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浴場と剣闘の都市ダプア 1/3
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いくつかの町村を経由してエルリス領に入ると、深かった森は次第に木々の数を減らし、広大な平原が姿を現す。エルンダを出立しておよそ十日。一行は、エルリス領主都ダプアに到着した。
「あー! やっとついた!」
馬車を降りたシルキィがうんと背伸びをする。
時の頃は昼下がり。暖かいというには少々強すぎる日差しが降り注いでいる。
「出発は明後日の朝です。ご留意のほどよろしくお願い致します」
荷物を下ろすティアの言葉に、セスは短く返事をした。
荷下ろしを終えると、シルキィはティアの手を取って足早に宿に入っていく。
彼女達の後姿を見て、セスは和やかな一息を吐いた。
だしぬけに一陣の風が吹く。未舗装の地面から巻き上がった砂煙に包まれ、通行人達が声を上げた。砂塵を巻き上げ空を黄色く濁らせた風の背中を、セスの目がじっと追いかける。
「懐かしいな。この匂い」
エルリス領は比較的小さな土地だが、近年、剣闘の国民人気が急騰したことで活性化が進んでいる。レイヴンズストーリーの人気に伴って、剣闘が注目を浴びるようになったことは前述の通りである。以前は他の都市に比べ殺伐とした空気が漂っていたダプアだが、このところは華やかな観光地へと姿を変えていた。
チェックインを終えて一足先に宿の外に出たセスは、入口に面する大通りを眺める。
流れる雑踏の奥には、剣闘士を模った立派な銅像が建てられており、それを見つけてしまったセスは吸い寄せられるように近づき、まじまじと観察する。
ぼろ布の腰巻と頭部を覆う兜。剣闘士の代名詞とも言うべき幅広の短剣を掲げ、若々しい勇姿を表している。今にも動き出しそうな躍動感は優れた彫刻家のなせる業か。老若男女に囲まれた等身大の銅像は精緻な作りであり、若くして過酷な剣闘に身を投じた彼の全身の傷跡までも丁寧に表現されている。
「これが、レイヴンなのね」
隣からシルキィの感激した声。彼女の張りのある声は、喧騒の中でもよく響いた。
「あなたもよく見ておきなさい。かの英雄レイヴンの勇姿よ」
お守りの剣を背負い、目を輝かせて銅像を見つめるシルキィから、セスはなんとなく視線を外した。シルキィのすぐ後ろに控えるティアは、数十年も昔に建てられたであろうその銅像に視線を送っている。
「挿絵と違って屈強な身体をしておられますね」
「そうね。やっぱり、絵と本物は違うってことね」
周囲はレイヴンに関する話で持ちきりである。婦女子たちの輝いた表情、楽天的な街の活気。セスの記憶にある殺伐としたダプアは見る影を無くしていた。
「おや。もしや、シルキィ様では?」
一行は声の方に振り返る。声をかけてきたのは、背の高い長髪の美男子だ。
シルキィは小首を傾げて記憶を辿ってみる。自分の知り合いに、こんな人物はいただろうか。
「私です。以前お屋敷でお世話になっていた、アーリマンです」
「ああ、アーリマン!」
ぱっと明るくなって、シルキィは手を合わせた。
アーリマンと名乗った男は、爽やかないでたちの好青年だ。長い髪は背中まで伸びており、女性のように艶やかだった。
「あー! やっとついた!」
馬車を降りたシルキィがうんと背伸びをする。
時の頃は昼下がり。暖かいというには少々強すぎる日差しが降り注いでいる。
「出発は明後日の朝です。ご留意のほどよろしくお願い致します」
荷物を下ろすティアの言葉に、セスは短く返事をした。
荷下ろしを終えると、シルキィはティアの手を取って足早に宿に入っていく。
彼女達の後姿を見て、セスは和やかな一息を吐いた。
だしぬけに一陣の風が吹く。未舗装の地面から巻き上がった砂煙に包まれ、通行人達が声を上げた。砂塵を巻き上げ空を黄色く濁らせた風の背中を、セスの目がじっと追いかける。
「懐かしいな。この匂い」
エルリス領は比較的小さな土地だが、近年、剣闘の国民人気が急騰したことで活性化が進んでいる。レイヴンズストーリーの人気に伴って、剣闘が注目を浴びるようになったことは前述の通りである。以前は他の都市に比べ殺伐とした空気が漂っていたダプアだが、このところは華やかな観光地へと姿を変えていた。
チェックインを終えて一足先に宿の外に出たセスは、入口に面する大通りを眺める。
流れる雑踏の奥には、剣闘士を模った立派な銅像が建てられており、それを見つけてしまったセスは吸い寄せられるように近づき、まじまじと観察する。
ぼろ布の腰巻と頭部を覆う兜。剣闘士の代名詞とも言うべき幅広の短剣を掲げ、若々しい勇姿を表している。今にも動き出しそうな躍動感は優れた彫刻家のなせる業か。老若男女に囲まれた等身大の銅像は精緻な作りであり、若くして過酷な剣闘に身を投じた彼の全身の傷跡までも丁寧に表現されている。
「これが、レイヴンなのね」
隣からシルキィの感激した声。彼女の張りのある声は、喧騒の中でもよく響いた。
「あなたもよく見ておきなさい。かの英雄レイヴンの勇姿よ」
お守りの剣を背負い、目を輝かせて銅像を見つめるシルキィから、セスはなんとなく視線を外した。シルキィのすぐ後ろに控えるティアは、数十年も昔に建てられたであろうその銅像に視線を送っている。
「挿絵と違って屈強な身体をしておられますね」
「そうね。やっぱり、絵と本物は違うってことね」
周囲はレイヴンに関する話で持ちきりである。婦女子たちの輝いた表情、楽天的な街の活気。セスの記憶にある殺伐としたダプアは見る影を無くしていた。
「おや。もしや、シルキィ様では?」
一行は声の方に振り返る。声をかけてきたのは、背の高い長髪の美男子だ。
シルキィは小首を傾げて記憶を辿ってみる。自分の知り合いに、こんな人物はいただろうか。
「私です。以前お屋敷でお世話になっていた、アーリマンです」
「ああ、アーリマン!」
ぱっと明るくなって、シルキィは手を合わせた。
アーリマンと名乗った男は、爽やかないでたちの好青年だ。長い髪は背中まで伸びており、女性のように艶やかだった。
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