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第19章「二重の刃」
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夜、セリーヌは緊急の連絡を受けた。
ヴィクトルからだ。
町の隠れ酒場で会いたいと。
重要な情報があると。
セリーヌはレオンを連れて、急いで向かった。
酒場に着くと、ヴィクトルが奥の部屋で待っていた。
顔色が悪い。
「何があったのですか」
「殿下」
ヴィクトルは深刻な顔をした。
「情報が漏れています」
「何の情報が」
「殿下の動きです。ロベルト殿下が、殿下の行動を全て知っています」
セリーヌは息を呑んだ。
「どうして」
「スパイがいます。殿下の側近の中に」
セリーヌは頭が真っ白になった。
スパイ。
味方の中に、裏切り者がいる。
「誰です」
「まだ特定できていません。ですが、確実にいます」
ヴィクトルは紙を広げた。
「これを見てください」
暗号文書だった。
だが、部分的に解読されている。
「これは、ロベルト殿下の部下が持っていたものです。私の仲間が盗みました」
セリーヌは読んだ。
「王女、市場訪問。目的、民衆の支持獲得。対策必要」
「王女、孤児院訪問。慈善活動強化。警戒すべし」
全て、セリーヌの最近の行動だ。
「これは」
「殿下の行動が、全てロベルト殿下に報告されています」
ヴィクトルは真剣な顔をした。
「スパイは、殿下の近くにいます」
セリーヌは考えた。
自分の側近は誰か。
マリー。レオン。グレン侯爵夫人。ダミアン卿。ヴィクトル。
この中に、裏切り者が?
「レオンではありません」
セリーヌは断言した。
「彼は信頼できます」
「マリーは?」
「彼女も違います。私が幼い頃から仕えてくれています」
「ならば」
ヴィクトルは考え込んだ。
「ダミアン卿の周辺かもしれません」
「ダミアン卿を疑うのですか」
「いえ、卿本人ではありません。ですが、卿の部下の中に、スパイがいる可能性があります」
セリーヌは頷いた。
確かに、ダミアン卿には数人の部下がいる。
その中の誰かが。
「特定できますか」
「試してみます」
ヴィクトルは立ち上がった。
「罠を仕掛けます。偽の情報を流し、誰が反応するか見ます」
「わかりました」
三日後、ヴィクトルから連絡があった。
スパイを特定したと。
セリーヌはレオンと共に、指定された場所へ向かった。
王都の外れ、廃屋。
中に入ると、ヴィクトルが一人の男を縛っていた。
三十代の男。ダミアン卿の部下、ユーグだ。
「彼です」
ヴィクトルが言った。
「偽の情報を流したところ、彼がすぐにロベルト殿下の部下に接触しました」
セリーヌはユーグに近づいた。
「なぜ」
ユーグは顔を背けた。
「なぜ裏切ったのですか」
「金だよ」
ユーグは吐き捨てるように言った。
「ロベルト殿下は、たくさんの金をくれた。ダミアン卿は給金が安い」
「それだけ?」
「それだけで十分だ」
ユーグは笑った。
「この世は金が全てだ。忠誠なんて、金で買える」
セリーヌは拳を握った。
怒りが込み上げる。
だが、冷静さを保った。
「あなたは、どこまで報告していたのですか」
「全てだ」
ユーグは得意げに言った。
「殿下の市場訪問、孤児院訪問、証拠の隠し場所、仲間の名前。全部」
セリーヌは血の気が引いた。
証拠の隠し場所。
グレン侯爵夫人の屋敷。
「ロベルトは、証拠の場所を知っているのですか」
「ああ。でも、まだ動いていない。タイミングを待ってるんだろう」
セリーヌは急いでヴィクトルに言った。
「すぐに侯爵夫人に連絡を。証拠を移動させてください」
「わかりました」
ヴィクトルは走り去った。
セリーヌはユーグに戻った。
「他に、誰かスパイはいますか」
「知らない。俺一人だと思う」
「本当に?」
「本当だ」
