追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

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【第1章】追放と絶望の夜

第7話「商人との駆け引き」

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鉱山開発から一週間。
城の会議室には、十人以上の商人が集まっていた。
皆、王都や各地の大商会の代表者たち。高級な服を着て、計算高い目で私を値踏みしている。
「では、始めましょうか」
私は、席に着いた。
隣にはミラ。反対側には、ルシアンが黙って座っている。
「皆様、遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます」
私の言葉に、商人の一人――恰幅のいい中年男が鼻で笑った。
「礼など不要だ。我々は、魔鉱石を買いに来たのだ」
「では、条件を聞かせていただけますか?」
私は、穏やかに訊いた。
「我がロイヤル商会は、全量を買い取ろう」
別の商人が名乗り出た。
「価格は、市場価格の六割だ」
六割。
つまり、相場より四割も安く買い叩こうということ。
「我がグランドギルドは、七割で買おう」
「では我が商会は、七割五分だ」
次々と、提示される価格。
でも、どれも市場価格を大きく下回っている。
「皆様」
私は、手を上げた。
「申し訳ございませんが、お断りします」
場が、凍りついた。
「……何?」
ロイヤル商会の男が、眉をひそめた。
「我々の提示を断る、だと?」
「はい」
私は、にっこりと微笑んだ。
「皆様の提示価格は、市場価格を大きく下回っています。それでは、取引として成立しません」
「ふざけるな!」
別の商人が立ち上がった。
「貴様、辺境の追放者の分際で――」
「座りなさい」
ルシアンの低い声が、部屋に響いた。
商人は、ビクッとして座り直した。
「続けろ、エリシア」
「ありがとうございます、陛下」
私は、用意していた資料を配布した。
ミラが、手際よく商人たちに渡していく。
「こちらをご覧ください」
資料には、魔鉱石の品質データ、推定埋蔵量、そして――市場分析が記されている。
「我がノルディア産の魔鉱石は、純度が非常に高い。王都で流通しているものより、平均で三割も魔力含有量が多いのです」
商人たちが、資料を食い入るように見始めた。
「さらに」
私は、立ち上がった。
「現在の王国における魔鉱石の需要は、供給を三割上回っています。つまり、慢性的な品不足」
歩きながら、説明を続ける。
「そこに、この高品質な鉱石が大量に供給される。市場は、どう動くでしょうか?」
「……価格が上がる」
一人の商人が、呟いた。
「その通り」
私は、微笑んだ。
「希少性の高い、高品質な商品。需要は旺盛。となれば――」
商人たちの目が、輝き始めた。
「市場価格の一・五倍でも、買い手はつく」
「待て」
ロイヤル商会の男が、立ち上がった。
「では、お前は市場価格の一・五倍で売ると?」
「いいえ」
私は、首を横に振った。
「市場価格で、お売りします」
「……は?」
商人たちが、きょとんとした顔をした。
「市場価格で売るのなら、なぜ我々の提示を断った?」
「簡単です」
私は、彼らを見渡した。
「皆様は、独占契約を望んでいらっしゃる。でも、私は複数の商会と取引したいのです」
「複数?」
「ええ」
私は、新しい資料を取り出した。
「こちらが、契約書の案です」
ミラが、再び配布する。
「年間契約。各商会には、平等に供給量を割り当てます。価格は市場価格に連動。そして――」
私は、重要な条項を指差した。
「各商会は、ノルディア産魔鉱石のブランド価値を高めるため、協力して販促活動を行うこと」
「なるほど……」
一人の老商人が、うなずいた。
「独占ではなく、協力か」
「そうです」
私は、彼に向かって微笑んだ。
「一社が独占すれば、短期的には利益が出るでしょう。でも、長期的には市場の発展が阻害されます」
「逆に、複数社が協力すれば――」
「市場全体が拡大し、全員が利益を得られる」
老商人が、私の言葉を継いだ。
「見事だ。あなた、本当に貴族令嬢か?」
「元・貴族令嬢です」
私は、笑った。
「今は、ただの商人ですから」
場の雰囲気が、変わった。
最初の敵意が消え、商人たちは真剣に契約書を読み始めた。
「一つ、質問がある」
若い商人が、手を上げた。
「供給量は、安定するのか? 一時的なものではないのか?」
「良い質問です」
私は、鉱山の地図を広げた。
「推定埋蔵量は、百年分以上。採掘体制も整えつつあります。安定供給は、保証します」
「採掘技術は?」
「グレン総監督の下、経験豊富な鉱夫たちが働いています」
私は、グレンの名前を出した。
「グレン? あの、伝説の鉱夫か?」
「ご存知ですか?」
「ああ。三十年前、彼は王国一の鉱夫だった」
老商人が、懐かしそうに言った。
「彼がいるなら、品質も安定するだろう」
信頼性が、一気に高まった。
「では」
私は、ペンを取り出した。
「契約を結んでくださる方は?」
沈黙。
商人たちが、互いに顔を見合わせる。
そして――。
「我が商会は、契約する」
老商人が、最初に手を上げた。
「私も」
「我が商会も」
次々と、手が上がった。
最終的に、十人中八人が契約に同意した。
「ありがとうございます」
私は、深く頭を下げた。
「では、詳細は後ほど――」
「待て」
ロイヤル商会の男が、立ち上がった。
「私は、納得していない」
「どの点が?」
「全てだ!」
男が、怒鳴った。
「辺境の追放者が、我々に指図するなど――」
「ヴィクター」
ルシアンが、低く言った。
「その辺にしておけ」
「し、しかし陛下――」
「エリシアの提案は、合理的だ。お前が感情的になっているだけだ」
ルシアンの言葉に、男――ヴィクターは顔を真っ赤にした。
「覚えていろ!」
彼は、会議室を飛び出していった。
残された商人たちが、気まずそうにしている。
「気になさらず」
私は、微笑んだ。
「では、契約の詳細を詰めましょう」

