アルゴノートのおんがえし

朝食ダンゴ

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悪役令嬢サラサ見参 3/3

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 それを聞いたサラサ達は呆気にとられたように黙り込む。ティアがあまりにも大真面目に言うものだから、どう返したものか迷ったに違いない。しばらくそのままであったが、唐突にどっと笑いを吐き出した。

「それは流石に話を盛りすぎだぜ! メイドの嬢ちゃん!」

「いくらなんでも、一人でコヴァルドをやるってのはありえねぇよ!」

「まぁまぁ、かわいらしいじゃねぇか。強がりの嘘なんて」

 従者達は思うがままに笑い、口々に嘲りを重ねる。
 サラサはというと、羽扇子で口元を隠して肩を振るわせていた。

「野蛮人の護衛に、ホラ吹きのメイド。ラ・シエラはお金だけでなく、人材も不足しているようですわね」

 シルキィは何も言わなかった。否、何を言っても無意味だと分かっているのだ。

「久々にこんな笑わせて頂きました。それでは、ごきげんようミス・シエラ。帝都でお会いできること、アイギスに祈っておりますわ」

 再び高笑いを響かせて、サラサは去っていった。
 兵士らが後に続く中、その筆頭であるディーンは、去り際にセスを一瞥し鼻で笑っていいた。

「言いたい放題だったな」

 セスは溜息交じりに呟いた。なんともいけ好かない連中だ。アルゴノートを蔑むだけでなく、同じ帝国の貴族までを貶めるとは。
 シルキィは顔を紅潮させ、わなわなと震えている。

「なんなのよ! もう!」

 耳元で鈴を鳴らされたような怒鳴り声である。

「あなたなんか連れているせいで、クローデンに馬鹿にされたじゃないの!」

「俺のせいじゃ……いや、そうだな」

 セスが一緒にいた、というのも大いににあるだろう。サラサがシルキィを嘲る格好の材料を与えてしまったのだから。

「今日はもう帰る!」

 地団駄を踏んで悔しがりながら、シルキィは大股で部屋へと戻ってしまった。
 行くと言ったり帰ると言ったり。かくも、人の心とは縁に左右されやすいものだ。

「申し訳ありません。私としたことが、感情に任せて失言を」

「無理もないさ」

 いつも表情に乏しいティアが怒りの感情を発露させたことは、少々驚きであった。シルキィに向ける想いの強さが窺える。

「長居は無用だな」

 シルキィの背中を見ながら、ぽつりと口にする。
 先程聞いたサラサの話が本当ならば、街の厳戒態勢も納得である。
 魔導馬が引く大馬車は、良くも悪くもとにかく目立つ。賊からすればこれ以上ない獲物だろう。早急に手を打たなければなるまい。

「ティア。明日の朝にはここを出られないか」

 セスの唐突な提案に、ティアが僅かに首を傾げた。

「エルンダには明後日まで滞在の予定ですが……いかがなされたのです? お嬢様には十分な休息を取って頂きたいのですが」

「さっきの話を聞いてただろう? 賊が出るってさ。お嬢の安全を考えるなら、できるだけ早く出発した方がいい」

 ティアは細い顎を押さえ、視線を彷徨わせて思案する。

「承知いたしました。お嬢様には、夕食の際にご説明いたしましょう」

 彼女はセスの提案を受け入れた。あとはシルキィの承諾があれば問題はない。
 ちゃんと説明すれば、シルキィとてわかってくれるだろう。
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