もふもふ毛玉日記

RIKU

文字の大きさ
1 / 4

そこに毛玉がありました。

しおりを挟む
俺はいつものように出社し、いつものように帰宅している。はずだった。しかし、今、なぜ、ここ動物病院にいるのか…それは…少し、時間を遡る。

二時間前、18時。
俺は、アパートの前で固まっている。今日は朝から変わったこともなかったはずだが。
今、目の前に小さな毛玉が転がっている。色は薄汚れているがグレーっぽい。俺は、恐る恐るその毛玉を手に持ってみる。すると、小さく今にも途切れそうな声で「みぃー」と聞こえた。どうやら、その毛玉は猫のようで、かなり小さい子猫だと思う。
しかし、なぜここに?近くに親猫はいないのか?はぐれてしまったのか、辺りを見渡して見るが他に猫がいる気配はない。どうしたらいいものか…。
俺は、動物を飼ったことはないので全く知識はない。そのまま、ほっとくと親猫が迎えに来るとかないかな?
俺はその場でおろおろしてしまった。傍目から見たらその動きは怪しさ100%間違いないくらいに。すると、手のひらの子猫がもう一回鳴き、俺の手をペロッとなめた。
その時、俺の胸が熱くなり、ドクンと鼓動が高まったのを感じた。すると、俺は、スマホを取り出しは猫に関して検索した。そして、検索してたどり着いた答えが…これだ。

とりあえず、「動物病院へ。」だ。
確かに、かなり小さいし、素人目でも弱っているのが分かるくらいだったからだ。

「はーい。次の方どうぞ。」
診察室から呼ばれた。俺の手の平で丸くなっている子猫と一緒に中に入る。
「あら~、本当に小さいのね。んー、歯は生え始めってくらいかしら。産まれて1ヶ月は過ぎてるかな?」
先生は淡々と子猫を診察していく。
「この子、どうしたの?拾ったの?」
「あっ、いや、アパートの前に落ちていて…。」
「落ちていてって、ふふ。そう。落ちてたのあなた。」
俺がしどろもどろに答えると、先生は笑いながら、子猫に話しかけた。だってさ、猫なんて始めてで、動物病院もはじめてなのに緊張するだろ。普通…。俺は心の中で愚痴ってしまった。
先生は、さっきまで微笑んでいたのに急に真顔になり、おれに問いかけてきた。
「で、この子どうするの?」
先生の真剣な目に少し怯みながら、俺は答えた。
「うちは、アパートでペット禁止なので…そのあとのことは…」
「そう。でも、保護して、ここまでつれてきてくれてありがとう。」
語尾を濁しながら答えた俺に先生はお礼を言ってくれた。
ペットブームもあり、保護活動が増えたが、まだまだ追い付いてないのが現状なのだとか。無理な多頭飼いをして、飼育崩壊。ちゃんとした飼い方を知らずに躾ができなかったり、妊娠したから、捨てるなど多いそうだ。
「では、この子はしばらくこの病院で預かります。しかし、あなたにも貰い手探しを手伝っていただきます。それで今回の診察代はなしとさせていただいますがどうでしょう?」
手伝いって、まぁ、連れてきたのは俺だしそれで費用が要らなければいいか。
「わかりました。」
あとは、連絡先を教えて、具体的に何をすればいいかを確認し、俺はそのまま、子猫を病院へ渡して再度、アパートへ帰った。

アパートに帰ると、大家さんがいて声をかけてきた。
「ああ、大村さん。お帰りなさい。」
このアパートは、横に大家さんが住んでいる。しかも、かなり人好きで、よく話しかけてくるし、何かあれば良くしてくれるいい人だ。
「どうしたんですか?」
「いやね、夕方位に猫の鳴き声がしたってうちのが心配してて、まだいるかなって思ってみにきたんだよ。」
「ああ、猫ですか。さっき見つけて、病院へ連れていきましたけど、すみません。勝手にしてしまい。」
「いやいや、ありがとう。なんか弱ってるみたいって言ってたから心配してけど、病院なら安心だね。」
大家さんと話をして俺は、部屋へ入った。
でも、自分の手を見るとあの毛玉、ではなく子猫の事が頭によぎる。あのフワッとした感触、そして、なによりも、手をなめられた時のあの衝動。あれは、なんだったのだろうか。
俺は、手をぎゅっと握りこんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

タダで済むと思うな

美凪ましろ
ライト文芸
 フルタイムで働きながらワンオペで子育てをし、夫のケアもしていた井口虹子は、結婚十六年目のある夜、限界を迎える。  ――よし、決めた。  我慢するのは止めだ止め。  家族のために粉骨砕身頑張っていた自分。これからは自分のために生きる!  そう決めた虹子が企てた夫への復讐とは。 ■十八歳以下の男女の性行為があります。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...