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第二話 添い寝のつもりだったのですが
ハロルドは丁寧に主人をベッドに案内した。
ルシアンはたまにこうして無性に甘えてくるときがある。イヤなことがあったときとか、モヤモヤしてるときとか。
そうしたときは、ハロルドは気づかないふりして存分に甘えさせてあげていた。
王族というのは見えないプレッシャーが多い。
一介の執事にできることはほとんどないけれど、少しでもルシアンが楽になればいい。
こうして自分を頼ってくれるのは嬉しかった。
(ルシアン殿下はまだお若いのに。結婚とか、言い過ぎたかな)
きゅっと唇を噛んで、ハロルドは内省する。
とはいえ、この斡旋を辞めることはできないのだけれど。
ハロルドはもやもやする気持ちに蓋をした。
ルシアン王子の部屋は広い。
毛の長い絨毯と細部まで装飾が施された家具。
ベッドは奥まったところにあり、キングサイズよりも大きい。
天蓋からは深紅のカーテンが垂れ下がる。生地はベルベットだ。
ハロルドはルシアンをベッドに寝かせる。
ふわふわの白い掛け布団に手をかけた瞬間、ルシアンがその手を握った。
「どうしました、殿下」
「ハルも一緒に寝よ」
「……殿下」
「だめ? お願い。もーちょっとハルと一緒にいたい」
ルシアンはきらきらした青い瞳で首を傾げる。
きゅるんとした顔で頼まれると、ハロルドは断れない。
「……わかりました」
ハロルドはゆっくりと、ベッドに上がった。
添い寝なんて、何年ぶりだろう。
小さい頃……ルシアン王子が十四歳くらいまでは、よく一緒に寝たのだけれど。
ルシアン王子が思春期になったあたりで「ひとりで寝る!!」と真っ赤な顔で断られるようになったのだ。
そのときはハロルドもさすがにショックだった。可愛い王子が反抗期になってしまったと。
成長したなあという感慨深さと、一抹の寂しさが胸をくすぐった。
(……また一緒に寝るなんて、思いもしなかった)
ハロルドは隣で横になるルシアン王子を見つめる。
ルシアン王子はもう立派なひとりの男性になっていた。
小さかった背はぐんぐんと伸びて、ハロルドを抜かした。
長い睫毛にお人形のように整ったお顔。アクアマリンのような瞳は変わらないけれど、丸みを帯びていた頬はシュッとして、子どもらしさは抜けていた。
「ねえ、ハル」
「どうしました」
「俺さ、もう結婚できる年なんだよ」
「はい。存じ上げてますよ」
何が言いたいのだろう、ハロルドは首を傾げる。
その結婚相手を探すのに躍起になっているのだ。知らないはずがないのに。
ルシアン王子は口角を上げて、美しく微笑んだ。
ふいにハロルドの心臓がどきりとする。
十年あまり一緒にいるのに、初めて見た表情だった。
敢えて言語化するなら、ーーー妖艶、という表現が合っている。
「わかってないよ、ハルは」
ぎしり、と、ベッドが軋んで。
え、と言葉を発するより先に、
ルシアンはハロルドを組み敷いていた。
「…………ルシアン殿下?」
「ハルってさ、鈍感だよね」
「え、あ…………あの」
「男がさ、わざわざベッドに連れ込むなんて。こういう理由しかないじゃん」
ルシアンはしなやかな指でハロルドに手を伸ばした。
しゅるり、と黒いタイがほどかれる。白い首筋が覗いた。
燕尾服はそのまま、シャツのボタンが、ぷち、ぷち、と外される。
次第に露わになる肌に、ハロルドは困惑していた。
「あの、殿下。お戯れは………」
「戯れ? いつまで俺は子ども扱いされなきゃいけないのかな」
「え、あ………あの、」
「俺はもう大人の男なんだけど」
見上げたルシアンの瞳は、初めて見る光をしていた。
いつもの優雅な王子の姿からは想像もできないくらい、
獣のような、獰猛さが潜んでいた。
「ずっとこうしたかったんだ」
