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ミリの単位が無い
しおりを挟む昼飯を食べてる最中、兎の一人に大きい鍋が欲しいと強請られた。家族用の手頃なサイズの鍋はお土産にしてたので問うた所、糖の実を煮るには小さいとの事。確かにあの籠一杯の実を一度で煮るのは無理だよな。鉄は手持ちにたっぷりあるし、後で作ってやろう。
…と言う訳で現在大きくなって昼寝してるカラクレナイの巣の前に居る。ここは石が敷いてあるので万が一溶けて垂れても回収し易いと思われる。そして周りには大人龍四人が見物してる。危ないから人種には御遠慮頂いたのだ。
「火の魔法で温めてくれ」
煉瓦を固く締めて、雄型と雌型を作る。隙間無くピッタリ合わさる状態から、雄型だけ更に《集結》させた。大体四の厚みになるよう、八の厚み分縮ませた。四の厚み、八の厚みなんて言っているが、リュネ先生曰く、シルケでは地球で言う所のミリの単位が無いそうだ。一.五センチだと一ドンと半分や、一ドンと五、等と言うらしい。
出来た型を温めるのはリーム。成龍の中では最弱レベルの魔力とは言え、人レベルで言うならトップレベルの魔力である。リームはこの程度と言っているが、それで充分なのだ。
《収納》から鉄を取り出し、四ミリ厚で薄く伸ばす。コイツも一緒に温めてもらい、赤熱した所で型に挟んで圧した。
型から外され、赤黒く焼けた鍋を冷やすのはミーネだ。
「ミーネ、頼むぞ」
「頼まれよう」
ミーネが鍋と型の熱を《収納》すると、一気に涼しくなった。鍋も型も、もう触っても熱くない。
「私の番、まだ?」
「もうちょい待っておくれ。取っ手を付けてからな」
普通の寸胴鍋には取っ手が二つ付いているが、コイツはデカいし重くなるので対角線上に四つ付ける事にした。持ち易く、洗い易く作ったつもりの取っ手をくっ付けて、鍋の縁をキレイに整えたら今度こそネーヴェの番だ。
ネーヴェは鍋の内側をとぅるんとぅるんにしてくれた。鏡面仕上げになった鍋底を見詰める乙女なネーヴェであったが次の作業が待っているので早く退いてください。使っているうちに傷も付くだろうが、その時はその時だ。
水の棒で水を注ぎ、漏れの無いのを確認したら直径一ハーン五十ドンの大型寸胴鍋の完成だ。蓋は円盤に取っ手と凹みを付けるだけなので型は使わなかった。
「初めて見たが、面白い作り方をするのだな」
生肉が常食だったのでは見た事無かろうな。
「完全に溶かしてから型に流し込んだり、ハンマーで叩いて形にするやり方なんかもあるよ」
俺の方法は工業的な作り方だが、一番簡単な作り方でもある。取り敢えず上手く行って良かった。厨房に持って行くと、竈から作らないといけない事が判り天を仰いだ。鍋を持ち上げないと竈に乗らないのだ。
厨房の隅に寸胴鍋が収まる径で、六十ドン程掘り下げて耐火煉瓦を十ドン敷く。その上に鉄板。採れたてのミズゲルの核を十個ばかり魔石に変えて、リームの掌の上で火の魔法を付与してもらい、鉄板にキレイに並べて埋め込んだ。
「ほーう、こうやって作るのだな。小さいクセに随分溜まってるなと思っていたが、お主が魔力を込めていたのか」
「ここまで出来る奴が俺しか居ないみたいなんだよな。おかげで原料が激安で買える」
寸胴鍋を置いて水を注ぎ、魔力を込めて湯を沸かす。風呂を沸かすのと同じ要領なので問題無く温められているな。家事に勤しむ兎達に糖の実を煮てもらおう。集まった数人に、パカッと割って取り出したカリカリの中身を鍋に入れるのを見せて、後はじっくり煮てもらう。詳しくはイゼッタが知ってるので説明を受けろと指示してその場を後にした。くれぐれも焦がさないようにな。
「おっぱい」
ネーヴェが糖の実の殻を胸に宛てがい、何時ぞやのイゼッタと同じ事やってる。あの時は偉く酸っぱかったんだよな。よしよしなでなで。
「「おっぱい」」
リームとミーネまで真似しよる。取り敢えず撫でとこう。
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