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第11章「春待つ駅」
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一月十五日。
陸が、大阪へ旅立つ日だった。
朝、東京駅で見送ることにした。
新幹線の出発は、午前十時。
私は九時に東京駅に着いた。
改札の前で待つ。
人がたくさん行き交っている。
スーツケースを引いた人。
急ぎ足で歩く人。
みんな、それぞれの場所へ向かっている。
九時半、陸が来た。
大きなスーツケースを引いて。
「お待たせ」
「ううん」
陸は少し疲れた顔をしていた。
「昨日、荷造り大変だった?」
「うん。まだ段ボールが残ってるけど、後から送るよ」
「そっか」
二人で、ホームへ向かう。
新幹線が、すでに停まっていた。
「もう時間だね」
陸が言った。
「うん」
「寂しい」
「私も」
陸は私の手を握った。
「でも、すぐ会えるから」
「うん」
「来週末、帰ってくるよ」
「本当?」
「本当。約束」
陸は私を抱きしめた。
「愛してる」
「私も」
「毎日、連絡するから」
「うん」
「寂しくなったら、すぐ言ってね」
「わかった」
発車のベルが鳴った。
「行かなきゃ」
「うん」
陸は、もう一度キスをした。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
陸は新幹線に乗り込んだ。
窓から、手を振ってくれる。
私も手を振った。
新幹線が、ゆっくりと動き出す。
陸の姿が、遠くなっていく。
そして、見えなくなった。
私は、その場に立ち尽くしていた。
胸が、空っぽになったような気がした。
陸が大阪へ行って、一週間。
最初の数日は、頻繁に連絡を取り合った。
朝の「おはよう」。
仕事の合間の近況報告。
夜の長い電話。
でも、だんだんと忙しくなっていった。
陸は新しい環境で、仕事に追われている。
私も、年度末に向けて、プロジェクトが立て込んでいる。
連絡の頻度が、少しずつ減っていった。
朝のメッセージは続いている。
でも、夜の電話は、週に二回くらいになった。
最初の週末、陸は帰ってきた。
約束通り。
土曜日の午後、駅で待ち合わせた。
「久しぶり」
「一週間ぶりだね」
抱き合う。
温かい。
「会いたかった」
「俺も」
陸の部屋へ行って、一緒に過ごした。
料理を作って、食べて、話をして。
そして、体を重ねた。
でも、何かが違う気がした。
言葉にできない、微妙な距離感。
日曜日の夜、陸はまた大阪へ戻った。
「また来週」
「うん」
でも、次の週末、陸は帰ってこなかった。
「ごめん、急な仕事が入って。今週は帰れない」
メッセージを見て、落胆した。
「大丈夫。仕事、頑張ってね」
そう返信したけれど、本当は寂しかった。
でも、言えなかった。
陸も忙しいのに、わがままを言えない。
二月に入った。
東京は、まだ寒かった。
仕事は相変わらず忙しく、毎日残業が続いている。
陸との連絡は、さらに減っていった。
メッセージは、一日に数回。
電話は、週に一回あるかないか。
そして、陸が帰ってくるのも、月に一度になった。
私も、一度大阪へ行こうと思った。
でも、仕事が忙しくて、休みが取れない。
気がつけば、もう一ヶ月も会っていなかった。
ある金曜日の夜、陸から電話があった。
「もしもし」
「篠原さん、今大丈夫?」
「うん」
「ごめん、最近連絡少なくて」
「大丈夫。忙しいんでしょ」
「うん。でも、それは言い訳だよね」
陸の声が、疲れている。
「無理しないでね」
「ありがとう。篠原さんも忙しい?」
「まあ、ちょっと」
「そっか」
沈黙。
何を話せばいいのか、わからなくなっていた。
「あのね」
陸が言った。
「なに?」
「明日、帰ろうと思ってたんだけど」
心臓が跳ねた。
「本当?」
「うん。でも、急な会議が入っちゃって」
「……そうなんだ」
「ごめん」
「謝らないで。仕方ないよ」
「でも」
「大丈夫」
そう言ったけれど、声が震えていた。
「篠原さん」
「なに?」
「怒ってる?」
