もふもふ毛玉日記

RIKU

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勢いが必要です。

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動物病院から戻り、いつものように夕飯を食べ、風呂に入り、キンキンに冷やしたビールを飲む。しかし、俺の頭からあの子猫の事が離れない。手のひらに残るあの感触、重さも残っている。

俺、大村 陽(はる)は今まで動物とは無縁の生活をしてきた。特別動物が嫌いや苦手もなく、親が嫌いとかもなかった。本当になんとなく、飼うタイミングがないとか、そんな感じだ。
なので、今日子猫に対して病院に連れていくなど、自分から動いたのは初体験だった。

そうだ。だから、こんなにも気になるのか。

俺は、始めての事だったからか。と自分を納得させた。


 あれから、一週間がすぎた。大家さんは、俺に会うと必ず、あの子猫の事を聞いてくる。
「あの子どう?貰い手見つかった?」
「あ…。まだですね。知り合いとか、チラシとかやってはみてるんですけど。」
「そうか~。いいところ見つかるといいけど。なんなら、そのまま大村さんが飼えばいいのに。」
「いや。ペット禁止でしょ。それに、あんな小さいしムリですよ。」
 大家さんは、サラッと無茶苦茶な事を言ってくる。その都度、俺はあわてて返事をする。
 あんたが、このアパートの大家だろっと、何度心の中でツッコんだか…。
 でも、確かに気になる。病院からも、まだ連絡はない。俺のほうの報告もあるし、今日仕事終わりに行ってみるか。俺は、無意識に、手のひらを見てぎゅっと握りしめていた。


「こんにちは。大村ですが。」
受付の人に声をかける。
「ああ。あの猫ちゃんの人。そちらで、少しお待ち下さい。」
あの?ってなんだ。と思いながら、言われたように、横のソファーへ座り待つことにした。
 しばらくすると、受付の奥の方から声をかけられた。
「大村さんどうぞ。横から入って来て下さい。」
 受付の横を通って、声のする方へ進んだ。
横の壁には、複数のゲージ?檻かな?が並んでいる。その中には、点滴をしている猫、包帯を巻いている猫など、それぞれ入っている。
「みゅー!みゅ!」
奥の方から、猫の大きな声が聞こえてくる。そこにいたのは、先生に抱かれたあの子猫だった。
「ほら。元気になったでしょう。ご飯もたくさん食べれるし、よく動くようになってきたのよ。」
先生が笑顔で子猫を見せてくる。確かに、あの時より、一回り位大きくなったような。毛もきれいにしてもらったのか、汚れもなくふわふわしている。しかも、元気よく大きな声を出している。その様子を見て、俺はホッとした。
受付の人に言われた、あのって元気過ぎることだったのかもしれないな。
「あ、はい。良かったです。あの…、貰い手なんですが…。」
 まだ、貰い手が見つかっていないため、俺は気まずく、何となく濁したような聞き方になってしまった。
「その感じだと、見つかってないようね。」
俺の様子で先生は察してくれた。
「ん~、こっちもまだなのよね。いつもなら、結構、早く見つかるわだけど。まぁ、焦らずいい人を見つけましょう。」
先生は明るく笑いながら、はい!と抱いていた子猫を俺の胸に渡してきた。急な事に慌てながら、子猫を受け取り落とさないように、そっと抱いた。
すると、あの時は目やにだったのか、目元のぐちゃぐちゃもなくなりしっかり目が開いている。その大きな目で、子猫は俺の顔を見つめ、ぐるぐると喉を鳴らし始め、前足で俺の腕を揉み始めた。
「えっ!何?何してんの?」
「あらあら。全然怖がらないのね。むしろ、甘えてるし。」
「え。甘え?」
「そうよ。ほら、目もウトウトしてるし、大村さんに抱かれてリラックスしてるのよ。」
これは、そうなのか。確かに、眠そうだけど。
「自分を助けてくれた人ってわかってるのかもね。」
俺は、そっと子猫を撫でてみる。まだ、手のひらをにすっぽりと収まってしまうくらい小さい。しかし、そのもふもふの感触はなんとも言いがたい…。
 そのもふもふを、無意識に堪能してしまっている。たまに、子猫が俺の手に撫でてほしいのかすり寄って来る。
「うっ!」
子猫の行動が、俺の中の何かを起こしたような気がした。
「あっ!この子俺が引き取ることできますか?」
「は?大村さんのアパート、ペット禁止でしょう?」
俺の急な言葉に、先生も驚いている。確かに、ペット禁止だもんな。しかし、どうにかなるのではと、何となくの確信じみたものがあった。
「アパートですけど、どうにかできるかもしれません。なので、もうちょっとこの子をお願いします。」
もう、こうなったら勢いで押していくしかない。人が変わったように、ぐいぐい来る俺に先生は、驚きを越えて引いているような気がした。
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