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アンチ・アウトブレイク
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四つ足の獣。毛むくじゃらの巨人。金属の大蛇。それら三体が、粉々になって弾け飛ぶ。
学生達からすれば、俺が何をしたのか理解できなかっただろう。短剣による斬撃に隠すように、ひそかに拳撃を加えたのだ。混乱した状況、視界の悪い雨天。それらの環境が重なっているのを利用し、堂々とスキルを利用することができる。
「うそ。倒しちゃった?」
「すっげ……! あれが『アサシン・ダガー』かよ!」
フェイクスキルも上手く広まっているようだ。俺が短剣を持っていることも相俟って、まさか殴っているとは思わないだろう。
俺を危険視した魔物の一体が頭上から迫る。先日の襲撃の折にも現れた黒騎士だ。大剣を振りかぶり、豪快に振り下ろしてくる。
回避はしない。俺は迫りくる一撃を短剣で迎え撃った。雨音に混じる鈍い金属音。大剣を難なく弾き飛ばし、間髪入れず黒騎士の首を刈り取った。
「このまま押し切るぞ! サポートを頼む!」
皆を鼓舞すべく、俺は努めて勇ましく声を張った。
それに呼応して、学生達から喊声があがる。士気が高さはそのまま戦闘力に繋がる。残り二体の危険指定種。こうなってはスキルを使う必要もない。それから十秒も経たず、この場の魔物を殲滅。学生達の間に勝利の安堵と興奮が訪れている。
まだ終わっていない。アウトブレイクによって発生した魔物は学院中に散ったはずだ。他にもここと同じように戦闘になっている場所がいくつもあるはず。
喜び合う学生達を背に次の地点へと向かう。魔王の眷属は強大な気配を放っているので、それを辿ればいい。
道中、単体で暴れている魔物を処理しつつ、気配が集まっている場所を目指す。戦闘で負傷した者達も多く見受けられたが、今は敵の殲滅が優先だ。
辿り着いたのは学生会館前。破壊された建物の瓦礫が散乱する中で、いくつかの上級生パーティが十体以上の魔物と交戦していた。
流石の精鋭揃い。この数の危険指定種を相手に互角に渡り合っている。だが、いかんせん敵は魔王の眷属だ。通常の倒し方ではすぐに復活してしまう。
「くそっ! キリがない! なんなんだこいつらは!」
「ただの魔物じゃないぞ! 瘴気が濃い!」
「口より剣を動かせ!」
まさに戦場だった。色とりどりの魔法と剣戟、そして怒号が飛び交う。彼らは巧みな連携を用いて魔物の猛攻を防ぎ、転じて有効な攻撃を加えているが、斬ろうが燃やそうが復活する魔物に手を焼いている。
「高威力の魔法で吹き飛ばすのはどうだっ?」
「そんなの詠唱してる暇ないよ! 人手が足りないんだもん!」
「戦闘教官はまだ来てくれないのか!」
このままではジリ貧だ。
離れた位置では他の学院生達が戦闘の行く末を見守っている。彼らにはこの戦いに加勢できるほどの力はない。無力感に苛まれていることだろう。俺も少し前までは、あちら側にいたはずだ。
だが今は違う。俺は短剣を握り締め、戦闘のど真ん中へと一直線に突入した。
奇襲は成功した。余裕がないのは敵も同じであり、乱戦に紛れた俺の一撃を避けることはできない。短剣の刺突に見せかけた拳撃が、すべての危険指定種を瞬く間に殲滅した。
「なんだ……何が起こった」
「わかんねぇけど……勝ったのか? 俺達」
上級生達は荒い息で状況の把握に努めている。
戦闘音がやみ、激しい雨音だけが鳴っている。
周囲の注目は、戦場に乱入し戦いを終わらせた俺に集まっている。
「神聖騎士? 聖女様が遣わされたのか」
上級生の何人かが近寄ってくる。
「ありがとうございました、騎士様。俺達だけじゃ、どうなってたかわからなかった」
「すごいです! やっぱり神聖騎士様って格が違うんですね!」
「そんなに強くないと騎士にはなれないんすか? めちゃくちゃ壁高いっすね!」
戦闘の興奮そのままに、少年少女達は思い思いの言葉を口にする。
「ああ、いや……」
同級生じゃないからか、彼らは俺が学院生であったことを知らないようだ。噂には聞いていても、顔までは分からないのだろう。手放しの称賛に背中がむず痒くなる。数日前までの俺は、彼らの足元にも及ばない劣等生だったのに。
いや、今は複雑な心境に浸っている場合じゃない。
「お前達! 無事か!」
そこに現れたのはフォルス教官をはじめとする戦闘教官の面々だ。
