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過保護になっちゃった
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俺、改めシエル・アインシュテルンとサイラス・レオンハルト君は、かくして広大な庭園を散歩しながら交流を深めることになった。
しばらくはお互い無言で、白レンガの敷かれた小道を歩く。
青々とした蔦が絡むアーチをくぐった先に、真っ白い東屋が見える。名前も知らない花が咲いた庭木を眺め、てくてくてく。
あ、ちょうちょ。
「シエル…先程はすまなかった」
ちょうちょを目で追いかけてた俺に、サイラス君がそっと声をかけてきた。
「母上の言った通りだ。こんなことを言って、戸惑わせてしまうかも知れないが…私は君を、手放したくない。誰にも渡したくないし、誰より大切にしたいんだ」
ひえぇ俺、8歳児に口説かれてる?まさか。
手放したくないも何も、俺は君のものではないでしょう。いや待てよ、婚約者になるともう、そんな感じの関係なの?
つーか初対面で生涯の誓いをたてるとか、どんだけ惚れっぽいおませさんなのサイラス君。そんなだから主人公にホイホイ目移りしちゃうんだよ。まぁ、俺が彼に執着し過ぎて、幻滅させちゃったのかもだけど。
「サイラス様は、わたしのことをまだ何もご存じないでしょう。わたしを知るうちに、その…つまらない奴だと呆れたり、だんだんうっとうしく思ったりして、後悔するかも知れませんよ」
ははは、と空笑いしながら言ったら、ぐいっと手を引かれて、白い東屋…ガゼボというんだっけ?の柱に壁ドンされた。8歳児に壁ドンされる俺。勘弁してぇ。
「シエル。君は私のことが、気に入らないのか?何故そんなふうに突き放すようなことばかり言うんだ。以前はあんなにも私を…」
「以前?」
初対面と思ってたけど、以前からサイラス君は俺を知っていたのか?それって何歳児の時から?
きょとんとしてサイラス君を見上げると、間近にあった顔がじわじわと赤くなっていく。
「いや…その、何でもない。私こそ、君に愛想を尽かされないよう、励むとしよう」
何を励むつもりなんだ。頼むから無理しないで。
「サイラス様は、今のままでも十分素敵ですよ。わたしなどを相手にしなくても、周りの方々が放っておかれないでしょう。約束事にとらわれず、広い目をお持ちになって、ご自身にふさわしい方を…
「君に振り向いてもらえない私に価値など無い」
食い気味に言ってきたよこの子。
アレかな、逃げられると追いかけたくなる性分なの?野性なの?
しょうがないなぁ。
「これだけ近くにわたしを閉じ込めていらっしゃったら、サイラス様以外目に入りませんよ」
むん、と口唇を尖らせて不貞腐れてやったら、サイラス君は俺を腕に囲んだままぷるぷる震えたかと思うと、ぶんっと勢いよくそっぽを向いた。
んんゔん、とか苦しそうに咳払いして、耳が真っ赤になっている。急にむせちゃったのかな。咄嗟に顔を背けてくれるなんて紳士。
「君は本当に…私をどうしようというんだ」
何かモゴモゴ言っていたけど、よく聞き取れなかった。そうこうしているうちに、お茶にしよう子供たち、と父様の声がして、俺はやっと壁ドンから逃れることができた。
8歳にして壁ドンから流れるような口説き文句……末恐ろしい子だよ、サイラス君。
ふぅ、と一仕事終えたように額を拭い、ため息をつく俺を、サイラス君が食い入るように見つめていたことには気づかなかった。
◇◇◇
そんなほろ苦い婚約から、幾星霜。
俺シエルは13歳になり、サイラス君は15歳になりました。
あれだけ惚れっぽい人なのだから、年を重ねれば次々と彼氏だの彼女だの作るだろうと思っていたけど、サイラス君は予想を裏切る成長を遂げた。
輝かしいスパダリモテ男街道を歩むことなく、いささか過保護なオカン型お兄ちゃんの裏街道を驀進した。過保護の対象は、言うまでもなく俺である。
主人公君と出会うまであと3年位しかないのに、何やってるのサイラス君。
子供らしい柔らかさが抜けて、顔にも体つきにも若々しい精悍さを漂わせるようになった彼は、黙っていれば国中で行列のできるイケメンなのに。
「シエル、1人で街へ出かけるなんて危ないだろう。どうして私に声をかけないんだ」
口を開けば残念なモンペ。声をかけない理由なんて一つ。モンペと一緒に歩くのが嫌だからですぅ。
「そうでなくても君は人目を惹くのだから、伴も付けずに一人歩きしてはいけない。よからぬ輩にかどわかされたらどうする」
かどわかされるってさぁ…たまにサイラス君の語彙はおじいちゃんぽい。性格は口うるさいオカンだけど。オカンなのかおじいちゃんなのかお兄ちゃんなのかはっきりして。
「サイラス兄様と一緒に出歩く方が、よほど目立ちますよ。もしよからぬ者が現れたら、魔法で切り抜けます。自分の身くらい自分で守れますので、ご心配なく」
サイラス君のことは、兄様を付けて呼ぶようにした。親しいけれど恋愛対象にはならない相手、と線引きするためだ。兄様呼びにサイラス君からの反発があるかと思ったら、ちょっとうれしそうにしてるのが解せぬ。
それから、俺は魔法を身につけた。
しばらくはお互い無言で、白レンガの敷かれた小道を歩く。
青々とした蔦が絡むアーチをくぐった先に、真っ白い東屋が見える。名前も知らない花が咲いた庭木を眺め、てくてくてく。
あ、ちょうちょ。
「シエル…先程はすまなかった」
ちょうちょを目で追いかけてた俺に、サイラス君がそっと声をかけてきた。
「母上の言った通りだ。こんなことを言って、戸惑わせてしまうかも知れないが…私は君を、手放したくない。誰にも渡したくないし、誰より大切にしたいんだ」
ひえぇ俺、8歳児に口説かれてる?まさか。
手放したくないも何も、俺は君のものではないでしょう。いや待てよ、婚約者になるともう、そんな感じの関係なの?
