神憑き令嬢の死に方

ろろる

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第8章 元皇太子の婚約者

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「じゃあ着替えてこようか。待ってる」
「はい。」

「おはようございます、奥様」
「おはようアンジュ。体調はもう平気?」
「はい。その、本当に奥様が怖くなったとかじゃないですからね!」
「怖くなるのが普通なのよ。神の姿は加護を受けない人間には見えないもの。私が何もしていないのに次々と人が死んでいくのを見るのは怖かったでしょう」
「いえ、その……死体はこの皇宮では珍しくないので」
「え?」
「皇太子殿下は側室のお子ですから、現皇帝の正妻、第二皇子殿下の母君の刺客に殺されそうになったことは何度もあってそれを返り討ちによくしてらっしゃいましたので」
「……へぇ」
「失礼いたしました。早くお着替えにならないと殿下を待たせてしまいますね。どんなドレスにいたしましょう。……え」
「アンジュ?」
ドレス選びの時にアンジュが固まるって結構なデジャヴなんだけど……。
「あ、あの奥様。その、首のアレは、隠されますか?」
「首の、アレ?」
「……お気づきではなかったのですね」
え、え?怖いんだけど……。
手鏡をスっと渡された。
「……何?」
「首、よく見てください」
「……!?」
「今気づかれたんですか」
き、キスマーク!?あいつ……!!
首に噛み付かれたときか……!
「隠されます?」
「チョーカーで隠しましょう。」
「かしこまりました。」


「お待たせしましたサリス」
「おや、隠してしまったんだな」
「当たり前でしょうが!!」
 「あは、その顔が見たかったよ。予想どうりの反応だ。」
「いい加減になさいまし。隠さねばはしたない女性だと思われますわ」
「自分の物に印をつけて何が悪い」
「もう知りません!」
「そうだイヴ」
「はい?」
「近いうちにお前の披露会がある。皇太子殿下妃披露会だ。」
「まぁ」
「ダンスはできるか?」
「伯爵令嬢でしたからね。」
「あいさつは?」
「大丈夫ですわ」
「よろしい。じゃあ今日はドレス選びだ。」
「わかりました」