三時間後。
全ての契約が、無事に成立した。
商人たちが帰った後、会議室には私とルシアン、そしてミラだけが残った。
「お疲れ様」
ルシアンが、初めて労いの言葉をかけてきた。
「ありがとうございます」
私は、椅子に座り込んだ。
正直、疲れた。
「見事だった」
ルシアンが、窓の外を見ながら言った。
「あの商人たちを、完全に手玉に取った」
「手玉に、というわけでは……」
「いや、そうだ」
彼は、私を見た。
「お前は最初から、全てを計算していた。商人たちを競わせ、価格を吊り上げず、しかし有利な条件を引き出す」
「……お見通しでしたか」
私は、苦笑した。
「当然だ」
ルシアンが、わずかに笑った。
「だが、それが悪いとは言っていない。むしろ――」
彼は、私の前に立った。
「お前のような人材を、この国は必要としている」
その言葉が、不思議と胸に響いた。
「ルシアン陛下」
「何だ」
「どうして、私を信用してくださるのですか?」
私は、率直に訊いた。
「私は追放者です。犯罪者かもしれない。それなのに――」
「過去など、どうでもいい」
ルシアンが、断言した。
「お前が今、何をしているか。それだけが重要だ」
彼は、窓の外を見た。
「この国は、長く見捨てられてきた。中央から、王族から、全ての者から」
その声には、わずかな痛みが混じっていた。
「だが、お前は違った。この地を見捨てず、可能性を見出し、行動した」
ルシアンが、私を見た。
「それだけで、信用に値する」
私は、何も言えなかった。
この男は――。
本当に、冷血王なのだろうか?
「エリシア」
ミラが、私の服を引っ張った。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫」
私は、立ち上がった。
「陛下、次の計画があります」
「次?」
「はい」
私は、新しい資料を取り出した。
「魔鉱石加工工場の建設です」
ルシアンの目が、興味深そうに輝いた。
「説明しろ」
「原石のまま売るより、加工品にした方が付加価値が高まります」
私は、図面を広げた。
「魔法道具、装飾品、魔力増幅器――様々な製品を作れます」
「工場を作る資金は?」
「今日の契約で、前払い金を受け取りました。それを元手にします」
私は、計算書を見せた。
「三ヶ月で工場を完成させ、六ヶ月で黒字化。一年後には、ノルディアの主要産業にします」
ルシアンは、しばらく資料を見ていた。
そして――。
「許可する」
「ありがとうございます!」
「だが」
彼は、私を見た。
「無理はするな。お前が倒れたら、この計画は全て止まる」
その言葉に、わずかな温かさを感じた。
「……はい」

その夜。
自室に戻ると、私は窓辺に立った。
街の灯りが、雪原に映えている。
一週間前と比べて、明らかに灯りが増えた。
鉱山の復活で、人々に活気が戻ってきている。
「やったね、エリシア」
ミラが、嬉しそうに言った。
「あんな商人たち、バッサバッサと論破しちゃって」
「論破じゃないわ」
私は、笑った。
「協力を引き出しただけ」
「でも、すごかったよ。アタシ、鳥肌立った」
ミラが、私の隣に立った。
「ねえ、エリシア」
「何?」
「アンタって、前世で何してたの?」
「……え?」
予想外の質問に、私は動揺した。
「前世って、前に言ってたでしょ。『前世で似たようなことやってた』って」
「あ、ああ……」
しまった。口が滑った。
「教えて」
ミラが、真剣な顔で訊いてくる。
「……経営コンサルタント」
私は、小さく答えた。
「会社を立て直す仕事をしていたの」
「会社?」
「この世界で言えば、商会みたいなもの」
「へえ……」
ミラは、納得したような顔をした。
「じゃあ、今やってることも、前世の続きみたいな感じ?」
「……そうね」
私は、星空を見上げた。
「でも、今の方が――」
「今の方が?」
「楽しい」
心から、そう思った。
前世は、義務だった。
でも今は、自分の意志で選んだ道。
「そっか」
ミラが、微笑んだ。
「なら、良かった」
二人で、しばらく星を見ていた。
「エリシア」
「ん?」
「アタシ、アンタの役に立ちたい」
ミラが、真剣な顔で言った。
「もっと勉強する。字も、計算も、全部覚える。だから――」
「ミラ」
私は、彼女の頭を撫でた。
「あなたは、もう十分役に立ってるわ」
「でも――」
「あなたがいなかったら、私はここまでこれなかった」
本当に、そう思う。
ミラとの出会いが、全ての始まりだった。
「だから、ありがとう」
ミラの目に、涙が浮かんだ。
「……バカ」
彼女は、照れ臭そうに笑った。
「泣かせるなよ」
二人で笑った。
窓の外、雪が静かに降っている。
でも、この部屋は暖かかった。
「さあ、寝ましょう」
「うん」
ベッドに入る。
明日も、忙しい一日になる。
でも――。
「楽しみ」
小さく呟いた。
これが、私の新しい人生。
追放された令嬢から、ノルディアの商人へ。
そして――いつか。
「必ず、あの者たちに見せてあげる」
私の本当の力を。
月明かりが、部屋を優しく照らしていた。
遠く離れた王都では、まだ誰も気づいていない。
辺境で起きている変化に。
追放された令嬢が、国を変えようとしていることに。
「待っていなさい」
私は、目を閉じた。
「私の逆襲は、まだ始まったばかりなのよ」
静かな夜が、更けていった。
だが、ノルディアの夜明けは――もうすぐそこまで来ていた。
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