女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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心優しい龍

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「氷で塞がれて入れなかったんだぞ」

子龍が出る前に塞がれていたら餓死待った無しじゃないか。

「魔力を…出し過ぎた…か…」

『おや!エサ!エサ!』

『エサだ。食うが良い』

何処からか獲って来たホカホカのドウドウを子龍の前に寝かせると、直ぐに食い出しスプラッター。見ないようにしよう。

「もうすぐ住処を移動するのだろ?」

「よく知っているな、人の子」

「龍の知り合いが多いものでな」

「其方の…龍か」

「お互い、名前は隠しておきましょう。カケルさんに悪い虫付けたくないですから、うふふ」

「人化すると飛び切りの美人になる訳か、成程理解「しなくて、いーんです!」」

横から抱き着いて来たリュネが可愛く怒ってる。これ以上怒らせる訳にはいかんな。諦めよう。

「魔力を出し過ぎたと言っていたな?」

「我が子のエサともなるからな」

親の魔力を吸収して成長するんだもんな。家には人の子が居るからそこまで大量には出せない訳か。で、魔力に飽きて外に出た、と。

「送り届けたし、そろそろ帰るよ。冷えて来たしな」

「そうですね!帰りましょう!」

「…世話を掛けた。これをくれてやる」

尻尾でポイッと投げ渡されたのは、二つに割れた殻だった。

「この子は男の子なのか」

「くっ付けて抱いて寝ます」

そんな事してると発情期が伸びちゃうぞ?とは言わない。丸いのを愛でて抱きたがるのは龍の習性なのだ。言ってる傍から白磁でくっ付け卵の形に復元してるし。

「お前にやったのでは無いのだが…人の子がそれで良いのならそれで」

『ひと、かえる?』

『帰るよ。ママの言う事をよく聞くんだよ?』

『わかった』

頭を下げる子龍を撫でて、洞穴を後にした。


「知り合いだな?」

「バレちゃいましたか。ミーネの同期です」

「成程。繁殖期が近いのはその為か」

帰りながら話をする。ミーネと同じタイミングで発情期を迎え、仲良く孕んだ同期だそうで、それなりに強いらしい。戦いにならなくて良かった。

「カケル!」

気付けば夕方。門前に屯していた衛兵は橋の袂で陣を組み、ジョン達冒険者も其方に合流していた。真冬のキャンプかよ…。俺は絶対したくない。雪の中でのキャンプなんて全然ゆるくないからな!

「話は付けて来たぞー」「うふふ、戦利品ですっ」

「卵?」

「殻だけな」

「貴様!我等の指示を無視して何処に行っていた!?」

突然がなり掛けて来るのは衛兵隊の誰かだな。人と言う生き物は生き抜くセンサーが退化しているようだ。

「ジョン、あれは?」

「衛兵隊の隊長らしいぞ?おい、この者達は俺と一緒に威力偵察してたんだ。何処も糞も無いだろ」

「ノコノコと逃げ帰って来た分際で偉そうに」

「弱いウオルスはよく吠え散らすもんだな。ウオルス鳴いてるの見た事ないけど」

剣に手を掛けやる気を見せる隊長らしい男はその場で服や鎧を残して消えた。

「リュネ、やり過ぎだろ」

「一人の尊い犠牲で街が更地にならなくて済んだのです」

「リュネ様、出来れば手足を捥ぐ程度で頼んます」

「はぁ~い。次は気を付けまぁす」

全裸で転移させられた男はスルーする事にして宿へと向かっていると、夕方なのに門前に人集りが出来ていて、その中心には全裸の男が居ると聞こえて来た。

「殺らなかったのか」

「穏便にしたつもりですので、ふふっ」

心優しい龍の腰に手を回し、宿に帰った。

「おかえりカケルー」「おかえりなさいませ」

部屋に戻ると二人共昼寝から覚めていて、お腹空いたとネーヴェがダイブする。

「知らないの匂い…」

触れてないのによく分かるな。卵があるからかな?

「触ったのは男の子なんだが」

「母の匂いが強い時期ですからねー」

「カケル様はドラゴンによくよく縁がありますね」

「一生に一度見ない筈なんだがな」

「普段は《阻害》してますしね」

「気を使ってるんだな」

「美味しくないですから」

「カケルの魔力、美味しい」

「カケルさんは別腹です。うふ」

俺は美味いらしい。




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