女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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 十本槍の面々に見送られ、ノーズコーンでビューンと飛んでバルタリンド。ギルド証の事務処理と、休憩がてらママ上殿達に挨拶しに来たのだ。
ギルドに入って、今迄とは違う雰囲気がある。何故か。受付カウンターの一つに女冒険者と女職員が集って居るのだ。

「何だろ?」「さあ?」

空いてるカウンターに並び、少し列が短くなって原因が分かった。

「……んむぅ」「「「はわぁ~…」」」

「あきゃあ」「「「きゃわ~」」」

カウンターの向こうにガンダーとシンクレイアが子供ベッドの中でワキワキしていたのだ。で、女冒険者と仕事をサボる女職員は、その一挙手一投足にきゃわきゃわしていたと言う訳だ。

「ガンダー、シンクレイア。ママ来た」

「んまー」「あーぱー」

イゼッタの言葉に反応する二人に女達のきゃわきゃわが止まらない。とにかく事務処理を終わらせてくれ。

「カケル、声掛けたげて」

他人が見てる前で親父面するのは憚られるのだが…。お土産になる物、何か無かったかな…。うん、魔石しか無い。普通のトカゲからドロップした魔石を二つ、《洗浄》して二人の元にゆっくり浮かせて送った。

「ガンダー、シンクレイア、久しぶりだな。お土産にしては子供向きじゃ無いが、好みが分からんからこれで我慢しておくれ」

「おっ、おっ」「あーぷぁー」

「貴方、それ四つ足クリーパーの魔石じゃないですか!赤ちゃんになんて物上げてるんですか!?」

眼鏡を掛けた女職員にダメ出しされた。こんな事ならトカゲの皮でも残しておけば良かったぜ。

「ダメか…」

「バルタリンドじゃ獲れない貴重品でしょうが。何か上げたいならそれ売ってプレゼントを買いなさいよ」

「尤もな意見だ」

「問題ない。気に入ったって」

二人共、両手で抱えてちゅぱちゅぱしてる。それは気に入ったって事で良いのか?飲み込めない大きさのを選んだから窒息の恐れは無いだろうが、カラクレナイみたいに魔力を吸収したり出来る…訳ないよな、人だし。

「カケル様!」

バタバタと階段を降りて来るのは仕事モードのカロだ。謎感知、発動したのか?

「久しぶりだな。近くに寄ったもんでな」「おひさし」

「カロ様!この人何なんですか?赤ちゃんに魔石上げてるんですけど!?」

「はいはい、そのくらいで騒がない。カケル様なら《洗浄》でキレイにされてますし、問題ありませんよ」

詰め寄る女職員をさらりと往なし、仕事に戻れと一喝すると、おサボり職員達は顔を青くして散って行った。

「赤ちゃんが居るとギルドの雰囲気が優しくなるので、此処でお世話しているのですよ」

「荒くれ者が子煩悩になりそうだな。今日はママ上殿の所に挨拶したらそのまま帰るよ」

「はい…。では、近い内に此方から…」

シュンとしたカロを撫でそうになってしまうが今は仕事中。自重せねば。《威圧》の手で撫で撫でしてその場を離れた。カロにもお土産を渡したかったが、魔石と魔剣と魔装しか無いのだ。こんな所で渡せるか。

 ママ上殿の所へ向かうと玄関でエージャに抱き着かれた。お土産はカケリウムか。

「すーーお帰りなさいませカケル様はーーすーーイゼッタ様もようこそはーー」

息を吐くように挨拶するエージャを抱えてママ上殿の元に。親父殿は仕入れに行ってるのだそうで、家政婦組合のお手伝いが何人かいるみたい。

「あら、カケル様にイゼッタちゃん。お久しぶり」

「暫くです。近くに寄ったもので挨拶に」「おひさし」

ママ上殿はキッチンの椅子に座ってメッツ君と戯れてた。グローブを外して《洗浄》し、メッツ君の手に握られる。

「お兄ちゃん来たよ~」「おねーちゃんだよー」

訂正はすまい。

「あきゃあ」

にぎにぎしてるし喜んでると思われる。その後はお茶を頂いて、転移門でカロ邸へ。アルネスにもカケリウムを補充して島へと戻った。

「お帰りなさいませカケル様、イゼッタ様。早かったのですね」

「赤ちゃん、恋しくて」

赤ちゃん部屋に飛んで行くイゼッタは、今からママに戻るんだな。




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