「怒ってないよ」
「嘘」
陸の声が、不安そうだった。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫」
でも、本当は大丈夫じゃなかった。
寂しい。
会いたい。
でも、それを言えない。
陸も忙しいのに。
「じゃあ、また連絡するね」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
電話が切れた。
私は、ソファに座り込んだ。
涙が出そうになった。
でも、我慢した。
泣いても、何も変わらない。
次の日、真紀に電話をした。
「もしもし」
「夕ちゃん? どうしたの、急に」
「今、大丈夫?」
「うん。何かあった?」
「……ちょっと話聞いてほしくて」
「わかった。今から会える?」
「いいの?」
「もちろん。駅前のカフェで」
「ありがとう」
一時間後、駅前のカフェで真紀と会った。
「久しぶり」
「うん」
席に座って、コーヒーを注文する。
「で、どうしたの?」
真紀が聞いた。
「陸くんと、うまくいってない気がして」
「うまくいってないって?」
「最近、全然会えないの。連絡も減ってるし」
「遠距離だもんね」
「うん」
コーヒーが運ばれてきた。
一口飲む。苦い。
「寂しいの?」
「……うん」
「陸くんには言った?」
「言えない」
「どうして?」
「だって、彼も忙しいし。私のわがままで、困らせたくないし」
真紀は少し呆れたような顔をした。
「夕ちゃん、また我慢してる」
「え?」
「寂しいなら、寂しいって言わなきゃ」
「でも」
「でもじゃない」
真紀はコーヒーを一口飲んだ。
「遠距離で大事なのは、コミュニケーションなんだよ」
「わかってる」
「わかってない」
真紀は首を振った。
「言葉にしないと、相手にはわからないの」
「でも、彼を困らせたくないし」
「困らせるって思ってるのは、夕ちゃんだけかもよ」
「え?」
「陸くんだって、夕ちゃんが寂しがってるって知りたいと思うよ。むしろ、何も言わない方が心配するんじゃない?」
真紀の言葉が、胸に刺さった。
「そうかな」
「そうだよ。クリスマスのとき、言ってたでしょ。言葉にするって」
「……うん」
「じゃあ、ちゃんと伝えなよ」
「でも、どう言えばいいの?」
「正直に。寂しいって。会いたいって」
真紀は優しく笑った。
「大丈夫。陸くん、ちゃんと受け止めてくれるよ」
「ありがとう」
「頑張れ」
カフェを出て、家に帰った。
真紀の言葉を、何度も反芻する。
言葉にする。
気持ちを伝える。
それが、約束だった。
でも、できていなかった。
私は、また我慢していた。
スマホを取り出して、陸にメッセージを送った。
「あのね、正直に言うね」
「寂しい。すごく寂しい」
「会いたい。すぐにでも会いたい」
送信する。
心臓が、早く打っている。
すぐに既読がついた。
でも、返信が来ない。
一分。二分。三分。
不安になる。
もしかして、困らせてしまった?
重いって思われた?
十分後、陸から電話がかかってきた。
「もしもし」
「篠原さん、ごめん」
陸の声が、切なげだった。
「俺、全然気づいてなかった」
「え?」
「篠原さんが、こんなに寂しがってるって」
「ごめんね、急に」
「謝らないで」
陸の声が、優しい。
「俺こそ、ごめん。最近、仕事ばかりで」
「仕方ないよ」
「でも、篠原さんのこと、ちゃんと考えてなかった」
「そんなことない」
「ある」
陸は少し黙ってから、言った。
「来週、絶対帰る」
「でも、仕事」
「大丈夫。調整する」
「無理しないで」
「無理じゃない。篠原さんに会いたいから」
その言葉に、涙が溢れた。
「ありがとう」
「こちらこそ。言ってくれて、ありがとう」
「私、我慢してた」
「わかってる」
陸の声が、さらに優しくなった。
「でも、これからは我慢しないで。寂しいときは、寂しいって言って」
「うん」
「俺も、ちゃんと言うから」
「わかった」
「愛してる」
「私も愛してる」
電話を切って、涙を拭いた。
真紀の言う通りだった。
言葉にすることで、繋がれる。
気持ちを伝えることで、理解し合える。
