追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

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第3章「辺境からの革命」

第25話「教育革命」

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地方巡回から三ヶ月。

私たちは、王都に戻った。

執務室の机には、山積みの報告書。

「各地の状況をまとめました」

オスカーが、書類を整理している。

「協力的な領地――十五」

「中立から賛成に転じた領地――八」

「依然として反対の領地――十七」

「少しずつ、増えているな」

ルシアンが言った。

「ええ。でも――」

私は、別の書類を手に取った。

「深刻な問題が、見えてきました」

「何だ?」

「教師不足です」

私は、データを示した。

「学校を作りたいという要望は、各地から来ています」

「でも、教えられる人材が、圧倒的に不足しています」

「確かに……」

カイル王子も、頷いた。

「王国全体で、読み書きができる平民は一割にも満たない」

「その中で、他人に教えられる人材となると――」

「ほとんどいません」

私は、立ち上がった。

「だから、作ります」

「作る?」

「教師養成学校です」

私は、地図を広げた。

「王都に、教師を育成する専門学校を設立します」

「期間は一年。そこで、教育法を学び――」

「卒業後は、各地の学校に派遣します」

「なるほど……」

ルシアンが、考え込んだ。

「だが、誰が教えるんだ?」

「私です」

私は、はっきりと答えた。

「それに、ノルディアで実績のある教師たち」

「そして――」

私は、カイルを見た。

「殿下にも、協力していただきたいのですが」

「私が?」

「はい。歴史や政治を、教えていただきたいんです」

カイルは、少し驚いた顔をしたが――。

「……面白そうですね」

彼は、微笑んだ。

「喜んで、協力します」

「ありがとうございます!」

---

二週間後。

王都の東区に、新しい建物が完成した。

「王立教師養成学校」

真新しい看板が、掲げられている。

「立派だな」

ルシアンが、建物を見上げた。

「ええ。国王陛下の支援のおかげです」

三階建ての校舎。

教室が十、図書室、食堂、寮――。

全てが、最新の設備。

「では、生徒募集を始めましょう」

私は、募集要項を掲示した。

「年齢制限なし。身分不問」

「ただし、読み書きができること」

「そして――」

私は、最も重要な条件を書いた。

「子供たちを愛し、未来を信じる心を持つこと」

---

募集開始から一週間。

予想を超える応募があった。

「二百人!?」

私は、応募書類の山を見て驚いた。

「こんなに……」

「人々の関心が、高いんですね」

ミラが、書類を整理しながら言った。

「でも、受け入れられるのは――」

「五十人が限界です」

オスカーが、計算した。

「施設の規模から考えて」

「では、試験をします」

私は、決断した。

「筆記試験と、面接」

「そして――」

「模擬授業です」

---

試験当日。

講堂には、二百人の応募者が集まっていた。

年齢も、背景も、様々。

二十代の若者。

四十代の元商人。

六十代の元学者。

「皆さん、ようこそ」

私は、壇上に立った。

「これから、試験を行います」

「まず、筆記試験」

配布された問題用紙――。

基礎的な読み書き、計算。

そして、教育についての小論文。

「時間は、二時間です」

皆、真剣な顔で問題に取り組んでいる。

二時間後。

「では、回収します」

試験官たちが、答案を集めた。

「明日、合格者を発表します」

「面接と模擬授業は、合格者のみです」

---

その夜、私たちは答案を採点した。

「この人、素晴らしい」

ミラが、一枚の答案を見せた。

「小論文、感動的だよ」

読んでみると――。

『私は、貧しい農家の出身です』

『字も読めず、計算もできず、長年苦労してきました』

『でも、五年前――ある旅の商人が、私に読み書きを教えてくれました』

『その時、初めて世界が広がりました』

『今度は、私が子供たちに――同じ感動を与えたい』

「いい文章だ」