ルシアンはにっこりと笑う。
指先がシャツの端をつかむ。ハロルドは息を呑んだ。
そして、勢いよく、ルシアンはシャツをびりっと破いた。
「んっ、あっ、ああっ、やめ」
「可愛い、ハル、かわいい」
「やめ、だめです、殿下っ」
上から押さえつけられて、ハロルドは喘いでいた。
スラックスの下に手を伸ばされ、ペニスの先端をぐりぐりと刺激される。
高貴なお方の右手が先走りで濡れる。ぐちゃ、ぐちゃ、と、粘性の水音が響く度にハロルドは恥ずかしくて泣きそうになった。
中途半端に脱がされた燕尾服のせいで身動きが取りづらい。びくびくと身体を揺らすだけで、弱々しい抵抗しかできなかった。
顔を真っ赤にして、涙目で口の端から唾液を垂らすハロルドの姿を見て、ルシアン王子は、うっとりとした表情をした。
「やらしいね、ハル。気持ちいい? ハルもこういうこと、好きなんだ」
右手の力が込められて、ハロルドは「んっ」と甘い声を上げた。
こんな快感は初めてだった。いつも仕事ばかりで、性的なことには疎かった。
「ハルは自覚ないかも知れないけど。その燕尾服、すっごくえっちなんだよ。腰のラインが出てるし。みんなやらしい目で見てる」
「そん、な、わけっ」
「細い腰を掴んでガンガン突きたい。シャツを破いてその下も全部見たい。ぐちゃぐちゃにして、とろとろにして、俺で汚したい」
ーーーずっと考えてたんだよ
と、耳元で囁かれて、ハロルドは唇を噛んだ。
そんなの気づかなかった。
ずっと一緒にいた、あの小さくて可愛かったルシアン王子が、そんな欲望を抱いていたなんて。
否定したくとも、いま直面している現実はまさに、その欲望を如実に表していた。
白いシャツからはピンクの乳首が覗いている。黒い燕尾服は皺だらけになっている。
まとめていたロングの黒髪も、シーツの上で乱れている。
リオステア王国随一の執事の姿は跡形もなかった。
「……いい眺め」
ルシアン王子はふふっと笑って、右手の動きを強めた。
ルシアンはたまにこうして無性に甘えてくるときがある。イヤなことがあったときとか、モヤモヤしてるときとか。
そうしたときは、ハロルドは気づかないふりして存分に甘えさせてあげていた。
王族というのは見えないプレッシャーが多い。
一介の執事にできることはほとんどないけれど、少しでもルシアンが楽になればいい。
こうして自分を頼ってくれるのは嬉しかった。
(ルシアン殿下はまだお若いのに。結婚とか、言い過ぎたかな)
きゅっと唇を噛んで、ハロルドは内省する。
とはいえ、この斡旋を辞めることはできないのだけれど。
ハロルドはもやもやする気持ちに蓋をした。
ルシアン王子の部屋は広い。
毛の長い絨毯と細部まで装飾が施された家具。
ベッドは奥まったところにあり、キングサイズよりも大きい。
天蓋からは深紅のカーテンが垂れ下がる。生地はベルベットだ。
ハロルドはルシアンをベッドに寝かせる。
ふわふわの白い掛け布団に手をかけた瞬間、ルシアンがその手を握った。
「どうしました、殿下」
「ハルも一緒に寝よ」
「……殿下」
「だめ? お願い。もーちょっとハルと一緒にいたい」
ルシアンはきらきらした青い瞳で首を傾げる。
きゅるんとした顔で頼まれると、ハロルドは断れない。
「……わかりました」
ハロルドはゆっくりと、ベッドに上がった。
添い寝なんて、何年ぶりだろう。
小さい頃……ルシアン王子が十四歳くらいまでは、よく一緒に寝たのだけれど。
ルシアン王子が思春期になったあたりで「ひとりで寝る!!」と真っ赤な顔で断られるようになったのだ。
そのときはハロルドもさすがにショックだった。可愛い王子が反抗期になってしまったと。
成長したなあという感慨深さと、一抹の寂しさが胸をくすぐった。
(……また一緒に寝るなんて、思いもしなかった)
ハロルドは隣で横になるルシアン王子を見つめる。