次の週末、陸が帰ってきた。
土曜日の午後、東京駅で待ち合わせた。
改札から出てきた陸を見つけて、駆け寄った。
「久しぶり」
「一ヶ月ぶりだね」
抱き合う。
温かい。
「会いたかった」
「俺も」
陸は私の顔を見た。
「痩せた?」
「そうかな」
「ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ」
「嘘」
陸は心配そうな顔をした。
「今日は、たくさん食べさせるから」
「ありがとう」
駅前のレストランで、遅めのランチを取った。
「大阪、どう?」
私が聞いた。
「慣れてきた。仕事も、だんだんペースがつかめてきたよ」
「よかった」
「でも、やっぱり寂しい」
陸は私の手を握った。
「東京に帰りたいって、毎日思ってる」
「私も、大阪に行きたいって思ってる」
「じゃあ、来てよ」
「いつがいい?」
「来月の週末とか」
「行く」
「本当?」
「本当」
陸は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、楽しみにしてる」
食事を終えて、陸の部屋へ向かった。
久しぶりの部屋。
でも、少し荷物が減っている。
「大阪に持っていったの?」
「うん。少しずつ移してる」
ソファに座る。
陸が隣に座った。
「ねえ」
陸が言った。
「なに?」
「この前は、ごめん」
「謝らないで」
「でも、俺、全然篠原さんのこと考えてなかった」
「そんなことない」
「ある」
陸は私の手を握った。
「仕事に追われて、篠原さんが寂しがってるって、気づけなかった」
「久我くんも大変だったんでしょ」
「でも、それは理由にならない」
陸の目が、真剣だった。
「遠距離だからこそ、もっとちゃんと向き合わないといけなかった」
「ありがとう」
「これからは、もっとちゃんと連絡するから」
「無理しないで」
「無理じゃない。篠原さんと繋がっていたいから」
その言葉に、胸が温かくなった。
「私も」
陸は私を抱き寄せた。
「愛してる」
「私も愛してる」
キスをした。
久しぶりの、陸の温もり。
「今夜、泊まっていく?」
「うん」
「じゃあ、夕食作るね」
「手伝う」
二人でキッチンに立った。
夜、食事を終えて、ベッドに横たわった。
陸は私を抱きしめている。
「ねえ」
陸が言った。
「なに?」
「俺、最近考えてたんだ」
「何を?」
「このままでいいのかなって」
心臓が跳ねた。
「どういうこと?」
「遠距離、続けられるかなって」
不安が、一気に押し寄せてきた。
「続けられないの?」
「そうじゃない」
陸は私の顔を見た。
「俺は続けたい。でも、篠原さんを苦しめてるんじゃないかって」
「苦しめてないよ」
「本当?」
「本当」
私は陸の顔を見つめた。
「確かに、寂しい。でも、それは久我くんと一緒にいたいからであって、苦しいわけじゃない」
「でも」
「大丈夫」
私は陸の手を握った。
「私、久我くんのこと、愛してる。だから、遠距離でも頑張れる」
陸の目が、潤んでいた。
「ありがとう」
「こちらこそ」
「俺も、愛してる」
陸は私を強く抱きしめた。
「絶対、乗り越えよう」
「うん」
「一緒に」
「一緒に」
その夜、二人はまた体を重ねた。
久しぶりの、陸の温もり。
優しく。
深く。
お互いを確かめ合うように。
「愛してる」
「私も」
何度も、そう言葉を交わした。
翌朝、目が覚めると、陸はまだ寝ていた。
そっと、ベッドから出る。
キッチンへ行って、コーヒーを淹れる。
窓の外を見ると、空が晴れている。
もう二月の終わり。
春が、近づいている。
陸が目を覚ました。
「おはよう」
「おはよう。コーヒー、淹れたよ」
「ありがとう」
二人でテーブルに座って、コーヒーを飲む。
「今日、何時の新幹線?」
「四時」
「じゃあ、まだ時間あるね」
「うん」
「どこか行く?」
「どこでもいいよ。篠原さんと一緒なら」
二人で笑った。
「じゃあ、散歩でもしようか」
「いいね」
支度をして、外に出た。
隅田川沿いを歩く。
風は、まだ冷たい。
でも、日差しは暖かい。
「春、近いね」
陸が言った。
「うん」