ユーグは肩をすくめた。
「俺が全部報告してたから、他にスパイは必要ないだろう」
セリーヌはレオンを見た。
「どうしますか」
レオンが聞いた。
「殺すべきか、牢に入れるべきか」
セリーヌは考えた。
殺せば、口封じになる。
だが、それは正義ではない。
牢に入れれば、証言できる。
だが、脱走や口封じのリスクがある。
「牢に入れます」
セリーヌは決断した。
「ただし、誰も接触できない場所に。秋の式典まで」
「承知しました」
レオンはユーグを連行した。
セリーヌは廃屋に一人残った。
裏切り。
味方だと思っていた者の中に、敵がいた。
信じていたのに。
セリーヌは壁に手をついた。
疲れた。
誰を信じればいい。
誰が本当の味方なのか。
扉が開いた。
ヴィクトルが戻ってきた。
「殿下、証拠は無事です。侯爵夫人が別の場所に移しました」
「よかった」
セリーヌは安堵した。
「ヴィクトル、あなたは本当に信頼できますか」
ヴィクトルは驚いた顔をした。
「殿下」
「ごめんなさい。でも、聞かなければならない」
セリーヌは真剣な顔をした。
「あなたも、金で裏切りますか」
ヴィクトルは長い間、セリーヌを見ていた。
やがて、静かに答えた。
「私の復讐は、金では買えません」
彼は上着をめくり、背中を見せた。
無数の傷跡。
鞭で打たれた跡。
「これは、ロベルト殿下の命令で受けた傷です。牢獄で、三年間」
ヴィクトルは上着を戻した。
「私はロベルト殿下を憎んでいます。金よりも、復讐を選びます」
セリーヌは頷いた。
「わかりました。信じます」
「ありがとうございます」
二人は廃屋を出た。
夜空に星が輝いている。
セリーヌは深呼吸した。
裏切りはあった。
だが、本当の味方もいる。
レオン。ヴィクトル。グレン侯爵夫人。ダミアン卿。
彼らは、金ではなく信念で動いている。
それを信じる。
王宮に戻り、セリーヌは情報管理の方法を見直した。
もう、全員に全ての情報を共有しない。
必要な者にだけ、必要な情報を。
そして、重要な情報は、最小限の人間だけで共有する。
レオンとマリーだけ。
彼らだけは、絶対に信頼できる。
窓の外、月が昇っていた。
裏切りの痛み。
だが、それも教訓だ。
もっと慎重に。
もっと賢く。
敵は狡猾だ。
ならば、こちらも狡猾にならなければならない。
セリーヌは計画を修正した。
スパイ対策。情報管理。
全てを見直す。
秋の式典まで、あと一ヶ月半。
失敗は許されない。
セリーヌは、全力で準備を進める。
ヴィクトルからだ。
町の隠れ酒場で会いたいと。
重要な情報があると。
セリーヌはレオンを連れて、急いで向かった。
酒場に着くと、ヴィクトルが奥の部屋で待っていた。
顔色が悪い。
「何があったのですか」
「殿下」
ヴィクトルは深刻な顔をした。
「情報が漏れています」
「何の情報が」
「殿下の動きです。ロベルト殿下が、殿下の行動を全て知っています」
セリーヌは息を呑んだ。
「どうして」
「スパイがいます。殿下の側近の中に」
セリーヌは頭が真っ白になった。
スパイ。
味方の中に、裏切り者がいる。
「誰です」
「まだ特定できていません。ですが、確実にいます」
ヴィクトルは紙を広げた。
「これを見てください」
暗号文書だった。
だが、部分的に解読されている。
「これは、ロベルト殿下の部下が持っていたものです。私の仲間が盗みました」
セリーヌは読んだ。
「王女、市場訪問。目的、民衆の支持獲得。対策必要」
「王女、孤児院訪問。慈善活動強化。警戒すべし」
全て、セリーヌの最近の行動だ。
「これは」
「殿下の行動が、全てロベルト殿下に報告されています」
ヴィクトルは真剣な顔をした。
「スパイは、殿下の近くにいます」
セリーヌは考えた。
自分の側近は誰か。
マリー。レオン。グレン侯爵夫人。ダミアン卿。ヴィクトル。
この中に、裏切り者が?
