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第9章 差し伸べられた手
しおりを挟む「元、婚約者……」
「ええ。あなたが来たから私と殿下との縁談は破談になりましたのよ。」
「……私に身を引けと仰せですか」
「そういうわけじゃないわ。コゼット侯爵家との縁談を破談にしてまで皇太子の妃となった女性が皇后に相応しい人間かどうか、気になったのよ。」
「何がしたいんですか」
「だから……、見てみたかっだけと言ったじゃない。」
「そうではなく、あなたは私をどうしたいのか聞いているんです」
「え……?」
「追い出したい、とか、殺したいとか」
「わ、私はそんなこと……!」
「そうですか。ここは魔法空間の様なのでもしかしたら抵抗出来ないかもしれないと、少し焦りました。」
「そ、そんなことしないわよ。でも、あなたなんて殿下には相応しくない、ってくらい言ってやろうと思ってたわ。……あなたも実は被害者で貴族の令嬢と言うならば私には何も言えない。」
「そうですか?」
「それに、あなたの方が大人だわ。こんなことしてる私が子供みたい。」
「誰だってそうなるでしょう。」
「気を使わなくてよくてよ。……もうバレたか。時間切れだわ」
「え?」
「パリイッン」
「!!」
何、空間が、割れた……!?
「はいはーい、そこまでですよディクシー嬢」
庭園に入って来たのは、第二皇子だった。
「第二皇子殿下!?何故ここにっ!」
イスからガタンと立ち上がった。
「んー?魔力探知は僕のおはこだからねー。兄上に頼まれちゃって。僕兄上より魔力量だけは上だから」
「え……」
「それより、どういうことですかねディクシー嬢。皇太子妃を連れ去るなんて」
「……もう姉上とは呼んでくれないのね、ロイ。」
「おっとー、もう関係のない人に愛称で呼ばれる理由も姉と呼ぶ必要はないですよ。今の姉上はそちらにいらっしゃるイヴ・ザラキエル・フィーネ妃殿下ですから。」
「手のひら返しもいいとこね。」
「……悪いとは思ってますよ」
ロイドが悲しそうな顔で笑った。
「そんな顔しないでちょうだいよ。」
「そう言って貰えると助かりますよ、ディクシー嬢。申し訳ありませんが、皇太子妃をさらったことにより、謹慎を受けていただきます。」
「わかりました。連れて行ってちょうだい」
「ちょっ、第二皇子殿下!!」
「結構。私、あなたに守って貰うほど弱くなくてよ」
「でもっ……」
「非礼をお詫びいたしますわ、皇太子妃殿下。」
そう私にお辞儀をすると、ディクシー侯爵令嬢は連れていかれた。
「……第二皇子殿下、何故あなたがサリスの頼みで私を探したのですか?」
「頼まれたからって言わなかったっけ?」
「違います。こんなことしてもあなたにはメリットが1ミリもない。むしろ私が無事でなかった方が良いはずです。」
「姉上の言う通りだね。」
「だったら何故……」
「ほら、この前生かしといてくれたお礼。こっちから襲いかかったのに僕とヨルデミアンを生かしといてくれたでしょ。」
「……そんなことで」
「借りは作りたくないんだよね、僕。あと兄上が頭を下げたから。」
「サリスが!?」
「ホント気持ち悪かったけど、姉上のことは大切に思ってるみたいだね。」
「……」
「さ、帰ろう。お手をどうぞ、姫君」
「そういうあなたの態度の方が気持ち悪くてよ」
「ええ?」
「ありがとうございます、感謝してますわ。」
「……素直にお礼を言われるとは思ってなかった」
「助けてもらったらお礼するでしょう。」
「でも実際姉上とディクシー嬢はお茶してただけだし、助けたうちに入らないかもね。」
「いいえ、探してくれたこと、ありがとう」
「……帰るよ。兄上が心配してる」
「そうね。」
「イヴ!!」
「心配かけてごめんなさいサリス。うわっ」