「桜、咲いたら見に来てよ」
「大阪の?」
「うん。大阪城の桜、綺麗らしいよ」
「行く」
「約束?」
「約束」
手を繋いで、川沿いを歩く。
対岸に、スカイツリーが見える。
「あのね」
私が言った。
「なに?」
「ありがとう」
「何が?」
「帰ってきてくれて」
陸は笑った。
「当たり前だよ。篠原さんに会いたかったから」
「私も会いたかった」
「じゃあ、良かった」
ベンチに座って、川を見る。
水が、ゆっくりと流れている。
「ねえ」
陸が言った。
「なに?」
「遠距離、大変だけど」
「うん」
「でも、会えたときの嬉しさは、倍になる気がする」
「そうだね」
「だから、頑張れる」
陸は私の手を握った。
「篠原さんがいてくれるから」
「私も。久我くんがいてくれるから」
二人で笑った。
時間が、ゆっくりと流れた。
午後三時、東京駅へ向かった。
新幹線の時間が近づいている。
改札の前で、立ち止まる。
「じゃあ」
陸が言った。
「気をつけてね」
「うん」
「来月、大阪に来てね」
「行く」
「待ってる」
陸は私を抱きしめた。
「愛してる」
「私も」
「また連絡するね」
「うん」
陸は、もう一度キスをした。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
陸は改札を通って、ホームへ向かった。
振り返って、手を振ってくれる。
私も手を振った。
陸の姿が、見えなくなった。
でも、今日は寂しくなかった。
また会える。
来月、大阪で。
そして、その後も。
何度も、何度も。
距離は離れていても。
心は、繋がっている。
言葉で。
気持ちで。
駅を出て、帰路につく。
スマホを見ると、陸からメッセージが来ていた。
「今日は、ありがとう。幸せだった」
「こちらこそ」
「来月、楽しみにしてる」
「私も」
「愛してる」
「私も愛してる。ずっと」
スマホを閉じて、空を見上げた。
青い空。
白い雲。
春が、もうすぐそこまで来ている。
陸との遠距離。
それは、簡単じゃない。
寂しいときもある。
すれ違うときもある。
でも、乗り越えられる。
言葉を交わして。
気持ちを伝え合って。
二人で、一緒に。
私は、駅を後にした。
心は、軽かった。
春を待つように。
陸との未来を待つように。
三月に入った。
仕事は相変わらず忙しかったけれど、気持ちは前より軽かった。
陸との連絡も、また頻繁になっていた。
朝の「おはよう」。
仕事の合間のメッセージ。
夜の電話。
そして、約束通り、三月の週末、私は大阪へ行った。
新幹線に乗って、二時間半。
新大阪駅で、陸が待っていた。
「お疲れ様」
「ただいま」
抱き合う。
「やっと来てくれたね」
「うん。楽しみにしてた」
「俺も」
陸の案内で、大阪の街を歩いた。
道頓堀。
大阪城。
たこ焼き。
全てが、新鮮だった。
「楽しい?」
「すごく」
「よかった」
陸のマンションへ行った。
小さな部屋だけれど、整理されている。
「ここで暮らしてるんだね」
「うん。寂しいけどね」
「もう少しの辛抱だよ」
「そうだね」
その夜、二人で過ごした。
料理を作って、食べて、話をして。
そして、体を重ねた。
「愛してる」
「私も」
遠く離れていても。
変わらない気持ち。
それを、確かめ合った。
翌朝、新幹線で東京へ戻った。
陸が駅まで送ってくれた。
「また来てね」
「うん」
「次は、桜の時期に」
「約束」
「愛してる」
「私も」
新幹線に乗って、窓から手を振る。
陸も手を振ってくれる。
列車が動き出す。
陸の姿が、遠くなる。
でも、寂しくなかった。
また会える。
そう信じているから。
車窓から、大阪の街が流れていく。
そして、東京へ向かう。
春が、もうすぐそこまで来ている。
陸との遠距離も、あと一年半。
長いようで、短い。
でも、大丈夫。
二人で乗り越えられる。
言葉で繋がって。
気持ちを伝え合って。
スマホを見ると、陸からメッセージが来ていた。
「また会おうね」
「うん。また会おう」
「愛してる」
「私も愛してる。ずっと」
窓の外を見る。
青い空。
白い雲。
そして、遠くに見える富士山。
