ドラゴンが出てがっかりする人なんて初めてですよ?この魔石だけで何年暮らせるか…」

「我が家は有難い事に、島の住民が腹一杯食える程トカゲの肉が集まるんだよ。リュネの好みかも知れないけど、とにかくトカゲが多いんだ」

「カケル様の王国は食糧事情が潤沢なのですね」

「国王はリュネだな。千年は安泰だろう」

「私も国民になりたいです」

「出稼ぎ頑張れ」

「いけずです」

「ママ上殿達を守れるのはお前だけだ。期待してるぞ」

「頂いた子種の分頑張ります」

一匹一日で千年は頑張ってもらえるな。
 飯も食ったし休憩終了。狭い通路にどうやってトカゲが詰められてるのか気にもなるのでもう少し奥に進もう。エージャに偉そうな事言っといてなんだが、俺も出稼ぎしてる最中だったんだ。稼がなきゃな。

 それなりに長い階段を降りると海だった。潮の香りが漂って来るので多分海。普通の冒険者なら此処でダンジョン終了だろう。断崖絶壁をロープ等で降りるのは良いとして、船が無ければ泳ぐしか無い。そんな中で戦えるかと言われたら、絶対無理だと答えるしか無い。
俺は問題無いけどな。
エージャを背負って水平移動。ぐるっと右回りで壁沿いを飛びながら階段を探す。幻術が効いているのか、近くに寄らないと壁が見えないのが厭らしい。

「ありませんね」

背中に抱き着き頬擦りするエージャは多分探す気は無いと思われる。
《感知》を使って見回すと、エリアの中央に階段はあった。海竜や俺を食う魚が跋扈する水の中にだ。潜って階段に行く事は出来る。出来るが、その下まで水で一杯だったら流石に先には進めないぞ?…否、出来無い事は無いのか。それを出来る者が俺や龍しか居ないと言うだけで。

「見付けたぞ。水の中だ」

「泳ぐのは苦手です。役立たずで申し訳ありません」

「問題無い」

魚が来る前に水面に近付き、海水を《集結》させるとエリアの端から海水が集まって来る。柔らかいゼリーに見える海水は、魚や海竜を弾き出しながらどんどん一点に集まって、濃縮され、青暗い、スイカ程の大きさの塊となった。海の塊を《収納》して、ビタンビタンと体をくねらせ死を待つ魚と海竜を《集結》させる。遠くに居る奴が集まるまで暫く掛かるが、部屋の水が回復するかのテストも兼ねてるのでじっくり待とう。ダンジョンでは肉を落とさないから命を奪ってる感覚が鈍るな。魚は魔獣化していたみたいで魔石をドロップした。海竜は魔石と、魔剣魔装をポロポロ落とした。が、魔剣等は売れないのでゴミでしか無い。

「カケル様!この鎧をください!」

海竜が落とした魔装にエージャが飛び付いた。確かに、四肢と手足は宝箱から出た装備だが、胴鎧はしょぼしょぼなんだよな。とは言えコイツは胴鎧では無くコートだ。袖が無くて陣羽織みたい。細かい装飾がそれなりにキレイだ。

「呪われてないと良いけどな」

「呪われても着続けます。これでカケル様とお揃いです!」

ペアルック着て喜ぶ文化はシルケにもあるのか。俺にはそんな文化…、男ばっかり五十人くらいで同じ服着てたな。ユニフォームとも言うが。背中に数字を付けられて喜んでいた頃が懐かしい。
躊躇無く袖を通したエージャは、出会った頃には想像も出来無い程良い笑顔で喜んでいた。自分で選んだ物を身に付け、やっと冒険者になれたんだな。

 この階層の敵を全滅たらしめて、下に降りるか思案する。この階層の魔石だけでも何人のリュネを全快出来るか、と言うくらいに取れたのだ。

「そろそろ木の宿に帰ろうか」

「満足したのですね?」

「概ねな。最下層まで行く期待感が無くなっちまった」

「木の宿が、このダンジョンの特徴だったのですよ」

「そうだな。普通の冒険者が通い詰めて生活の糧を得る。そんな感じのダンジョンだったな」

多分、此処には、もう来ないと思う。


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