つーか初対面で生涯の誓いをたてるとか、どんだけ惚れっぽいおませさんなのサイラス君。そんなだから主人公にホイホイ目移りしちゃうんだよ。まぁ、俺が彼に執着し過ぎて、幻滅させちゃったのかもだけど。
「サイラス様は、わたしのことをまだ何もご存じないでしょう。わたしを知るうちに、その…つまらない奴だと呆れたり、だんだんうっとうしく思ったりして、後悔するかも知れませんよ」
ははは、と空笑いしながら言ったら、ぐいっと手を引かれて、白い東屋…ガゼボというんだっけ?の柱に壁ドンされた。8歳児に壁ドンされる俺。勘弁してぇ。
「シエル。君は私のことが、気に入らないのか?何故そんなふうに突き放すようなことばかり言うんだ。以前はあんなにも私を…」
「以前?」
初対面と思ってたけど、以前からサイラス君は俺を知っていたのか?それって何歳児の時から?
きょとんとしてサイラス君を見上げると、間近にあった顔がじわじわと赤くなっていく。
「いや…その、何でもない。私こそ、君に愛想を尽かされないよう、励むとしよう」
何を励むつもりなんだ。頼むから無理しないで。
「サイラス様は、今のままでも十分素敵ですよ。わたしなどを相手にしなくても、周りの方々が放っておかれないでしょう。約束事にとらわれず、広い目をお持ちになって、ご自身にふさわしい方を…
「君に振り向いてもらえない私に価値など無い」
食い気味に言ってきたよこの子。
アレかな、逃げられると追いかけたくなる性分なの?野性なの?
しょうがないなぁ。
「これだけ近くにわたしを閉じ込めていらっしゃったら、サイラス様以外目に入りませんよ」
むん、と口唇を尖らせて不貞腐れてやったら、サイラス君は俺を腕に囲んだままぷるぷる震えたかと思うと、ぶんっと勢いよくそっぽを向いた。
んんゔん、とか苦しそうに咳払いして、耳が真っ赤になっている。急にむせちゃったのかな。咄嗟に顔を背けてくれるなんて紳士。
「君は本当に…私をどうしようというんだ」
何かモゴモゴ言っていたけど、よく聞き取れなかった。そうこうしているうちに、お茶にしよう子供たち、と父様の声がして、俺はやっと壁ドンから逃れることができた。
8歳にして壁ドンから流れるような口説き文句……末恐ろしい子だよ、サイラス君。
ふぅ、と一仕事終えたように額を拭い、ため息をつく俺を、サイラス君が食い入るように見つめていたことには気づかなかった。
◇◇◇
そんなほろ苦い婚約から、幾星霜。
俺シエルは13歳になり、サイラス君は15歳になりました。
あれだけ惚れっぽい人なのだから、年を重ねれば次々と彼氏だの彼女だの作るだろうと思っていたけど、サイラス君は予想を裏切る成長を遂げた。
輝かしいスパダリモテ男街道を歩むことなく、いささか過保護なオカン型お兄ちゃんの裏街道を驀進した。過保護の対象は、言うまでもなく俺である。
主人公君と出会うまであと3年位しかないのに、何やってるのサイラス君。
子供らしい柔らかさが抜けて、顔にも体つきにも若々しい精悍さを漂わせるようになった彼は、黙っていれば国中で行列のできるイケメンなのに。
「シエル、1人で街へ出かけるなんて危ないだろう。どうして私に声をかけないんだ」
口を開けば残念なモンペ。声をかけない理由なんて一つ。モンペと一緒に歩くのが嫌だからですぅ。
「そうでなくても君は人目を惹くのだから、伴も付けずに一人歩きしてはいけない。よからぬ輩にかどわかされたらどうする」
かどわかされるってさぁ…たまにサイラス君の語彙はおじいちゃんぽい。性格は口うるさいオカンだけど。オカンなのかおじいちゃんなのかお兄ちゃんなのかはっきりして。
「サイラス兄様と一緒に出歩く方が、よほど目立ちますよ。もしよからぬ者が現れたら、魔法で切り抜けます。自分の身くらい自分で守れますので、ご心配なく」
サイラス君のことは、兄様を付けて呼ぶようにした。親しいけれど恋愛対象にはならない相手、と線引きするためだ。兄様呼びにサイラス君からの反発があるかと思ったら、ちょっとうれしそうにしてるのが解せぬ。
それから、俺は魔法を身につけた。
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