処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

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第21章「公開裁判」

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秋の式典の日が来た。
王宮の大広間は、人で埋め尽くされていた。
貴族、評議員、商人、そして選ばれた民衆代表。
二百人以上が集まっている。
広間の中央には、演壇が設けられている。
そこで、父王の誕生祝賀の式典が行われるはずだった。
だが、今日は違う。
セリーヌは、この場を法廷に変える。
「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」
父王が演壇に立ち、挨拶を始めた。
「今日は私の誕生日ですが、それだけではありません。重要な発表があります」
父は一度、セリーヌを見た。
セリーヌは頷いた。
昨夜、父に全てを話した。
証拠を見せた。
父は最初、信じられないという顔をした。
だが、証拠を一つ一つ確認するうちに、表情が変わっていった。
怒り。悲しみ。そして、決意。
「娘セリーヌが、重大な告発をします」
父は演壇を降りた。
セリーヌが演壇に立った。
深呼吸。
心臓が激しく打っている。
だが、恐れない。
準備は整った。
証拠は揃った。
味方もいる。
「皆様」
セリーヌは声を張り上げた。
「私は今日、王弟ロベルトを告発します」
どよめきが起こった。
ロベルトが立ち上がった。
「セリーヌ、何を言っている」
「座ってください、伯父上」
セリーヌは冷静に言った。
「これは公開の場での告発です。法に則って行われます」
父王が手を上げた。
「全員、静粛に。セリーヌの話を聞くのだ」
広間が静まった。
セリーヌは続けた。
「ロベルト、あなたは三つの罪を犯しました」
セリーヌは指を立てた。
「第一に、父王の毒殺未遂。第二に、私の暗殺未遂。第三に、国家反逆罪」
ざわめきが広がった。
ロベルトは笑った。
「馬鹿げている。証拠はあるのか」
「あります」
セリーヌは合図した。
レオンが箱を運んできた。
中には、全ての証拠が入っている。
「まず、第一の罪。父王の毒殺未遂」
セリーヌは小瓶を取り出した。
「これは、父上が毎日飲んでいた強壮剤です。錬金術師に分析してもらった結果、微量のヒ素が検出されました」
セリーヌは分析報告書を掲げた。
「ヒ素は、長期間摂取すると慢性的な健康被害を引き起こします。父上の体調不良は、この毒によるものでした」
侍医ルイが立ち上がった。
「私が証言します」
ルイは前に出た。
「確かに、私は陛下に強壮剤を処方しておりました。しかし、毒が混入されているとは知りませんでした」
「誰が混入したのですか」
セリーヌが聞いた。
「おそらく、供給元です」
ルイは答えた。
「マルセル商会から仕入れた鉱物粉末に、すでに毒が混ざっていました」
マルセルが立ち上がった。
「私も証言します」
マルセルは震える声で言った。
「私は知りませんでした。ですが、東国商人リーから仕入れた鉱物粉末に、毒が混入されていたようです」
「その東国商人リーは」
「ロベルト殿下と繋がっています」
マルセルは勇気を振り絞って言った。
「私は、リーがロベルト殿下の別邸を訪れるのを見ました」
どよめきが広がった。
ロベルトは冷静さを保っていた。
「それだけでは証拠にならない。商人が私を訪れることは珍しくない」
「では、これはどうですか」
セリーヌは契約書を取り出した。
魔術契約書。
「これは、あなたと東国の魔術師ザインとの契約書です。内容は、私の排除。呪術による暗殺」
契約書を掲げる。
血で書かれた文字が、明らかに見える。
「これは、あなたの私室から盗み出したものです」
ロベルトの顔色が変わった。
「盗んだと認めるのか。それは犯罪だ」
「緊急避難です」
セリーヌは反論した。
「自分の命を守るために必要な行動でした」
グレン侯爵が立ち上がった。
「法務官ダニエル、この契約書は証拠として有効か」
法務官ダニエルは契約書を確認した。
「血の誓約による魔術契約。確かにロベルト殿下の署名があります。有効です」
ざわめきが激しくなった。
ロベルトは苛立った様子を見せた。
「それは偽造だ」
「偽造ではありません」
セリーヌは冷静に言った。
「筆跡鑑定をしましょう。あなたの他の文書と比較すれば、明らかです」
「それでも」
ロベルトは声を荒げた。
「魔術契約など、法的効力はない」
「殺人未遂の証拠としては十分です」
セリーヌは畳み掛けた。