ルシアンも、感心している。

「この人は、絶対に合格させましょう」

私は、○をつけた。

深夜まで、採点は続いた。

---

翌日。

合格者が発表された。

「五十名の方、おめでとうございます」

掲示板の前で、歓声が上がった。

「やった!」

「受かった!」

「先生になれる!」

涙を流す人、喜びで跳ねる人――。

皆の表情が、希望に輝いていた。

「では、面接を行います」

一人一人、丁寧に話を聞いた。

「なぜ、教師になりたいのですか?」

「子供たちに、何を教えたいですか?」

「困難があっても、続けられますか?」

様々な答えが返ってきた。

そして――。

「最終的に、三十名を選抜します」

私は、宣言した。

「残りの方は、補欠合格として――」

「来期の入学をお待ちしています」

---

一週間後。

入学式が行われた。

三十名の第一期生。

年齢は二十歳から六十歳まで。

農民、元商人、元職人、元貴族――。

様々な背景を持つ人々。

「皆さん、ようこそ」

私は、壇上から語りかけた。

「これから一年、厳しい訓練が待っています」

「でも――」

私は、微笑んだ。

「皆さんは、この国の未来を作る人材です」

「子供たちに、希望を与える存在です」

「だから、誇りを持ってください」

「「「はい!」」」

力強い返事。

「では、授業を始めましょう」

---

最初の授業は、「教育の基礎」。

私が、直接教える。

「教育とは、何でしょうか?」

生徒たちが、考えている。

「知識を与えることです」

一人の若い女性が答えた。

「確かに。でも、それだけではありません」

私は、黒板に書いた。

「教育とは――」

「『可能性を開花させること』です」

「可能性……」

「そうです」

私は、生徒たちを見渡した。

「全ての子供には、無限の可能性があります」

「でも、それは――適切な環境がなければ、開花しません」

「皆さんの役目は――」

「その環境を作ることです」

生徒たちが、真剣にメモを取っている。

「では、具体的な教育法を学びましょう」

授業は、三時間続いた。

でも、誰一人として眠そうな顔をしていなかった。

皆、目を輝かせて聞いていた。

---

二ヶ月後。

生徒たちは、基礎を学び終えた。

「では、次は実習です」

私は、発表した。

「王都の小学校で、実際に教えてもらいます」

「え、もう!?」

生徒たちが、驚いた。

「不安です……」

「大丈夫」

私は、微笑んだ。

「私も、最初は不安でした」

「でも、子供たちの笑顔を見れば――自然と言葉が出てきます」

---

実習初日。

王都第一小学校。

三十人の養成校生徒が、それぞれ教室に入った。

私は、一人の生徒――エマという三十歳の元農婦を見守っていた。

「こ、こんにちは……」

エマが、緊張した顔で教室に入る。

子供たちが、好奇心いっぱいの目で見ている。

「わ、私は、エマです……」

声が、震えている。

「今日は、み、皆さんに……」

言葉が、続かない。

子供たちが、ざわざわし始めた。

「大丈夫かな、あの先生」

「緊張してるね」

エマの顔が、真っ赤になった。

その時――。

一人の小さな女の子が、手を上げた。

「先生、緊張してるの?」

「え、ええ……」

「私も、最初の授業のとき緊張した」

女の子が、微笑んだ。

「でも、みんな優しいよ」

その言葉に、エマの表情が緩んだ。

「……ありがとう」

彼女は、深呼吸をした。

「では、改めて」

今度は、しっかりとした声。

「私はエマです。今日は、算数を教えます」

子供たちが、拍手をした。

エマは――。

そこから、素晴らしい授業をした。

わかりやすい説明。

子供たちへの優しい接し方。

「すごい……」

私は、感動していた。

「最初の緊張が嘘のよう」

授業が終わると――。

「先生、楽しかった!」

「また来てね!」

子供たちが、エマを囲んだ。

エマは、涙を流していた。

「ありがとう……皆、ありがとう……」

---

実習が終わり、養成校に戻った。

「皆さん、お疲れ様でした」

私は、生徒たちを見渡した。

「どうでしたか?」

「楽しかったです!」

「子供たち、可愛かったです!」

「大変だったけど、やりがいがありました!」

口々に、感想を語る。

