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第10章 拒絶
しおりを挟む「何を言っているのシルキィ……。戻れるわけがないでしょう。」
「このまま私の手を取ればいいのです。」
「……」
「グレイシア様はイヴがベルツェに行ってからろくに眠れていません。いつも、イヴが今どんな目にあっているかわからないと、不安で眠れていないのです。」
「それであなたはこんな所まで来たの?」
「ええ。」
「……あなたは本当にグレイシアに甘いわね。
時期国王が国が決めた婚約者を探しに敵地にくるなんて……。騎士なら、主を守る騎士ならば、命をかけてでも、止めるべきよ」
「先程から一般論ばかり……!あなたの気持ちはどうなのです!」
「私は、もうあの人の妻よ。」
「イヴ、あなた……!」
「私の全てはあの人に捧げた。だから、グレイシアに何もあげられる物はない。」
「何故グレイシア様との仲を引き裂いた本人の妻なとに……!!ベルツェの時期皇后という立場欲しさにですか……!」
「違う。私の1番欲しい言葉を1番に言ってくれたあの人のそばに居るって、決めたの。死んでも戻らないわ。私は、サリス・リリーナ・デ・ベルツェの妻です。」
「よく言われました、イヴ様。」
「キインッ!!」
「!エルバード!!」
いつの間にか現れたエルバードは、シルキィに一撃を放っていた。
シルキィも一瞬だったにも関わらず、エルバードの攻撃を見事に受け止めていた。
「何ですか、あなた。」
シルキィが鋭くエルバードを睨んだ。
「それはこちらのセリフですね。」
「あら失礼。」
シルキィが二三歩下がり、礼をした。
「イヴの友人で、イヴの婚約者の騎士を務めています、シルキィ・アノベリアと申します。」
「イヴ様の婚約者だと?イヴ様の婚約者はこの国の皇太子であらせられる。ふざけたことを申すな」
「ですからお迎えに参ったのです。」
「迎えに来たにしてはずいぶん遅かったな。すぐにでも迎えに来ていれば、イヴ様が皇太子殿下に心を奪われることはなかったろうに。」
「黙りなさい。まだ、イヴの心にはグレイア様への気持ちがあります。」
「負け惜しみにしか聞こえんな。戦に負けたそちらが悪いだろう。」
「ええ、確かにイヴの家を警護しなかったこちらの浅はかさがこの結果を生みました。ですが、すでに婚約者がいる身の女性を攫い、妻にするなど恥ずかしくないのですか」
「何とも思わんな。我が主君が王となるためなら何でもしよう。」
「……まったく話が通じませんね。」
シルキィが剣を抜いた。
「ほお、剣を抜くか。私に勝てるとでも?」
「……なめるなっ!」
「やめなさいシルキィ!!あなたの適う相手ではないわ!!」
大声を出すと、シルキィの手が止まった。
「今日は見逃します。……ですが次来たら、私も神憑きの力を使ってでも抵抗します。グレイシア本人が私の前に現れても、です。」
「……今日は、帰りましょう。」
シルキィは私に背を向け、走り去った。
「……申し訳ありませんが妃殿下、このことは皇太子殿下に報告させていただきます。」
「ええ。好きにしなさい。」
「ドンっ!!」
「っ!」
おもいっきりベッドに体を押さえつけられた。
「……セレーヌの元友人が来ていたそうだな。」
「街に出たときに、手を引かれたのがその子だったのよ。」
「ほぉ?そいつはお前に戻れと言ったと聞いたが」
「確かに言われたわ。だけど、次来たら神憑きの力を使ってでも抵抗するといいました。」
「信じられんな」
「エルバートは見ていたはずよ!!何故疑うのです!」
「エルバートは最初からお前についていなかった。最初に帰ると約束をし、エルバートが来た時に演技を始めたかもしれん。」
「……信用してくださらないのね」
「お前は敵地の令嬢だからな」
「……」
「いっそ、帰れないように傷物にしてやろうか」
「え」
強引にキスされる。そのキスには、何にも感情がこもっていなかった。
あの時、されたキスは、何かを感じたのに。
「……やめて!!」
ドンっと、サリスを突き飛ばした。
「あなたに振り回されるのはもうごめんです!!
嫉妬しているとか、大切だとか言っておいて、結局は信用していない!!して、くれないっ…。
あなたは私のことをどう思っているのかハッキリして下さい!!愛しているのか、愛していないのか、そばにして欲しいのか、いて欲しくないのかっ、ただの所有物なのか、妻なのかを!!」
「っ……」
「それが決められないなら、今すぐ私を手放して。」
急いで部屋を飛び出した。
時は流れ、今日は皇太子妃披露式になってしまった。あれ以来、サリスとは話せていない。
顔も合わせないし、食事の時間もわざと時間をずらされている。
"私をどう思っているのかハッキリしろ"と言ったことに関して、サリスは何も言わなかった。
それが質問に関する全ての答えなのだろうか。
……といっても、私も人のことは言えないのである。なんせ、私も彼への気持ちがハッキリしていないからだ。でも、彼からのキスや微笑み、気遣ってくれることが嬉しいと感じる時点で、私はサリスのことが、好きなんだろう。……でも、あの日からそれは分からなくなってしまったのだ。
……披露式まであと30分か。
「奥様、お祝いをしたいとお客さまがいらっしゃっています。お通ししますね。」
「え?」
お客さま?私に…?仲の良い貴族の方なんて、いなかったはずよね?アンジュが部屋から出ていった。
誰か確認すればよかったかな……。
「ガチャ」
「……イヴ」
「!?」
驚きのあまり、ソファーから立ち上がった。
「グレイ、シア…!?」
何でここにグレイシアが……!!
私に謁見する際、必ず皇太子であるサリスの許可がいるはずなのに……、何で。
もしかして、試されてる?
「何、しに来たの」
「……一緒に帰ろう、イヴ。」
久しぶりに会った元婚約者は、すっかりとやせ細っていた。目の下のくまも酷い。
「い、嫌よ。何があっても帰りません。」
「僕は君がいないとダメなんだ……!!お願いだ、どうか、セレーヌに……」
「嫌だと言っているでしょう!!これ以上、話を続けるのなら…」
「そうか。意地でも帰らないってわけ。」
「え?」
グレイシアが近づいてきて、ナイフで私のドレスを破った。
「!?」
「これでもう披露式には出られないよね。さあ、帰ろうか。」
グレイシアの顔が不気味に微笑んでいた。
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