春が、来る。
新しい季節が、始まる。
陸と私の物語も、まだ続いていく。
陸が、大阪へ旅立つ日だった。
朝、東京駅で見送ることにした。
新幹線の出発は、午前十時。
私は九時に東京駅に着いた。
改札の前で待つ。
人がたくさん行き交っている。
スーツケースを引いた人。
急ぎ足で歩く人。
みんな、それぞれの場所へ向かっている。
九時半、陸が来た。
大きなスーツケースを引いて。
「お待たせ」
「ううん」
陸は少し疲れた顔をしていた。
「昨日、荷造り大変だった?」
「うん。まだ段ボールが残ってるけど、後から送るよ」
「そっか」
二人で、ホームへ向かう。
新幹線が、すでに停まっていた。
「もう時間だね」
陸が言った。
「うん」
「寂しい」
「私も」
陸は私の手を握った。
「でも、すぐ会えるから」
「うん」
「来週末、帰ってくるよ」
「本当?」
「本当。約束」
陸は私を抱きしめた。
「愛してる」
「私も」
「毎日、連絡するから」
「うん」
「寂しくなったら、すぐ言ってね」
「わかった」
発車のベルが鳴った。
「行かなきゃ」
「うん」
陸は、もう一度キスをした。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
陸は新幹線に乗り込んだ。
窓から、手を振ってくれる。
私も手を振った。
新幹線が、ゆっくりと動き出す。
陸の姿が、遠くなっていく。
そして、見えなくなった。
私は、その場に立ち尽くしていた。
胸が、空っぽになったような気がした。
陸が大阪へ行って、一週間。
最初の数日は、頻繁に連絡を取り合った。
朝の「おはよう」。
仕事の合間の近況報告。
夜の長い電話。
でも、だんだんと忙しくなっていった。
陸は新しい環境で、仕事に追われている。
私も、年度末に向けて、プロジェクトが立て込んでいる。
連絡の頻度が、少しずつ減っていった。
朝のメッセージは続いている。
でも、夜の電話は、週に二回くらいになった。
最初の週末、陸は帰ってきた。
約束通り。
土曜日の午後、駅で待ち合わせた。
「久しぶり」
「一週間ぶりだね」
抱き合う。
温かい。
「会いたかった」
「俺も」
陸の部屋へ行って、一緒に過ごした。
料理を作って、食べて、話をして。
そして、体を重ねた。
でも、何かが違う気がした。
言葉にできない、微妙な距離感。
日曜日の夜、陸はまた大阪へ戻った。
「また来週」
「うん」
でも、次の週末、陸は帰ってこなかった。
「ごめん、急な仕事が入って。今週は帰れない」
メッセージを見て、落胆した。
「大丈夫。仕事、頑張ってね」
そう返信したけれど、本当は寂しかった。
でも、言えなかった。
陸も忙しいのに、わがままを言えない。
二月に入った。
東京は、まだ寒かった。
仕事は相変わらず忙しく、毎日残業が続いている。
陸との連絡は、さらに減っていった。
メッセージは、一日に数回。
電話は、週に一回あるかないか。
そして、陸が帰ってくるのも、月に一度になった。
私も、一度大阪へ行こうと思った。
でも、仕事が忙しくて、休みが取れない。
気がつけば、もう一ヶ月も会っていなかった。
ある金曜日の夜、陸から電話があった。
「もしもし」
「篠原さん、今大丈夫?」
「うん」
「ごめん、最近連絡少なくて」
「大丈夫。忙しいんでしょ」
「うん。でも、それは言い訳だよね」
陸の声が、疲れている。
「無理しないでね」
「ありがとう。篠原さんも忙しい?」
「まあ、ちょっと」
「そっか」
沈黙。
何を話せばいいのか、わからなくなっていた。
「あのね」
陸が言った。
「なに?」
「明日、帰ろうと思ってたんだけど」
心臓が跳ねた。
「本当?」
「うん。でも、急な会議が入っちゃって」
「……そうなんだ」
「ごめん」
「謝らないで。仕方ないよ」
「でも」
「大丈夫」
そう言ったけれど、声が震えていた。
「篠原さん」
「なに?」
「怒ってる?」
「怒ってないよ」
「嘘」
陸の声が、不安そうだった。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫」
