女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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拳の応酬

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 小さくした《結界》の下部を地面毎塞いで球体すると、思い切り空に打ち上げる。

「「「飛んだ!」」」

俺達も飛んでるからな?

「あ!前にやったヤツか!」

ジョンは思い出したようだ。

「何処かに、捨てる…のか?」

ウィキスの案も悪くない。だが今回は売り物だから捨てないぞ。

「空に上がれば上がる程寒くなるんだ。それこそ凍り付くくらいにな」

「凍死させると言うのね」

惜しいな。その前に酸欠で死ぬだろう。

「上げ下ろしに時間は掛かるから一度報告に戻ろうか。何処の街に行けば良い?」

「それならルングネンハルトだろうな。あの群の、次の目的地だった所だ」

「ああ、アルアの家がある街だったか。そこなら行った事あるぞ」

「何故お前がアルア様を…、まあ良い。考えるだけ無駄だろう」

「だが呼び捨ては不敬では無いか?」

当たり前なのだろうが、皆アルアの名を知っているようだ。荒くれフェイスのマッチョ達から様を付けられるくらいには人気があるようで何よりだ。

「そうだな。気を付けよう」

「カケルは以前、賊に襲われたアルア様を救ったそうだ。ハーク様とも面識が…謁見もしたんだったな?」

「トカゲ一匹奪われたな。あれは絶対許さん」

「トカゲ?」

「レッサードラゴンの事な」

「殺ったのか!?」「殺れんのか?」「どうやって!?」

「酒場で話せる程の冒険譚では無いぞ?」

「よし、酒場に行こう!」「「おお!」」

報告が先じゃ!


 ルングネンハルトの街は軍人が門前に整列し、冒険者達はギルド前の通りに群れを成していた。

「カケル、魔法、来る!」

何時の間にやら名前で呼ぶようになったウィキスが注意を促すが、《結界》で囲った荷車には効果は無いのだよ。子供レベルの魔法を打つけられながら、
堂々と、ゆっくりと門前に降りて行った。

「ジョン、矢面に立てよ?」

「結界解いたら殴るからなっ。攻撃止めーっ!!俺はジョンだ!クリューエルシュタルト冒険者ギルド、ギルドマスターのジョンだ!攻撃止めーっ!!」

「攻撃止めーっ!」

どうやらジョンの声は届いたようだ。土煙が晴れて無傷のジョンと荷車が現れると兵隊達に動揺が走る。使用感たっぷりの荷車が壊れる事無くそこにあるのだからな。そんな魔法で魔物を殺れんのか?って話になる。

「ジョンか!」

「魔法を無駄撃ちさせんな馬鹿野郎!」

ツカツカと歩み寄り、繰り広げられる拳の応酬に周りの兵隊が引いている。窓から覗くマッチョ達も引いていた。

「こら、馬鹿ジョン!イチャイチャしてねーで報告だろーが」

男同士のイチャコラ等見たくないので矢面に立たざるを得ない。荷車から降りて殴り合うイイオトナを窘める。

「おう、そうだった。先ずはギルドだ。隊長格もそっちに居るんだろ?」

「ああ。お前が参加してくれるならこんなに心強い事は無いぜ。で、彼奴は?」

「カケルだ。詳しくは聞くな」

「カケルだ。ほれ皆も降りろ」

「おお…、ありゃ剛腕のルウェインじゃねえか?」

「なら鉄壁と血煙も居るのか?」

「居た!ドータンとキャストルだ!」

「おいあれ首狩りマルーンか!?」

「隣のは誘姫のシャン・ドワンだ…。凄ぇ…」

「癒しの冷姫ウィキスも居るぞ」

マッチョ達が降りて来るとガヤ共が色めき立つ。此奴等皆二つ名持ちだったのか。

「癒しの冷姫…」「やめろ女好き」

「女が嫌いな男等殆ど居らんよ」

立ち話する暇は無いので、荷車を仕舞うとジョンを先頭にとっとと街に入る。ある程度規律正しい兵隊達だが、女好きと言う言葉だけはヒソヒソと木霊していた。

 街に入ると今度は冒険者共が囲んで来る。俺以外は有名人らしいからな。ジョンなんて外に居ると何時も囲まれてるし。だがこっちは冒険者。ジョン達の《威圧》で寄るに寄れなくされていた。
終始無言でギルドに入り、アポ無く階段を上がってく。

「誰だ!?」

「うげっ、ジ、ジョンだ」

ノックもせずにドアを開ける馬鹿ジョンは流石に《威圧》で締めといた。
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