よかった。彼らがここに現れたということは、この事態に対応できているということだ。
ソルが引き起こしたアウトブレイクは、この時をもって収束。
一件落着である。
学生達からすれば、俺が何をしたのか理解できなかっただろう。短剣による斬撃に隠すように、ひそかに拳撃を加えたのだ。混乱した状況、視界の悪い雨天。それらの環境が重なっているのを利用し、堂々とスキルを利用することができる。
「うそ。倒しちゃった?」
「すっげ……! あれが『アサシン・ダガー』かよ!」
フェイクスキルも上手く広まっているようだ。俺が短剣を持っていることも相俟って、まさか殴っているとは思わないだろう。
俺を危険視した魔物の一体が頭上から迫る。先日の襲撃の折にも現れた黒騎士だ。大剣を振りかぶり、豪快に振り下ろしてくる。
回避はしない。俺は迫りくる一撃を短剣で迎え撃った。雨音に混じる鈍い金属音。大剣を難なく弾き飛ばし、間髪入れず黒騎士の首を刈り取った。
「このまま押し切るぞ! サポートを頼む!」
皆を鼓舞すべく、俺は努めて勇ましく声を張った。
それに呼応して、学生達から喊声があがる。士気が高さはそのまま戦闘力に繋がる。残り二体の危険指定種。こうなってはスキルを使う必要もない。それから十秒も経たず、この場の魔物を殲滅。学生達の間に勝利の安堵と興奮が訪れている。
まだ終わっていない。アウトブレイクによって発生した魔物は学院中に散ったはずだ。他にもここと同じように戦闘になっている場所がいくつもあるはず。
喜び合う学生達を背に次の地点へと向かう。魔王の眷属は強大な気配を放っているので、それを辿ればいい。
道中、単体で暴れている魔物を処理しつつ、気配が集まっている場所を目指す。戦闘で負傷した者達も多く見受けられたが、今は敵の殲滅が優先だ。
辿り着いたのは学生会館前。破壊された建物の瓦礫が散乱する中で、いくつかの上級生パーティが十体以上の魔物と交戦していた。
流石の精鋭揃い。この数の危険指定種を相手に互角に渡り合っている。だが、いかんせん敵は魔王の眷属だ。通常の倒し方ではすぐに復活してしまう。
「くそっ! キリがない! なんなんだこいつらは!」
「ただの魔物じゃないぞ! 瘴気が濃い!」
「口より剣を動かせ!」
まさに戦場だった。色とりどりの魔法と剣戟、そして怒号が飛び交う。彼らは巧みな連携を用いて魔物の猛攻を防ぎ、転じて有効な攻撃を加えているが、斬ろうが燃やそうが復活する魔物に手を焼いている。
「高威力の魔法で吹き飛ばすのはどうだっ?」
「そんなの詠唱してる暇ないよ! 人手が足りないんだもん!」
「戦闘教官はまだ来てくれないのか!」
このままではジリ貧だ。
離れた位置では他の学院生達が戦闘の行く末を見守っている。彼らにはこの戦いに加勢できるほどの力はない。無力感に苛まれていることだろう。俺も少し前までは、あちら側にいたはずだ。
だが今は違う。俺は短剣を握り締め、戦闘のど真ん中へと一直線に突入した。
奇襲は成功した。余裕がないのは敵も同じであり、乱戦に紛れた俺の一撃を避けることはできない。短剣の刺突に見せかけた拳撃が、すべての危険指定種を瞬く間に殲滅した。
「なんだ……何が起こった」
「わかんねぇけど……勝ったのか? 俺達」
上級生達は荒い息で状況の把握に努めている。
戦闘音がやみ、激しい雨音だけが鳴っている。
周囲の注目は、戦場に乱入し戦いを終わらせた俺に集まっている。
「神聖騎士? 聖女様が遣わされたのか」
上級生の何人かが近寄ってくる。
「ありがとうございました、騎士様。俺達だけじゃ、どうなってたかわからなかった」
「すごいです! やっぱり神聖騎士様って格が違うんですね!」
「そんなに強くないと騎士にはなれないんすか? めちゃくちゃ壁高いっすね!」
戦闘の興奮そのままに、少年少女達は思い思いの言葉を口にする。
「ああ、いや……」
同級生じゃないからか、彼らは俺が学院生であったことを知らないようだ。噂には聞いていても、顔までは分からないのだろう。手放しの称賛に背中がむず痒くなる。数日前までの俺は、彼らの足元にも及ばない劣等生だったのに。
いや、今は複雑な心境に浸っている場合じゃない。
「お前達! 無事か!」
そこに現れたのはフォルス教官をはじめとする戦闘教官の面々だ。
よかった。彼らがここに現れたということは、この事態に対応できているということだ。
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