931 / 1,519
そう言えば名乗って無かった
しおりを挟む傷病者、そして犯されて心を病んだ者を癒して洗う。
「ほんとに…、産まれない、んだね…?」
「ああ。取り除いて洗ってやったよ」
「う…うぅっ…」
体にこびり付いた悪党共の痕跡を消してやると、嗚咽が一つ、また一つ。最後に浴槽の湯を交換し、キレイになった湯で心の傷を少しでも癒してもらう事にした。
浴室を出るとリームに女湯の様子見と皆の服の作成を頼み、ミーネと共に外に出て飯の支度をする。
「妹では大した物は作れんぞ?」
「肌が隠れてれば良いさ」
「そうか。なら私は何をしたら良い?」
「一緒に飯の支度だ。鍋と食器を作ってくれ」
「机や椅子も要るな。それに灯りも」
「宜しく頼むよ。俺は食材を集めて来る」
手持ちの食料だけでは朝晩二食は賄えん。なので魚を獲りに行く。港から海に飛び出し、少し飛ぶだけで水面から巨大な口が迫り上がる。そして俺を飲み込み、魚は消えた。《収納》を纏ってみたのだ。俺に触れた魚が次々と《収納》される。
魚数匹にトーピードも獲れたので陸に戻ると、テーブルセットに食器がずらり、さらに竈に大鍋が乗って湯が沸かされていた。湯上りの女子供の何人かがテーブルに着いて、水か何かを飲んでいる。
「獲って来たどー」
「主様よ、それこそ我等の役目だろうに」
「否、男に苦しめられてたってのに、近くに男が居たら気も休まらんだろ。それより飯作るぞー」
ありったけの干し野菜に、解体した魚の切身を湯に投入。灰汁を取り、味を付け、どろどろの水練りマタルを少しずつ落としてく。大鍋だからこれで二食分は足りそうだな。
「よそうから食器を持って来てくれ」
「あ、あたい等がやんよ!」「おんぶに抱っこじゃ恥ずかしいからね」
動ける女達が食事の支度を手伝ってくれる。慣れた手付きで配膳を終えて席に着く。
「ん?」
皆口を付けない。子供等ギュルギュル言わしてるのにじっとスープを見詰めてる。
「どうした?食う為に作ったんだ。遠慮すんな」
「旦那様よ、先に口を付けねば誰も手を出さんだろうよ」
「主様が恩人である事は認識して居るようだな」
「気にせんで良いのに。ではいただきます」
魚の身はホロホロして、出汁が出てて塩味なのに美味い。それにスープを吸った水団がプルプルで喉越しが良い。野菜も柔らかく煮込まれていて、弱った者でも問題無く消化出来そうだ。
俺が食べ出すとミーネ達も手を付け、それを見た女達が挙って食べ始めた。今の所寝込んでいる一人以外は動けるようになり、しっかり食事が出来ているようだった。
食事の後は、女達に寝込んでいる女の看病を交代で見てもらうようにして、俺達は適当な家の寝室で寝る。女達もそれぞれベッドのありそうな家に入って行った。
朝になり、朝食の支度に広場に向かうと女達が起き出していて俺を待っていた。
「旦那様、おはようございます」「「おはようございます」」
「そう言えば名乗って無かったな。カケルだ」
「カケル様。お助け頂きありがとうございます」
「気にせず普段の言葉で話してくれ。飯作るから皆を集めて来てくれ。寝込んでる女も起きてたら教えてくれ」
「「「はいっ」」」
昨夜《収納》した大鍋を出し、竈に乗せる。煮詰まってたので水も入れとこ。それにしてもミーネめ、昨夜は気にしてなかったが火の属性魔石で作ったのか。竈の口に余裕があるので鉄板を作って焼いて油を回し、一口大に切った魚を色が付くまで焼いて大鍋に追加した。
「旦那様、カケル様。チョーヨが起きましたよ」
女が寄って来て知らん名前を口にする。
「チョーヨ?」
「寝込んでた女でさ」
「そうか。動けそうだったか?」
「それはまだ無理そうだったね。水を飲ませておいたよ」
「そうか、ありがとう。手分けして配膳しておいてくれ」
共同浴場に向かおうとすると、彼方から飛んで来たリームが降りて来た。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる