追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

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第2章「復興の女神」

第19話「永遠の誓い」

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結婚式当日。
朝日が、城の窓から差し込んでいた。
「エリシア様、起きてください」
マダム・ローザの声で、目が覚めた。
「もう、朝……」
「はい。今日は、あなたの晴れ舞台です」
彼女は、にっこりと笑った。
「さあ、準備を始めましょう」

三時間後。
鏡の前に立つ私は――。
純白のドレスに身を包んでいた。
レースの装飾、長いトレーン、そして頭にはティアラ。
「綺麗……」
ミラが、涙を流していた。
「エリシア、本当に綺麗」
「お姉様……」
ラウラも、ハンカチで目を拭いている。
「まるで、女神様みたい」
「そんな、大げさよ」
私は、照れくさそうに笑った。
でも、鏡の中の自分は――。
確かに、いつもと違って見えた。
「さあ、時間です」
マダム・ローザが、ブーケを渡してくれた。
白いバラとスズランの花束。
「行きましょう」

礼拝堂の前。
扉の向こうから、ざわめきが聞こえる。
「緊張する……」
私の手が、震えていた。
「大丈夫だよ」
ミラが、私の手を握った。
「エリシアなら、絶対大丈夫」
「お姉様」
ラウラが、私のドレスを整えてくれた。
「幸せになってください」
「ありがとう」
音楽が、始まった。
「では――」
扉が、ゆっくりと開いた。

礼拝堂の中は――。
人で埋め尽くされていた。
数百人の招待客。
そして、窓の外には数千人の民衆。
「エリシア様だ!」
「綺麗……!」
ざわめきが、歓声に変わった。
私は、一歩一歩、バージンロードを歩いた。
両脇には、花が飾られている。
見守る人々の、温かい目。
そして――。
祭壇の前に、ルシアンが立っていた。
白い正装。銀色の髪。
そして、私を見つめる優しい目。
「綺麗だ」
小さく、彼の唇が動いた。
私も、微笑んだ。
祭壇の前に到着した。
ルシアンが、手を差し出してくれた。
私は、その手を取った。
「よく来たな」
彼が、小さく囁いた。
「待ってました」
私も、囁き返した。
二人で、祭壇の前に立った。
司祭が、前に出る。
「本日、ここに集いし皆様」
司祭の声が、礼拝堂に響く。
「我々は、ルシアン=ノルディアとエリシア=ハーランドの結婚を祝福するために、ここに集まりました」
拍手が起こった。
「では、誓いの言葉を」
司祭が、ルシアンを見た。
「ルシアン=ノルディア、あなたはエリシア=ハーランドを妻とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
ルシアンが、力強く答えた。
「エリシア=ハーランド、あなたはルシアン=ノルディアを夫とし――」
同じ質問が、私に向けられた。
「誓います」
私も、はっきりと答えた。
「では、指輪の交換を」
ルシアンが、私の指に指輪をはめた。
銀色の指輪。内側には、小さな文字が刻まれている。
「永遠に」
私も、ルシアンの指に指輪をはめた。
「では――」
司祭が、微笑んだ。
「神の御名において、二人は夫婦となりました」
「新郎は、新婦にキスを」
ルシアンが、私を見た。
その目が、優しく輝いている。
彼は、ゆっくりと私に近づき――。
その時。
バァン!
礼拝堂の扉が、激しく開かれた。
「待て!」
鋭い声。
全員が、振り向いた。
扉には――。
黒いローブを纏った、十人ほどの男たちが立っていた。
「その結婚、認めぬ!」
リーダーらしき男が、叫んだ。
「エリシア=ハーランドは、王国の裏切り者! 辺境王との結婚など、許されぬ!」
場内が、騒然となった。
「何者だ!」
オスカーが、剣を抜いた。
「王妃派の残党か!?」
「そうだ」
男が、仮面を外した。
見覚えのある顔――。
元・王妃の側近、ヴィクター配下の貴族だった。
「エリシアを、連行する!」
男たちが、剣を抜いて突進してきた。
「させるか!」
レオンと雪狼族の戦士たちが、立ち塞がった。
礼拝堂の中で、剣がぶつかり合う音。
「エリシア!」
ルシアンが、私を庇った。
「下がれ!」
「でも――」
「お前を、傷つけさせるものか!」
ルシアンが、剣を抜いた。
瞬時に、敵の一人を倒す。
「さすが、冷血王」
男のリーダーが、嘲笑った。
「だが、我々には秘策がある」
彼が、懐から何かを取り出した。
小さな瓶。
「これは――魔力封じの毒だ!」
瓶を地面に叩きつけた。
紫色の煙が、広がる。
「くっ……」
ルシアンが、膝をついた。
「魔力が……使えない」
他の戦士たちも、次々と倒れていく。
「ルシアン!」
私も、体が重くなった。
魔力が、封じられている。
「ははは! これで、お前たちは無力だ!」
男が、私に近づいてきた。
「さあ、大人しく来てもらおうか」
彼の手が、私の腕を掴もうとした――。
その瞬間。
「エリシア様に、触るな!」
ミラが、男に体当たりした。
「小娘が!」
男が、ミラを突き飛ばした。
ミラの体が、壁に叩きつけられる。
「ミラ!」
「くそ……」
ルシアンが、立ち上がろうとするが――体が動かない。
「もう、諦めろ」
男が、再び私に手を伸ばした。
私は――。
「触らないで!」
叫んだ。
その瞬間。
私の体から、青白い光が溢れた。
「な、何だ!?」
男が、吹き飛ばされた。
「これは……」
私自身も、驚いていた。
体の中から、力が湧き上がってくる。
前世の記憶、この世界の魔法、そして――。
守りたいという、強い想い。
「古代魔法……!?」
司祭が、驚愕した。
「エリシア様が、古代魔法を!」
私は、手を前に伸ばした。
「氷よ、我が意志に従え」
氷の結晶が、敵たちを包み込んだ。
一瞬で、全員が氷漬けになった。
「すごい……」
ラウラが、呟いた。
魔力封じの毒の効果が、消えていく。
ルシアンが、立ち上がった。
「エリシア……お前」
「わかりません」
私も、自分の手を見た。
「でも、守りたかった。みんなを、あなたを」
ルシアンが、私を抱きしめた。
「ありがとう」
衛兵たちが、氷漬けの男たちを連行していく。
「大丈夫ですか、皆さん!」
グレンが、民衆に声をかけている。
「ええ、大丈夫です」
「エリシア様が、守ってくれました」
民衆が、口々に言う。
礼拝堂の中が、再び静かになった。
「では――」
司祭が、咳払いをした。
「中断したところから、続けましょう」
場内から、笑い声が起こった。
「新郎は、新婦にキスを」
ルシアンが、再び私を見た。
「今度こそ、邪魔はないな」
「ええ」
私も、微笑んだ。
ルシアンが、私の頬に手を添えた。
そして――。
唇が、触れ合った。
優しく、深く、愛に満ちたキス。
「「「おめでとうございます!!」」」
礼拝堂中に、歓声が響いた。
拍手、歓声、祝福の声。
窓の外の民衆も、大歓声を上げている。
「やった!」
「エリシア様とルシアン様、結婚した!」
「万歳!」
キスが終わり、二人で振り向いた。
「皆さん、ありがとうございます!」
私たちは、手を繋いで観客に向かって頭を下げた。
「これより、ルシアンとエリシアは、夫婦となりました!」
司祭の宣言に、再び大きな拍手。
「さあ、行こう」
ルシアンが、私の手を引いた。
二人で、バージンロードを歩く。
祝福の声に包まれながら。
扉を出ると――。
外には、数千人の民衆が待っていた。
「おめでとうございます!!」
「幸せに!!」
「エリシア様、ルシアン様、万歳!!」
歓声が、空に響く。
花びらが、舞っている。
「綺麗……」
私は、空を見上げた。
青い空、白い雲、そして舞い散る花びら。
「幸せ?」
ルシアンが、訊いた。
「とても」
私は、彼を見上げた。
「こんなに幸せなこと、初めてです」
「私も、だ」
ルシアンが、私の額にキスをした。
「一生、お前を幸せにする」
「私も、あなたを幸せにします」
二人で、民衆に手を振った。
「ありがとう! 皆さん、ありがとう!」
歓声は、いつまでも続いた。

その夜、祝宴が開かれた。
城の大広間には、数百人の客人。
料理、音楽、笑い声。
「乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
グラスが、響き合う。
「エリシア」
ルシアンが、私の手を取った。
「ダンスを」
「はい」
二人で、フロアの中央に立った。
音楽が始まる。
ワルツ。
ルシアンの手が、私の腰を支えた。
「上手ですね」
「お前に教えてもらったからな」
彼が、微笑んだ。
「覚えてるか? 三ヶ月前、お前が社交ダンスを教えてくれた」
「ええ、覚えています」
あの時、ルシアンは不器用で――。
何度も私の足を踏んだ。
でも今は――。
「完璧ですね」
「お前のためだ」
ルシアンが、私を見つめた。
「お前の花嫁として、恥ずかしくないように」
「ルシアン……」
胸が、熱くなった。
「愛している」
「私も」
二人で、踊り続けた。
周囲の人々が、拍手をしている。
「素敵!」
「お似合い!」
「幸せそう!」
温かい声に包まれて。
曲が終わり、私たちは一礼した。
「お疲れ様」
ミラが、飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとう」
「ねえ、エリシア」
「何?」
「幸せ?」
ミラが、真剣な顔で訊いた。
「とても」
私は、微笑んだ。
「こんなに幸せでいいのかって思うくらい」
「良かった」
ミラが、涙を流した。
「エリシアには、幸せになってほしかったから」
「ミラ……」
私は、彼女を抱きしめた。
「ありがとう。あなたがいてくれたから、ここまで来られた」
「アタシこそ」
ミラが、私の背中に顔を埋めた。
「エリシアに出会えて、本当に良かった」
二人で、しばらく抱き合っていた。

深夜。
宴が終わり、静かになった城。
新婚の寝室で、私は窓辺に立っていた。
「まだ、起きていたのか」
ルシアンが、入ってきた。
「ええ。興奮して、眠れなくて」
「私も、だ」
彼は、私の隣に立った。
「信じられないな」
「何が?」
「お前が、私の妻になったということが」
ルシアンが、私の手を取った。
「夢じゃないかと思う」
「夢じゃありませんよ」
私は、彼の頬をつねった。
「痛っ」
「ほら、現実です」
二人で、笑った。
「エリシア」
「はい」
「これから、どんな困難があっても――」
ルシアンが、私を抱き寄せた。
「一緒に、乗り越えよう」
「はい」
私も、彼を抱きしめた。
「二人で、幸せな未来を作りましょう」
「ああ」
二人で、しばらく抱き合っていた。
星空の下。
冷たい風が吹いている。
でも、心は――温かかった。
「さあ、休もう」
「はい」
ルシアンが、私の手を引いた。
新しい人生の始まり。
夫婦としての、第一歩。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
でも――。
その夜、私たちはほとんど眠らなかった。
語り合い、笑い合い、愛し合った。
長い、幸せな夜。
朝日が昇る頃、ようやく眠りについた。
二人で、寄り添いながら。
幸せな夢の中へ。
新しい未来が、今、始まった。
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