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そう言えば名乗って無かった
しおりを挟む傷病者、そして犯されて心を病んだ者を癒して洗う。
「ほんとに…、産まれない、んだね…?」
「ああ。取り除いて洗ってやったよ」
「う…うぅっ…」
体にこびり付いた悪党共の痕跡を消してやると、嗚咽が一つ、また一つ。最後に浴槽の湯を交換し、キレイになった湯で心の傷を少しでも癒してもらう事にした。
浴室を出るとリームに女湯の様子見と皆の服の作成を頼み、ミーネと共に外に出て飯の支度をする。
「妹では大した物は作れんぞ?」
「肌が隠れてれば良いさ」
「そうか。なら私は何をしたら良い?」
「一緒に飯の支度だ。鍋と食器を作ってくれ」
「机や椅子も要るな。それに灯りも」
「宜しく頼むよ。俺は食材を集めて来る」
手持ちの食料だけでは朝晩二食は賄えん。なので魚を獲りに行く。港から海に飛び出し、少し飛ぶだけで水面から巨大な口が迫り上がる。そして俺を飲み込み、魚は消えた。《収納》を纏ってみたのだ。俺に触れた魚が次々と《収納》される。
魚数匹にトーピードも獲れたので陸に戻ると、テーブルセットに食器がずらり、さらに竈に大鍋が乗って湯が沸かされていた。湯上りの女子供の何人かがテーブルに着いて、水か何かを飲んでいる。
「獲って来たどー」
「主様よ、それこそ我等の役目だろうに」
「否、男に苦しめられてたってのに、近くに男が居たら気も休まらんだろ。それより飯作るぞー」
ありったけの干し野菜に、解体した魚の切身を湯に投入。灰汁を取り、味を付け、どろどろの水練りマタルを少しずつ落としてく。大鍋だからこれで二食分は足りそうだな。
「よそうから食器を持って来てくれ」
「あ、あたい等がやんよ!」「おんぶに抱っこじゃ恥ずかしいからね」
動ける女達が食事の支度を手伝ってくれる。慣れた手付きで配膳を終えて席に着く。
「ん?」
皆口を付けない。子供等ギュルギュル言わしてるのにじっとスープを見詰めてる。
「どうした?食う為に作ったんだ。遠慮すんな」
「旦那様よ、先に口を付けねば誰も手を出さんだろうよ」
「主様が恩人である事は認識して居るようだな」
「気にせんで良いのに。ではいただきます」
魚の身はホロホロして、出汁が出てて塩味なのに美味い。それにスープを吸った水団がプルプルで喉越しが良い。野菜も柔らかく煮込まれていて、弱った者でも問題無く消化出来そうだ。
俺が食べ出すとミーネ達も手を付け、それを見た女達が挙って食べ始めた。今の所寝込んでいる一人以外は動けるようになり、しっかり食事が出来ているようだった。
食事の後は、女達に寝込んでいる女の看病を交代で見てもらうようにして、俺達は適当な家の寝室で寝る。女達もそれぞれベッドのありそうな家に入って行った。
朝になり、朝食の支度に広場に向かうと女達が起き出していて俺を待っていた。
「旦那様、おはようございます」「「おはようございます」」
「そう言えば名乗って無かったな。カケルだ」
「カケル様。お助け頂きありがとうございます」
「気にせず普段の言葉で話してくれ。飯作るから皆を集めて来てくれ。寝込んでる女も起きてたら教えてくれ」
「「「はいっ」」」
昨夜《収納》した大鍋を出し、竈に乗せる。煮詰まってたので水も入れとこ。それにしてもミーネめ、昨夜は気にしてなかったが火の属性魔石で作ったのか。竈の口に余裕があるので鉄板を作って焼いて油を回し、一口大に切った魚を色が付くまで焼いて大鍋に追加した。
「旦那様、カケル様。チョーヨが起きましたよ」
女が寄って来て知らん名前を口にする。
「チョーヨ?」
「寝込んでた女でさ」
「そうか。動けそうだったか?」
「それはまだ無理そうだったね。水を飲ませておいたよ」
「そうか、ありがとう。手分けして配膳しておいてくれ」
共同浴場に向かおうとすると、彼方から飛んで来たリームが降りて来た。
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