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悪役令嬢サラサ見参! 1/3
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「街に繰り出しましょう」
仮眠を経てすっかり調子を取り戻したシルキィは、脈絡なくそんなことを言い出したと思うと、誰の意見を聞くこともなく一人先んじて部屋を出ていった。
セスとティアは顔を見合わせ、慌てて後を追いかける。
「せっかくの長旅なんですもの。色々なものを見て回りたいわ」
と、シルキィは主張する。意外にもこれに異を唱えたのはティアだった。
「お嬢様しかし。病み上がりですぐに外出なさるのはいささか心配でございます。今日のところは大事を取り、ご自重なさってはいかがでしょう」
「だめよ。庶民の暮らしを知るのも貴族の務めなんだから。ラ・シエラ以外の領地がどんな風なのか、この目で見る機会なんて滅多にないでしょ?」
確かに今のラ・シエラの状態では、諸領を周遊することは厳しいだろう。旅を利用して見識を広めたいというシルキィの意図は称賛に値する。
言葉を交わしながらも、シルキィは廊下をずんずんと進んでいく。
ティアはくどく反対しなかった。主の身を案じながらも、付き従うことを決めたようだ。
宿の外に出ると、シルキィはぴたりと足を止めた。彼女の目に入ったのは、軽武装をした大勢の男達。そして彼らを背に優雅に立つ少女の姿であった。
「あら、やっぱりミス・シエラでしたわ。ごきげんよう」
艶っぽい声で挨拶を口にしたのは、ボリュームのある巻き髪と、装飾過多なドレスに身を包んだいかにもな貴族令嬢であった。
「ミス・クローデン」
少女のにこやかな表情とは対照的に、シルキィの顔は苦々しいものに変わっている。
「そう露骨に嫌な顔をしないでくださらない? いたく傷付いてしまいますわ」
「……失礼致しました」
シルキィは両手でスカートを摘み、恭しく一礼する。
クローデン。その名はもちろんセスも知っている。国内外に大きな影響力を持つ高名な貴族である。帝国には政治的な意思決定を司る五大尚書と呼ばれる五つの役職が存在し、クローデン侯爵家は四世に渡って尚書を輩出してきた名実ともに力のある正真正銘の名家である。
ここに現れたのは、三女のサラサだった。
「ミス・クローデンは、どうしてこのようなところに?」
「ええ。この街に魔導馬がやってきたと耳にしたものですから、まさか皇室の方がお見えになられたのかと思い急いで参ったのですわ。ですが、ここに来てミス・シエラだと確信いたしました」
サラサはシルキィが出てきた宿を見上げる。
「このようなみすぼらしい安宿に、皇族の方がお泊りになられるはずありませんものね」
彼女が高らかに笑うと、取り巻きの従者達も同じように笑いをあげた。
シルキィの震える拳を見ると、蔑まれることに慣れているはずのセスでさえ屈辱的な気分になる。
「あなたも帝都に向かわれるのでしょう? 付き人は何人いらっしゃるのかしら?」
「後ろの、二人だけです」
口惜しそうにに答えたシルキィに、サラサは口角を吊り上げた。
「聞きました皆さん? 遠い帝都を目指そうというのに、たった二人ですって! しかも片方はメイド。もう片方は、卑しいアルゴノートではありませんか! 笑いが止まりませんわ!」
サラサとその従者達はわざとらしいまでに笑い声をあげ、中にはどさくさに紛れて嘲りの言葉を投げかける輩もいた。
仮眠を経てすっかり調子を取り戻したシルキィは、脈絡なくそんなことを言い出したと思うと、誰の意見を聞くこともなく一人先んじて部屋を出ていった。
セスとティアは顔を見合わせ、慌てて後を追いかける。
「せっかくの長旅なんですもの。色々なものを見て回りたいわ」
と、シルキィは主張する。意外にもこれに異を唱えたのはティアだった。
「お嬢様しかし。病み上がりですぐに外出なさるのはいささか心配でございます。今日のところは大事を取り、ご自重なさってはいかがでしょう」
「だめよ。庶民の暮らしを知るのも貴族の務めなんだから。ラ・シエラ以外の領地がどんな風なのか、この目で見る機会なんて滅多にないでしょ?」
確かに今のラ・シエラの状態では、諸領を周遊することは厳しいだろう。旅を利用して見識を広めたいというシルキィの意図は称賛に値する。
言葉を交わしながらも、シルキィは廊下をずんずんと進んでいく。
ティアはくどく反対しなかった。主の身を案じながらも、付き従うことを決めたようだ。
宿の外に出ると、シルキィはぴたりと足を止めた。彼女の目に入ったのは、軽武装をした大勢の男達。そして彼らを背に優雅に立つ少女の姿であった。
「あら、やっぱりミス・シエラでしたわ。ごきげんよう」
艶っぽい声で挨拶を口にしたのは、ボリュームのある巻き髪と、装飾過多なドレスに身を包んだいかにもな貴族令嬢であった。
「ミス・クローデン」
少女のにこやかな表情とは対照的に、シルキィの顔は苦々しいものに変わっている。
「そう露骨に嫌な顔をしないでくださらない? いたく傷付いてしまいますわ」
「……失礼致しました」
シルキィは両手でスカートを摘み、恭しく一礼する。
クローデン。その名はもちろんセスも知っている。国内外に大きな影響力を持つ高名な貴族である。帝国には政治的な意思決定を司る五大尚書と呼ばれる五つの役職が存在し、クローデン侯爵家は四世に渡って尚書を輩出してきた名実ともに力のある正真正銘の名家である。
ここに現れたのは、三女のサラサだった。
「ミス・クローデンは、どうしてこのようなところに?」
「ええ。この街に魔導馬がやってきたと耳にしたものですから、まさか皇室の方がお見えになられたのかと思い急いで参ったのですわ。ですが、ここに来てミス・シエラだと確信いたしました」
サラサはシルキィが出てきた宿を見上げる。
「このようなみすぼらしい安宿に、皇族の方がお泊りになられるはずありませんものね」
彼女が高らかに笑うと、取り巻きの従者達も同じように笑いをあげた。
シルキィの震える拳を見ると、蔑まれることに慣れているはずのセスでさえ屈辱的な気分になる。
「あなたも帝都に向かわれるのでしょう? 付き人は何人いらっしゃるのかしら?」
「後ろの、二人だけです」
口惜しそうにに答えたシルキィに、サラサは口角を吊り上げた。
「聞きました皆さん? 遠い帝都を目指そうというのに、たった二人ですって! しかも片方はメイド。もう片方は、卑しいアルゴノートではありませんか! 笑いが止まりませんわ!」
サラサとその従者達はわざとらしいまでに笑い声をあげ、中にはどさくさに紛れて嘲りの言葉を投げかける輩もいた。
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