でも、本当は大丈夫じゃなかった。
寂しい。
会いたい。
でも、それを言えない。
陸も忙しいのに。
「じゃあ、また連絡するね」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
電話が切れた。
私は、ソファに座り込んだ。
涙が出そうになった。
でも、我慢した。
泣いても、何も変わらない。
次の日、真紀に電話をした。
「もしもし」
「夕ちゃん? どうしたの、急に」
「今、大丈夫?」
「うん。何かあった?」
「……ちょっと話聞いてほしくて」
「わかった。今から会える?」
「いいの?」
「もちろん。駅前のカフェで」
「ありがとう」
一時間後、駅前のカフェで真紀と会った。
「久しぶり」
「うん」
席に座って、コーヒーを注文する。
「で、どうしたの?」
真紀が聞いた。
「陸くんと、うまくいってない気がして」
「うまくいってないって?」
「最近、全然会えないの。連絡も減ってるし」
「遠距離だもんね」
「うん」
コーヒーが運ばれてきた。
一口飲む。苦い。
「寂しいの?」
「……うん」
「陸くんには言った?」
「言えない」
「どうして?」
「だって、彼も忙しいし。私のわがままで、困らせたくないし」
真紀は少し呆れたような顔をした。
「夕ちゃん、また我慢してる」
「え?」
「寂しいなら、寂しいって言わなきゃ」
「でも」
「でもじゃない」
真紀はコーヒーを一口飲んだ。
「遠距離で大事なのは、コミュニケーションなんだよ」
「わかってる」
「わかってない」
真紀は首を振った。
「言葉にしないと、相手にはわからないの」
「でも、彼を困らせたくないし」
「困らせるって思ってるのは、夕ちゃんだけかもよ」
「え?」
「陸くんだって、夕ちゃんが寂しがってるって知りたいと思うよ。むしろ、何も言わない方が心配するんじゃない?」
真紀の言葉が、胸に刺さった。
「そうかな」
「そうだよ。クリスマスのとき、言ってたでしょ。言葉にするって」
「……うん」
「じゃあ、ちゃんと伝えなよ」
「でも、どう言えばいいの?」
「正直に。寂しいって。会いたいって」
真紀は優しく笑った。
「大丈夫。陸くん、ちゃんと受け止めてくれるよ」
「ありがとう」
「頑張れ」
カフェを出て、家に帰った。
真紀の言葉を、何度も反芻する。
言葉にする。
気持ちを伝える。
それが、約束だった。
でも、できていなかった。
私は、また我慢していた。
スマホを取り出して、陸にメッセージを送った。
「あのね、正直に言うね」
「寂しい。すごく寂しい」
「会いたい。すぐにでも会いたい」
送信する。
心臓が、早く打っている。
すぐに既読がついた。
でも、返信が来ない。
一分。二分。三分。
不安になる。
もしかして、困らせてしまった?
重いって思われた?
十分後、陸から電話がかかってきた。
「もしもし」
「篠原さん、ごめん」
陸の声が、切なげだった。
「俺、全然気づいてなかった」
「え?」
「篠原さんが、こんなに寂しがってるって」
「ごめんね、急に」
「謝らないで」
陸の声が、優しい。
「俺こそ、ごめん。最近、仕事ばかりで」
「仕方ないよ」
「でも、篠原さんのこと、ちゃんと考えてなかった」
「そんなことない」
「ある」
陸は少し黙ってから、言った。
「来週、絶対帰る」
「でも、仕事」
「大丈夫。調整する」
「無理しないで」
「無理じゃない。篠原さんに会いたいから」
その言葉に、涙が溢れた。
「ありがとう」
「こちらこそ。言ってくれて、ありがとう」
「私、我慢してた」
「わかってる」
陸の声が、さらに優しくなった。
「でも、これからは我慢しないで。寂しいときは、寂しいって言って」
「うん」
「俺も、ちゃんと言うから」
「わかった」
「愛してる」
「私も愛してる」
電話を切って、涙を拭いた。
真紀の言う通りだった。
言葉にすることで、繋がれる。
気持ちを伝えることで、理解し合える。
次の週末、陸が帰ってきた。
土曜日の午後、東京駅で待ち合わせた。
改札から出てきた陸を見つけて、駆け寄った。
「久しぶり」
「一ヶ月ぶりだね」
抱き合う。
温かい。