「これはどうだ?お前の瞳とよく合っていると思うが」
「って、サリスが選ぶのですか」
「そうだが?この部屋に置いてあるドレスは全てお前のサイズに合わせてある。」
しかもドレスだらけの部屋に二人しかいないっておかしな状況すぎやしないか?
「着るドレスがわかっていたらつまらないのでは?」
「それより妻が自分の選んだドレスを着ている方がいい。」
「……そう、ですか」
もうしばらくすれば、本当にこの人の妻となる。
展開がはやすぎて、あまり実感がわかない。
でも、自分はセレーヌに残した未練などない。私と向き合ってくれたこの人の隣の側にいるってことは、ちゃんと覚悟できているつもり、なんだけど。
「どうした?」
「いや、本当に私、あなたの妻になるのだなぁと、思いまして」
「……ほぉ?昨日あれだけさせておいてまだ足りないと言うのか?」
「え!?違います!そういうことじゃなくてですね!」
「ガタンっ!!」
「ひゃっ!?」
ソファーに押し倒される。
「言っただろう、この身全てお前の物だと。
何か不安があるのか?」
「い、いえ。その、実感がわかない、というか」
「披露式で自分が時期皇后だということをしっかり分からせてやる。何も不安に思うことはない。
……といわれても、無理な話か。お前は異国の地に急に来させられ、皇太子の妻となり、時期皇后なんて言われてすばやく実感が湧くはずがあるまい。」
「そこは私の覚悟の問題でしてよ。何も心配なさらないで、サリス。」
と、にこっと笑った。
「お前のそういう所は大人びていて好きだが、時に心配だな。」
「え?」
「ちょっ、ディクシー様!!困ります!」
「何よ、使用人ごときが貴族である私に逆らう気なの?どきなさい!」
「……?サリス、今のは……」
「問題ない。すぐに追い返される」
「え、本当に大丈夫なんですか?……んっ」
ちょ、何でこのタイミングでキスするのよ!!
「バンッ!!」
「皇太子殿下!ここで何をしておいででって……、な、なななっ、破廉恥な!!」
えっ、普通に入ってきた……!!
大丈夫じゃないじゃないの!ていうかキスしてる所見られてるし!!
「は、離してくださいましサリス!!」
「それは残念。……邪魔をするなよディクシー」
「そういう訳にも参りませんわ。申しわけありませんが、皇太子妃殿下でお間違いないでしょうか」
「ええ。」
青いドレスを着た、可愛らしい女性だった。
黒の鋭い瞳が私を捕らえた。
「ご同行願います。」
「グイッ」
「え!?」
「待てディクシー!イヴに何をするつもりだ。」
「ご挨拶に伺っただけです。」
「お前に挨拶される必要はイヴにない」
「勝手にしますわ。ご機嫌よう」
その女性がパチンと指を鳴らすと、ふわりと風が吹き、瞬きをして、次に目を開けた瞬間、そこは元いた部屋でなく、庭園の様な場所だった。
……これは、転移魔法。しかもこの庭園は自然な物でなく、魔法で作り出された空間だ。
スカートの裾をつまんで、礼をした。
「お初目にお目にかかります、イヴ・ザラキエル・フィーネと申します。」
「あら、お上手な挨拶ですこと。挨拶はきちんと出来ますのね。」
「伯爵令嬢でしたから、このくらいは当然ですわ」
「あら、あなた貴族なのですか?それは大変失礼を。私ベルツェの侯爵家、コゼット家令嬢、
ディクシー・ノヴァ・コゼットと申します。」
その女性も、私と同じ様に礼をした。
ベルツェの侯爵家令嬢……。侯爵家だから、かなりの位がある令嬢だな、この人。年は、同い年けくらいかな?
「とりあえず座って。お茶をどうぞ」
「はぁ、どうも……」
庭園に置かれていた椅子にはお茶と菓子が置かれていた。
「カタン」
「……あなた、随分と殿下に愛されてますのね。
いったいどんな手を使ったのかしら」
「……それはどうでしょうか」
「え?」
「私あなたの言うような恋愛小説のような感じで夫婦になったんじゃございません。
ディクシー様は私が神憑きであることはご存知ですか?」
「ええ。」
「私がどいいう経緯でここに来たかは?」
「全く知らないわ。にしても、フィーネ?そんな伯爵家ベルツェにあったかしら」
「ありませんよ。」
「ではもう無くなった貴族?でもここ数十年無くなった貴族はなかったと思うけれど」
「私はセレーヌ王国の貴族ですので」
「セレーヌですって?」
「ええ。」
もしかしたら私がセレーヌの貴族だということは公にされていないのかも。
この人は頭が良さそうだし、貴族の情報をしっかり持っていそうだ。知らないということは、私に関する情報は少ないらしい。
「セレーヌの伯爵令嬢であるあなたが何故皇太子殿下の花嫁に……」
「神の加護を受ける存在だからです」
「そんなことわかっているわよ」
「神の加護を受ける人間は、神の強さにもよりますが、強大な力を持っています。私は2人の神の加護を受ける存在です。」
「それって強大な魔法ってこと?」
「……どうでしょうか」
「え?」
「魔法の属性は全部で7つ、火、水、土、風、金、陽、陰。神憑きが使う魔法はそのどれにも属しません。」
「な!?そ、それって魔法と言えるのっ?どの魔導書にも、書いてあるわ。認められるのは7つの属性だけ、それ以外は魔法でない、と。」
「そうですね。これは御技の一種でしょう。この力を皇太子は欲しがり、私を連れ去った……ということです。」
「まさか被害者なのあなた」
「かも、しれませんね。所であなたは、あの人どういうご関係なのですか?」
「……私は、あなたがベルツェに来るまでの、皇太子殿下の婚約者ですわ。」
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