ぎゅうぎゅうと強い力で抱きしめられた。
「……ありがとう、ロイド。」
「うーわっ、兄上のお礼とかマジゲロゲロだからお礼なんて言わないでよね。」
「それでも、感謝する。」
「言っとくけど、姉上はディクシー嬢に何もされてないからディクシー嬢の処罰は謹慎だけにしといてよね。」
「そのつもりだ。」
「じゃ、僕は帰るよ。後、借りは返したから」
「ええ。」
「俺たちも部屋に帰るか。」
「ねぇ、サリス」
部屋のソファーに座りながら、サリスに尋ねた。
「何だ」
「何で私以外に妻を作らないの?」
「ディクシーから何か聞いたか」
「いいえ。」
「作らなくとも大丈夫だからだ。ベルツェは他国の姫や自国の貴族と結婚せずとも十分な力がある。」
「それだけですか?」
「何が言いたい。俺の全てはお前の物だと言わなかったか?」
「ええそうです。あなたの全ては私の物、私の全てはあなたのもの。あなたが他に作らないのは私が原因ですか?」
「……答えたくない」
「わかりました。」
サリスに背を向け、出ていこうとした。
「お前は、何も聞かないんだな」
「聞いて欲しいですか?」
「いや……」
「なら結構。喋りたくないことをわざわざ聞いたりしません。話したくなったらでいいですわ。」
そういって、扉を閉めた。
……サリスが他に妻を作らないのは私が原因ではなく、サリスが側室の子供だということに関係しているのだろうか。
私は、自分の夫について、何も知らないのだな。
「おはようございます、奥様。」
「おはようアンジュ」
朝起きるとサリスはいなくなっていた。先に起きたのだろう。
「奥様、皇太子殿下と何かありましたか?」
「何もないわ」
「本当ですか」
「……あの人が隠し事ばかりするから冷たくしちゃったの。」
何か、アンジュってこういうこと鋭いよな…。
「……でしたら、街に出かけてみませんか?」
「街?」
「はい!何かをプレゼントされるのはいかがでしょう」
「……行ってもいいかしら」
「もちろんです!準備いたしますね」
プレゼント、か。確かに昨日は冷たい態度をとってしまったし、謝りたい。
「うわぁ……」
出店がいっぱい。賑やかだし、楽しそう……!
「奥様!あまり遠くに行かないで下さいませね」
「大丈夫よ。」
しばらくアンジュと街をブラブラして、1時間ぐらい経った頃だった。
「グイッ」
「ぅわっ!?」
「奥様!?……いない?」
「ちょっと離して!!離してよ、……シルキィ!!」
「失礼しました、イヴ。」
「何故あなたがここにいるの。あなたが側にいるべきはグレイシアなのではなくて?」
「グレイシア様の命です。」
「え?」
私の手を引いて暗い路地に連れ込んだのは、セレーヌにいた時の数少ない友人、シルキィ・アノベリア。現在14歳にして騎士団に所属していて、男爵令嬢。グレイシアの専属護衛でもあるからもちろん強い。そして、私と同じ神憑きでもある。
そのシルキィが何でベルツェに……。
っていうか、グレイシアの命って言った?
「今、グレイシア様はベルツェにいます」
「は!?あなた何で止めないのよ!!」
「何度も止めました。」
「分かっているの!?王太子と知られば何をされるかわかないのよ!?しかも、グレイシアは体が弱いし、隣国とはいえ、気温も違うわ。絶対体調を崩してしまう……!」
「……それだけまだ、グレイシア様の心配が出来るというのに何故敵国の皇太子妃などに……!」
「戻ったところでもう一度攻めてこられるわ。逃げたって同じことよ」
「そうでしょうか。いつもより元気な感じがしますが」
「シルキィ……、何が目的か聞きましょうか」
「単刀直入に言います。このまま、私の手を取って、セレーヌにお帰り下さい。」
シルキィがこちらに手を差し伸べた。
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