「会いたかった」
「俺も」
陸は私の顔を見た。
「痩せた?」
「そうかな」
「ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ」
「嘘」
陸は心配そうな顔をした。
「今日は、たくさん食べさせるから」
「ありがとう」
駅前のレストランで、遅めのランチを取った。
「大阪、どう?」
私が聞いた。
「慣れてきた。仕事も、だんだんペースがつかめてきたよ」
「よかった」
「でも、やっぱり寂しい」
陸は私の手を握った。
「東京に帰りたいって、毎日思ってる」
「私も、大阪に行きたいって思ってる」
「じゃあ、来てよ」
「いつがいい?」
「来月の週末とか」
「行く」
「本当?」
「本当」
陸は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、楽しみにしてる」
食事を終えて、陸の部屋へ向かった。
久しぶりの部屋。
でも、少し荷物が減っている。
「大阪に持っていったの?」
「うん。少しずつ移してる」
ソファに座る。
陸が隣に座った。
「ねえ」
陸が言った。
「なに?」
「この前は、ごめん」
「謝らないで」
「でも、俺、全然篠原さんのこと考えてなかった」
「そんなことない」
「ある」
陸は私の手を握った。
「仕事に追われて、篠原さんが寂しがってるって、気づけなかった」
「久我くんも大変だったんでしょ」
「でも、それは理由にならない」
陸の目が、真剣だった。
「遠距離だからこそ、もっとちゃんと向き合わないといけなかった」
「ありがとう」
「これからは、もっとちゃんと連絡するから」
「無理しないで」
「無理じゃない。篠原さんと繋がっていたいから」
その言葉に、胸が温かくなった。
「私も」
陸は私を抱き寄せた。
「愛してる」
「私も愛してる」
キスをした。
久しぶりの、陸の温もり。
「今夜、泊まっていく?」
「うん」
「じゃあ、夕食作るね」
「手伝う」
二人でキッチンに立った。
夜、食事を終えて、ベッドに横たわった。
陸は私を抱きしめている。
「ねえ」
陸が言った。
「なに?」
「俺、最近考えてたんだ」
「何を?」
「このままでいいのかなって」
心臓が跳ねた。
「どういうこと?」
「遠距離、続けられるかなって」
不安が、一気に押し寄せてきた。
「続けられないの?」
「そうじゃない」
陸は私の顔を見た。
「俺は続けたい。でも、篠原さんを苦しめてるんじゃないかって」
「苦しめてないよ」
「本当?」
「本当」
私は陸の顔を見つめた。
「確かに、寂しい。でも、それは久我くんと一緒にいたいからであって、苦しいわけじゃない」
「でも」
「大丈夫」
私は陸の手を握った。
「私、久我くんのこと、愛してる。だから、遠距離でも頑張れる」
陸の目が、潤んでいた。
「ありがとう」
「こちらこそ」
「俺も、愛してる」
陸は私を強く抱きしめた。
「絶対、乗り越えよう」
「うん」
「一緒に」
「一緒に」
その夜、二人はまた体を重ねた。
久しぶりの、陸の温もり。
優しく。
深く。
お互いを確かめ合うように。
「愛してる」
「私も」
何度も、そう言葉を交わした。
翌朝、目が覚めると、陸はまだ寝ていた。
そっと、ベッドから出る。
キッチンへ行って、コーヒーを淹れる。
窓の外を見ると、空が晴れている。
もう二月の終わり。
春が、近づいている。
陸が目を覚ました。
「おはよう」
「おはよう。コーヒー、淹れたよ」
「ありがとう」
二人でテーブルに座って、コーヒーを飲む。
「今日、何時の新幹線?」
「四時」
「じゃあ、まだ時間あるね」
「うん」
「どこか行く?」
「どこでもいいよ。篠原さんと一緒なら」
二人で笑った。
「じゃあ、散歩でもしようか」
「いいね」
支度をして、外に出た。
隅田川沿いを歩く。
風は、まだ冷たい。
でも、日差しは暖かい。
「春、近いね」
陸が言った。
「うん」
「桜、咲いたら見に来てよ」
「大阪の?」
「うん。大阪城の桜、綺麗らしいよ」
「行く」
「約束?」
「約束」
手を繋いで、川沿いを歩く。
対岸に、スカイツリーが見える。
「あのね」