「良かった」

私は、微笑んだ。

「では、今日の反省会をしましょう」

一人一人、授業の内容を振り返る。

良かった点、改善すべき点――。

全員で、共有していく。

「エマさん」

私は、彼女を指名した。

「あなたの授業、素晴らしかったです」

「本当ですか……?」

「ええ。特に、子供たちとの距離の取り方が上手でした」

エマが、嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます」

---

六ヶ月後。

生徒たちは、見違えるほど成長していた。

授業の組み立て、教材の作成、子供への対応――。

全てが、プロフェッショナルになっていた。

「では、卒業試験を行います」

私は、発表した。

「実際の授業を、一時間行ってください」

「テーマは、自由」

「ただし――」

私は、真剣な顔で言った。

「子供たちの心に、何かを残してください」

---

卒業試験の日。

三十人が、それぞれの授業を披露した。

算数、国語、歴史、科学――。

どれも、工夫に満ちた素晴らしい授業。

そして、最後――。

エマの授業。

彼女のテーマは、「夢」。

「皆さん、夢はありますか?」

子供たちが、次々と手を上げた。

「お医者さんになりたい!」

「騎士になりたい!」

「お花屋さん!」

エマは、一人一人の夢を聞いた。

そして――。

「素晴らしいですね。でも――」

彼女は、優しく言った。

「夢は、待っているだけでは叶いません」

「努力が、必要です」

「私も、昔は夢がありました」

エマが、自分の話を始めた。

「字を読めるようになりたい。世界を知りたい」

「でも、農家の娘だった私には、無理だと思っていました」

子供たちが、真剣に聞いている。

「でも――ある人が、私に教えてくれました」

エマの目が、輝いた。

「『夢は、努力すれば叶う』と」

「だから、私は勉強しました」

「そして今――先生になれました」

「皆さんも――」

エマは、子供たちの目を見た。

「諦めないでください」

「努力し続けてください」

「そうすれば、必ず夢は叶います」

子供たちの目に、涙が浮かんでいた。

「先生……」

「僕も、頑張る!」

「私も!」

授業が終わると――。

大きな拍手が起こった。

私も、涙を流していた。

「素晴らしい……」

---

卒業式の日。

三十名全員が、卒業証書を受け取った。

「おめでとうございます」

私は、一人一人に証書を渡した。

「皆さんは、この国の宝です」

「子供たちの未来を、託します」

「「「はい!」」」

力強い返事。

「では――」

私は、発表した。

「皆さんの赴任地を、発表します」

一人一人、封筒を渡していく。

中には、赴任先の領地名が書かれている。

「東部、バルトリア領」

「南部、リンデン領」

「北部、フロスト領」

王国中、様々な場所。

「遠く離れても――」

私は、涙声で言った。

「皆さんは、仲間です」

「困ったことがあれば、いつでも相談してください」

「エリシア様……」

エマが、前に出た。

「私たち、頑張ります」

「絶対に、成功させます」

他の生徒たちも、頷いた。

「この一年、本当にありがとうございました」

「こちらこそ」

私は、皆を抱きしめた。

「ありがとう。そして――」

「行ってらっしゃい」

---

翌日。

卒業生たちは、それぞれの赴任地へと旅立った。

「頑張ってね!」

「子供たち、よろしくね!」

見送る人々の声。

私は、城の塔から見送った。

「行ったな……」

ルシアンが、隣に立った。

「ええ」

私は、涙を拭った。

「でも、寂しくはありません」

「なぜ?」

「だって――」

私は、微笑んだ。

「彼らが、各地で種を蒔くんです」

「教育という、希望の種を」

「そうだな」

ルシアンも、微笑んだ。

「お前の夢が、広がっていくんだな」

「私たちの、夢です」

私は、彼の手を握った。

「一緒に見た、夢」

二人で、空を見上げた。

青い空、白い雲。

そして――。

未来への希望。

教育革命は、今始まったばかり。

でも、確実に――。

この国を、変え始めていた。

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