「レオンではありません」
セリーヌは断言した。
「彼は信頼できます」
「マリーは?」
「彼女も違います。私が幼い頃から仕えてくれています」
「ならば」
ヴィクトルは考え込んだ。
「ダミアン卿の周辺かもしれません」
「ダミアン卿を疑うのですか」
「いえ、卿本人ではありません。ですが、卿の部下の中に、スパイがいる可能性があります」
セリーヌは頷いた。
確かに、ダミアン卿には数人の部下がいる。
その中の誰かが。
「特定できますか」
「試してみます」
ヴィクトルは立ち上がった。
「罠を仕掛けます。偽の情報を流し、誰が反応するか見ます」
「わかりました」
三日後、ヴィクトルから連絡があった。
スパイを特定したと。
セリーヌはレオンと共に、指定された場所へ向かった。
王都の外れ、廃屋。
中に入ると、ヴィクトルが一人の男を縛っていた。
三十代の男。ダミアン卿の部下、ユーグだ。
「彼です」
ヴィクトルが言った。
「偽の情報を流したところ、彼がすぐにロベルト殿下の部下に接触しました」
セリーヌはユーグに近づいた。
「なぜ」
ユーグは顔を背けた。
「なぜ裏切ったのですか」
「金だよ」
ユーグは吐き捨てるように言った。
「ロベルト殿下は、たくさんの金をくれた。ダミアン卿は給金が安い」
「それだけ?」
「それだけで十分だ」
ユーグは笑った。
「この世は金が全てだ。忠誠なんて、金で買える」
セリーヌは拳を握った。
怒りが込み上げる。
だが、冷静さを保った。
「あなたは、どこまで報告していたのですか」
「全てだ」
ユーグは得意げに言った。
「殿下の市場訪問、孤児院訪問、証拠の隠し場所、仲間の名前。全部」
セリーヌは血の気が引いた。
証拠の隠し場所。
グレン侯爵夫人の屋敷。
「ロベルトは、証拠の場所を知っているのですか」
「ああ。でも、まだ動いていない。タイミングを待ってるんだろう」
セリーヌは急いでヴィクトルに言った。
「すぐに侯爵夫人に連絡を。証拠を移動させてください」
「わかりました」
ヴィクトルは走り去った。
セリーヌはユーグに戻った。
「他に、誰かスパイはいますか」
「知らない。俺一人だと思う」
「本当に?」
「本当だ」
ユーグは肩をすくめた。
「俺が全部報告してたから、他にスパイは必要ないだろう」
セリーヌはレオンを見た。
「どうしますか」
レオンが聞いた。
「殺すべきか、牢に入れるべきか」
セリーヌは考えた。
殺せば、口封じになる。
だが、それは正義ではない。
牢に入れれば、証言できる。
だが、脱走や口封じのリスクがある。
「牢に入れます」
セリーヌは決断した。
「ただし、誰も接触できない場所に。秋の式典まで」
「承知しました」
レオンはユーグを連行した。
セリーヌは廃屋に一人残った。
裏切り。
味方だと思っていた者の中に、敵がいた。
信じていたのに。
セリーヌは壁に手をついた。
疲れた。
誰を信じればいい。
誰が本当の味方なのか。
扉が開いた。
ヴィクトルが戻ってきた。
「殿下、証拠は無事です。侯爵夫人が別の場所に移しました」
「よかった」
セリーヌは安堵した。
「ヴィクトル、あなたは本当に信頼できますか」
ヴィクトルは驚いた顔をした。
「殿下」
「ごめんなさい。でも、聞かなければならない」
セリーヌは真剣な顔をした。
「あなたも、金で裏切りますか」
ヴィクトルは長い間、セリーヌを見ていた。
やがて、静かに答えた。
「私の復讐は、金では買えません」
彼は上着をめくり、背中を見せた。
無数の傷跡。
鞭で打たれた跡。
「これは、ロベルト殿下の命令で受けた傷です。牢獄で、三年間」
ヴィクトルは上着を戻した。
「私はロベルト殿下を憎んでいます。金よりも、復讐を選びます」
セリーヌは頷いた。
「わかりました。信じます」
「ありがとうございます」
二人は廃屋を出た。
夜空に星が輝いている。
セリーヌは深呼吸した。
裏切りはあった。
だが、本当の味方もいる。
レオン。ヴィクトル。グレン侯爵夫人。ダミアン卿。
彼らは、金ではなく信念で動いている。
それを信じる。
王宮に戻り、セリーヌは情報管理の方法を見直した。
もう、全員に全ての情報を共有しない。
必要な者にだけ、必要な情報を。
そして、重要な情報は、最小限の人間だけで共有する。
レオンとマリーだけ。
彼らだけは、絶対に信頼できる。
窓の外、月が昇っていた。
裏切りの痛み。
だが、それも教訓だ。
もっと慎重に。
もっと賢く。
敵は狡猾だ。
ならば、こちらも狡猾にならなければならない。
セリーヌは計画を修正した。
スパイ対策。情報管理。
全てを見直す。
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シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
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