「そして、第二の罪。私への暗殺未遂。先日の晩餐会で、私のワインに毒が盛られました」
「それも私がやったと言うのか」
「あなたが命じました」
セリーヌは真剣な顔をした。
「直接の証拠はありません。ですが、動機、機会、そして過去の行動から、あなた以外に犯人はいません」
ロベルトは笑った。
「推測だけで罪を着せるつもりか」
「では、第三の罪」
セリーヌは別の書類を取り出した。
東国との密約書。
「これは、あなたと東国との密約です。内容は、東国によるリオネール侵攻支援。その代償として、即位後に東部領土を割譲する」
書類を掲げる。
広間が凍りついた。
国を売る契約。
これは、誰の目にも明白な反逆だ。
「これも、あなたの私室から得たものです。あなたの署名があります」
ロベルトは黙った。
言葉が出ないようだ。
セリーヌは続けた。
「さらに、証拠があります」
セリーヌは別の書類を取り出した。
「これは、あなたが貴族たちに金を貸し付け、その代わりに忠誠を買った記録です」
買収記録を一つ一つ読み上げる。
貴族の名前。金額。条件。
全てが記されている。
何人かの貴族が、顔を伏せた。
「これは買収です。評議会での票を金で買う行為。これも法律違反です」
セリーヌは全ての証拠を机に並べた。
毒の分析結果。魔術契約書。東国との密約書。買収記録。
そして、最後の一枚。
「これは、過去の記録です」
セリーヌは古い巻物を広げた。
「あなたは過去にも、クーデターを企てました。先王の時代に。その時は秘密裏に処理されましたが、記録は残っています」
巻物を読み上げる。
ロベルトの過去の陰謀。
王位簒奪未遂。
処分内容。
全てが明らかになる。
広間は完全に静まり返っていた。
全員が、セリーヌとロベルトを見ている。
ロベルトは、ついに言葉を失っていた。
父王が立ち上がった。
「ロベルト」
父の声は、悲しみに満ちていた。
「これは本当か」
ロベルトは長い間、沈黙していた。
やがて、笑い出した。
冷たい笑い。
「本当だ」
ロベルトは認めた。
「全て、本当だ」
どよめきが爆発した。
「兄上は優柔不断だ。国を強くできない。だから、私が王になる必要があった」
「お前は」
父は怒りに震えていた。
「私を裏切ったのか」
「裏切り?違う」
ロベルトは叫んだ。
「これは救済だ。この国を救うためだ」
「国を売って、救済だと」
セリーヌは声を荒げた。
「東部領土を東国に渡して、どこが救済なのですか」
「必要な犠牲だ」
ロベルトは開き直った。
「東国の支援を得て王位につき、その後で領土は取り戻す。それが私の計画だった」
「嘘です」
セリーヌは断言した。
「あなたは、ただ権力が欲しかっただけ。国のことなど、考えていなかった」
ロベルトは何も答えなかった。
父王が手を上げた。
「評議会、判断を」
評議員たちが顔を見合わせた。
グレン侯爵が立ち上がった。
「証拠は十分です。ロベルト殿下の罪は明白です」
マルコも立ち上がった。
「同意します。これは国家反逆です」
ダミアン卿も立ち上がった。
「私も同意します」
次々と評議員が立ち上がる。
全員が、ロベルトの罪を認めた。
バルドだけが、座ったままだった。
「バルド」
父王がバルドを見た。
「お前は、どうなのだ」
バルドは顔を上げた。
「私は」
彼は言葉に詰まった。
「私は、ロベルト殿下を支持していました」
バルドは認めた。
「全てを知っていました。毒の手配も、魔術師の雇用も、東国との交渉も」
どよめきが起こった。
「お前もか」
父は絶望した顔をした。
「私も、裁いてください」
バルドは立ち上がった。
「私は共犯者です」
セリーヌはバルドを見た。
この男も、ロベルトと同じく権力に溺れた。
だが、最後に真実を告げた。
それは、わずかな良心か。
それとも、ただの諦めか。
父王は深く息をついた。
「ロベルト、バルド。お前たちを、反逆罪で逮捕する」
警備兵が近づいた。
ロベルトは抵抗しなかった。
ただ、セリーヌを見た。
その目には、怒りと、そして何か別の感情が混ざっていた。
後悔だろうか。
いや、違う。
それは、敗北を認めない意志だった。
「これで終わりだと思うな、セリーヌ」
ロベルトは低い声で言った。
「まだ、終わっていない」
警備兵が二人を連行した。
広間は騒然としていた。
セリーヌは演壇に立ったまま、深呼吸をした。
やった。
告発は成功した。
ロベルトは逮捕された。
だが、まだ終わっていない。
ロベルトの言葉が、頭に残っている。
まだ、何かある。
セリーヌは警戒を緩めなかった。
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