ルシアン王子はもう立派なひとりの男性になっていた。
小さかった背はぐんぐんと伸びて、ハロルドを抜かした。
長い睫毛にお人形のように整ったお顔。アクアマリンのような瞳は変わらないけれど、丸みを帯びていた頬はシュッとして、子どもらしさは抜けていた。
「ねえ、ハル」
「どうしました」
「俺さ、もう結婚できる年なんだよ」
「はい。存じ上げてますよ」
何が言いたいのだろう、ハロルドは首を傾げる。
その結婚相手を探すのに躍起になっているのだ。知らないはずがないのに。
ルシアン王子は口角を上げて、美しく微笑んだ。
ふいにハロルドの心臓がどきりとする。
十年あまり一緒にいるのに、初めて見た表情だった。
敢えて言語化するなら、ーーー妖艶、という表現が合っている。
「わかってないよ、ハルは」
ぎしり、と、ベッドが軋んで。
え、と言葉を発するより先に、
ルシアンはハロルドを組み敷いていた。
「…………ルシアン殿下?」
「ハルってさ、鈍感だよね」
「え、あ…………あの」
「男がさ、わざわざベッドに連れ込むなんて。こういう理由しかないじゃん」
ルシアンはしなやかな指でハロルドに手を伸ばした。
しゅるり、と黒いタイがほどかれる。白い首筋が覗いた。
燕尾服はそのまま、シャツのボタンが、ぷち、ぷち、と外される。
次第に露わになる肌に、ハロルドは困惑していた。
「あの、殿下。お戯れは………」
「戯れ? いつまで俺は子ども扱いされなきゃいけないのかな」
「え、あ………あの、」
「俺はもう大人の男なんだけど」
見上げたルシアンの瞳は、初めて見る光をしていた。
いつもの優雅な王子の姿からは想像もできないくらい、
獣のような、獰猛さが潜んでいた。
「ずっとこうしたかったんだ」
ルシアンはにっこりと笑う。
指先がシャツの端をつかむ。ハロルドは息を呑んだ。
そして、勢いよく、ルシアンはシャツをびりっと破いた。
「んっ、あっ、ああっ、やめ」
「可愛い、ハル、かわいい」
「やめ、だめです、殿下っ」
上から押さえつけられて、ハロルドは喘いでいた。
スラックスの下に手を伸ばされ、ペニスの先端をぐりぐりと刺激される。
高貴なお方の右手が先走りで濡れる。ぐちゃ、ぐちゃ、と、粘性の水音が響く度にハロルドは恥ずかしくて泣きそうになった。
中途半端に脱がされた燕尾服のせいで身動きが取りづらい。びくびくと身体を揺らすだけで、弱々しい抵抗しかできなかった。
顔を真っ赤にして、涙目で口の端から唾液を垂らすハロルドの姿を見て、ルシアン王子は、うっとりとした表情をした。
「やらしいね、ハル。気持ちいい? ハルもこういうこと、好きなんだ」
右手の力が込められて、ハロルドは「んっ」と甘い声を上げた。
こんな快感は初めてだった。いつも仕事ばかりで、性的なことには疎かった。
「ハルは自覚ないかも知れないけど。その燕尾服、すっごくえっちなんだよ。腰のラインが出てるし。みんなやらしい目で見てる」
「そん、な、わけっ」
「細い腰を掴んでガンガン突きたい。シャツを破いてその下も全部見たい。ぐちゃぐちゃにして、とろとろにして、俺で汚したい」
ーーーずっと考えてたんだよ
と、耳元で囁かれて、ハロルドは唇を噛んだ。
そんなの気づかなかった。
ずっと一緒にいた、あの小さくて可愛かったルシアン王子が、そんな欲望を抱いていたなんて。
否定したくとも、いま直面している現実はまさに、その欲望を如実に表していた。
白いシャツからはピンクの乳首が覗いている。黒い燕尾服は皺だらけになっている。
まとめていたロングの黒髪も、シーツの上で乱れている。
リオステア王国随一の執事の姿は跡形もなかった。
「……いい眺め」
ルシアン王子はふふっと笑って、右手の動きを強めた。
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