女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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エゴでしかない

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「リュネ、《威圧》を解いてやれ。ジョンも苦しそうだしな」

「グア」

《威圧》を解かれ、地面に落下する子龍を浮かせてそっと降ろしてやる。ジョンの囲いも取らなきゃな。

『ママは何処だい?』

近付いて、優しく龍語で話し掛ける。後ろでは怖いお姉さんが睨みを利かせているぞ?

『エサ!エサ!』

「耳が痛いぞ…」

「腹減ってるんだってさ。リュネ、何か出したげて」

「はぁい」

リュネがトカゲの腿肉を骨付きで投げて寄越すと、警戒も無く齧り付いた。ガリガリ骨も食っている。野生の龍は骨も食うのか…。うちの子にも食べさせなきゃダメかな?
一頻り飲み込んで、一息着いた子龍は蹲って小さくなって、街道の幅にすっぽり嵌ってる。

『ママは何処にいるの?』

『マ、マ?』

『産まれた時に近くにいたろ?』

『おや、ねる、いま。エサ、ない。たべる、そと』

片言だが、親が寝てるので餌が無く、外に狩りに来た。そんな感じだろうか?

「リュネよ、子供が産まれても寝てるってよくあるのか?」

「ありますね。ありますが、起きてますよきっと」

「その心は?」

「この雪、その子の親が生み出している物でしょう。幾つかの住処を転々と移動しながら獲物を狩って居るはずです。でなければ野菜が作れなくなりますもの」

「成程。起きてるが、ご飯を上げられない状態って事か」

「助けるのですね?」

「仕方ないだろ。カラクレナイがひもじくしてたら、俺は耐えられない」

「うふ、私もですっ」

「ジョンは街に戻ってライガーの追い出しと街道の復旧を頼むわ」

「マジかよ!俺もデカいの見たいぞ?」

「《威圧》で死ぬぞ?止めとけ」

「私、手加減してますからね?」

「お、おう…。わかった。土産話忘れんなよ!?」

ジョンは跳んで帰って行った。

『おやの所に連れてって』

『いいよ。こっち』

子龍がパタパタ飛び上がり、街道を東に飛んで行く。リュネの背中に跨って、俺達も着いて行く。因みにパタパタ飛んでるが、普通の龍はパタパタ飛ばない。この子はまだ飛び方を習ってないか、我流で飛んでいるのではないかとリュネは言う。

 遠くに雪深い山が見える。何となくあの辺かなーっと思っていたらその通りだった。

「凍ってんじゃん」

入口だったと思われる洞穴の入口は、完全に氷で覆われて、子龍が引っ掻いた程度じゃ傷にしかならない。

「…ん?これはこれで使えるか」

「どうしましたか?」

「キレイだし、冷やすのに使えるから持って帰ろうかと」

苦笑いのリュネであった。

 洞穴に詰まった氷を《集結》させて、一回り小さくして《収納》すると、中に入れて嬉しい子龍がノシノシ中に入ってく。暫く行くと再び氷が通せんぼ。《収納》して先に進みを繰り返し、多分巨大な空間であっただろう、氷の塊が立ち塞がった。
此処を《集結》すると親龍を潰してしまうので、《収納》のみで進むしか無い。

「カケルさぁん、お手伝いしますねっ」

「奥に居る龍に怪我させないようにな」

「はぁい」

その途端、巨大な空間から大多数の氷が消えた。リュネが《収納》したのだろうが、器用に鍾乳石を残して収納してある。エゴでしかないが、こう言うの壊すのって何か嫌だからな。
子龍を先頭に奥へと進む。

『おや!ここ!』

言われなくても見えている。濃い青の鱗に氷が張り付き、光の棒の明かりをキラキラと反射させている。めっちゃ幻想的な風景に見蕩れてしまった。

「これは凄い…」

「討伐しますか?」「やめてよ!」

嫉妬するリュネは後でケアするとして、目の前の巨体を《感知》で診る。脳や内臓は正常…。体が凍って動けなくなっただけのようだ。気休めに回復を掛けておこう。

「人の言葉は分かるかな?」

「狩りに…来たか…」

静かな声で龍は言う。この龍は良い奴だ。

「子供がお腹空いて外に出てたから返しに来たんだよ。トカゲの腿肉を食べさせといた」

ゆっくりと頭を擡げた巨体は、目を閉じて頭を垂れた。
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