私が言った。
「なに?」
「ありがとう」
「何が?」
「帰ってきてくれて」
陸は笑った。
「当たり前だよ。篠原さんに会いたかったから」
「私も会いたかった」
「じゃあ、良かった」
ベンチに座って、川を見る。
水が、ゆっくりと流れている。
「ねえ」
陸が言った。
「なに?」
「遠距離、大変だけど」
「うん」
「でも、会えたときの嬉しさは、倍になる気がする」
「そうだね」
「だから、頑張れる」
陸は私の手を握った。
「篠原さんがいてくれるから」
「私も。久我くんがいてくれるから」
二人で笑った。
時間が、ゆっくりと流れた。
午後三時、東京駅へ向かった。
新幹線の時間が近づいている。
改札の前で、立ち止まる。
「じゃあ」
陸が言った。
「気をつけてね」
「うん」
「来月、大阪に来てね」
「行く」
「待ってる」
陸は私を抱きしめた。
「愛してる」
「私も」
「また連絡するね」
「うん」
陸は、もう一度キスをした。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
陸は改札を通って、ホームへ向かった。
振り返って、手を振ってくれる。
私も手を振った。
陸の姿が、見えなくなった。
でも、今日は寂しくなかった。
また会える。
来月、大阪で。
そして、その後も。
何度も、何度も。
距離は離れていても。
心は、繋がっている。
言葉で。
気持ちで。
駅を出て、帰路につく。
スマホを見ると、陸からメッセージが来ていた。
「今日は、ありがとう。幸せだった」
「こちらこそ」
「来月、楽しみにしてる」
「私も」
「愛してる」
「私も愛してる。ずっと」
スマホを閉じて、空を見上げた。
青い空。
白い雲。
春が、もうすぐそこまで来ている。
陸との遠距離。
それは、簡単じゃない。
寂しいときもある。
すれ違うときもある。
でも、乗り越えられる。
言葉を交わして。
気持ちを伝え合って。
二人で、一緒に。
私は、駅を後にした。
心は、軽かった。
春を待つように。
陸との未来を待つように。
三月に入った。
仕事は相変わらず忙しかったけれど、気持ちは前より軽かった。
陸との連絡も、また頻繁になっていた。
朝の「おはよう」。
仕事の合間のメッセージ。
夜の電話。
そして、約束通り、三月の週末、私は大阪へ行った。
新幹線に乗って、二時間半。
新大阪駅で、陸が待っていた。
「お疲れ様」
「ただいま」
抱き合う。
「やっと来てくれたね」
「うん。楽しみにしてた」
「俺も」
陸の案内で、大阪の街を歩いた。
道頓堀。
大阪城。
たこ焼き。
全てが、新鮮だった。
「楽しい?」
「すごく」
「よかった」
陸のマンションへ行った。
小さな部屋だけれど、整理されている。
「ここで暮らしてるんだね」
「うん。寂しいけどね」
「もう少しの辛抱だよ」
「そうだね」
その夜、二人で過ごした。
料理を作って、食べて、話をして。
そして、体を重ねた。
「愛してる」
「私も」
遠く離れていても。
変わらない気持ち。
それを、確かめ合った。
翌朝、新幹線で東京へ戻った。
陸が駅まで送ってくれた。
「また来てね」
「うん」
「次は、桜の時期に」
「約束」
「愛してる」
「私も」
新幹線に乗って、窓から手を振る。
陸も手を振ってくれる。
列車が動き出す。
陸の姿が、遠くなる。
でも、寂しくなかった。
また会える。
そう信じているから。
車窓から、大阪の街が流れていく。
そして、東京へ向かう。
春が、もうすぐそこまで来ている。
陸との遠距離も、あと一年半。
長いようで、短い。
でも、大丈夫。
二人で乗り越えられる。
言葉で繋がって。
気持ちを伝え合って。
スマホを見ると、陸からメッセージが来ていた。
「また会おうね」
「うん。また会おう」
「愛してる」
「私も愛してる。ずっと」
窓の外を見る。
青い空。
白い雲。
そして、遠くに見える富士山。
春が、来る。
新しい季節が、始まる。
陸と私の物語も、まだ続いていく。
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