神憑き令嬢の死に方

ろろる

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第1章死神少女の嫁入り

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第1章死神少女の嫁入り


「大変だイヴ‼︎今すぐ来てくれ‼︎」
自宅の部屋のドアがバーンと開いて、ぎょっとした。
「…、グレイ。淑女の部屋にノックもなしに入ってくるのは、どうかと思うわ。」
「ご、ごめんっ、着替え中だったんだね!
とりあえず緊急事態なんだ。扉の前にいるから、着替え終わったら教えてね。」
勢いよくドアが閉まった。
まったく、どこか抜けてるというかなんというか、まあ、そんなあなたも愛おしい。
にしても、緊急事態って、何なんだろう。
着替えを早く済ませ、扉を開けた。
「ごめんなさいグレイ。お待たせ致しました。」
「ううん。俺も着替え中に入ってごめん。」
「で、緊急事態って何かあったの?」
「いいかイヴ。落ち着いて聞いて。」
いつもふわっとした笑みを見せる婚約者の真剣な顔にビクっとした。
「…、隣国のベルツェ帝国が君を要求して来た。」
「え?」
イヴ・ザラキエル・フィーネ、15歳。
ここセレーヌ王国の貴族、フィーネ伯爵家の令嬢であり、産まれると同時に死神と女神の加護を受けて産まれてきた。
女神の加護を受けていることから時期国王である第一王子、グレイシア・デ・ルミナ・セレーヌの婚約者でもある。
その愛する婚約者から衝撃の一言が告げられた。
隣国のベルツェ帝国は、大陸で二番目の大きさを持つ大国だ。大陸だけではなく、ベルツェの自慢の兵力にはどこの国も負けてしまう。そのベルツェが、私を要求してきた。
理由は一つ、私が神の加護を受ける、神憑きだから。その力を利用したいのだろう。
「断ったら、どうなるの。」
震える声で、グレイシアを見つめた。
「言うまでもない、戦争になる。」
つまり、私は…、ベルツェに引き渡される。
「心配いらない。君はここでセレーヌの勝利を願っていてくれ。」
「待ってグレイ‼︎私一人のために戦を避けないつもりなの⁉︎」
「君は時期女王だ!戦になろうと渡さない。」
「やめてちょうだい、王子のあなたならわかるでしょう⁉︎何人が犠牲になると思っているのですかっ。戦に負けて私がベルツェに行くのと、誰にも血を一滴も流させず私を引き渡す、どちらが正しい判断なのかは幼子でもわかります‼︎」
「そんなことを言うのはやめてくれ、イヴ。
戦になるのは確定している。国王陛下がそう決定された。それに、やってみないと分からないじゃないか。
もしダメでも、君だけは逃げてくれよ?」
泣き笑いみたいに微笑むグレイシアの顔に、キスをした。
「勝たなかったら承知しませんよ。」
「もちろんですとも、マイレディ。」
涙目できっと睨むと、グレイシアはいつものふわっとした笑みを見せてくれた。
セレーヌは小さいが、弱くはない。
ベルツェのように数は多くないけれど、1人ひとりが強いから。
勝てる可能性がないわけではない。だから、グレイシアの言葉を信じて待とう。

セレーヌが要求を断ると、ベルツェはすぐに戦争を仕掛けてきた。
戦の勝負はハッキリとつかず、優勢でも劣勢でもない。
そんな状況が2週間続いていた。
にしても、グレイシアが昨日口にしていたことが気になる。
"ベルツェの兵が異常に少ない。"
たかがセレーヌだと思って舐めてくれているなら良いけれど、嫌な予感がする。
今まで他の国と戦争を何回もしてきたベルツェは戦などに時間をかけたりしたりしない。
なのに、何故2週間もかかっているのか。
私の考えすぎかしら……。
「ここが伯爵令嬢の邸宅だな」
「!!」
聞きなれない言葉が発せられた次の瞬間、
ガラスが割れた。
「ふむ、俺が1番のようだ。」
「っ、誰!?」
「イヴ・ザラキエル・フィーネだな。」
冷たい青の瞳が私を見下ろしていた。
「私の質問に答えなさい」
震える手をぎゅっと押えて、男を睨んだ。
「怖気つかないとは、貴族の鏡だな。
私はベルツェ帝国皇太子、サリス・リリーナ・デ・ベルツェ。質問に答えたのだからお前も答えて貰おうか」
「これが答えよ」
男が名乗っている間に準備を整えた。
カッと、魔方陣が現れる。
死神の加護を持つ人間しか使えないとされる、魔法、「毒花の香り」。
「抵抗するとこいつらの首が飛ぶぞ」
「!!」
気がつくと、周りのメイドや使用人の首にベルツェの兵は剣を当てていた。
「いつのまに……」
なるほど、兵が少なかった理由は大人数で私の家を探してたってわけか。……、やられた。
「…、要求を聞きましょうか」
魔方陣の力を解除した。
「お嬢様っ!!なりませんっ、もうすぐグレイシア殿下と結婚なされるというのに…!!」
「喋らないで。あの男の気次第で私達の首が飛ぶかもしれない。でも当主不在の今、家の者を守るのは私の仕事よ。心配ありがとうね」
と、幼い頃からの私の傍付きメイド、先程叫んだレイラに微笑んだ。
「物分りが随分いいな。そして賢い判断だ。要求は変わらず、お前がベルツェの物になるということ。あともうひとつ、俺の妻となること。」
「つ、妻?」
「そうだ。そうすればお前はベルツェでなく、時期皇帝の、俺の物だ。」
あー、なるほど、そういうことか。一目惚れなんて期待した私がバカでした。
神の力を宿す私を私物化したいってわけ。
「私と約束をしてくれるなら、抵抗しないで要求を飲んであげるわ。」
「ほぉ、言ってみろ」
「私がベルツェに行く代わりにセレーヌの人間には手出ししないで。」
「元からその予定だが」
「もうひとつは」
「!」
「私を最低限人として見て、扱うこと。
物って言われるのは気分が悪くてよ。」
「いいだろう。」
男は窓から飛び降りると、私の目の前に立った。そして私の手を取ると、手の甲にキスを落とした。
「私の妻となってくれますか?」
「100パーセント脅しだけど、いいでしょう。あなたの妻となります。」
ごめんなさい、グレイシア。あなた以外の人に夫婦の誓いを口にするなんて……。
私が行ったことを聞いたら、悲しむかな。
「大一軍、引上げろ。神の加護を受けし少女を確保した。」
確保って……。あっさり受け入れてしまったけど、隣国の者の妻になるということは、この家とも兄弟とも、家族とも、愛する人ともお別れなのか。
でも、皆無事ならそれでいいか。
ふ、と苦笑いした。
「ベルツェに帰る。着いてこい。」
と、手を引かれる。
そして馬に乗せられ、ベルツェへと向かった。
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