神憑き令嬢の死に方

ろろる

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第7章 気持ちの整理

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「今日ロイドに髪を切られそうになったそうだな」
「ケガしていなし、大丈夫ですわ。」
夕食後のティータイムに、あその会話をサリスが持ち出した。
「怪我してるしてないに関係なく、髪を切られそうになったんだぞ。……心配した」
その時唐突に気になったことがある。
この人は、何故心配してくれるのだろうか。
「質問がありますサリス」
「何だ?」
「あなたにとって私はただの皇帝になるための道具でしょうか」
「……ロイドに何か言われたか」
「いいえ。何故あなたが心配してくれるのか気になっただけですわ。」
「ほぉ」
「で?別にYesでもNoでもかまいません。」
「……最初はそうだったかもしれんが、今は分からなくなってきた。」
「質問の答えになってないわ」
「その通りだ。」
「おかしな人……」
「では、セレーヌにいた時の婚約者はお前を心から愛してくれていたのか」
「何故そんな質問を……」
「答えてくれ。」
「……そうですね。彼は、グレイシアは私を愛していると会う度に言ってくれました。
だけど、グレイは死神の部分を持つ私を受け入れられなくて、力を使った日から3日は避けられたりもしました。だから、私の死神の部分から逃げなかったあなたの側にいるのですサリス。逃げなかったのはあなたが初めてだから。」
「……」
「サリス?」
「……イヴ」
「はい」
「その口で二度と元婚約者の名前を呼ぶなよ。」
「はい?」
「お前の口からグレイシアと聞く度良い気がしない。」
「……えーと、つまり罪悪感というのとですか?仲を引き裂いてしまったことへの」
「違う。」
「じゃあ何だというのです」
「公務に戻る。先に休んでいてくれ」
「ちょ、ちょっとサリス!?」
「バタンッ」
「……はぁ?」
意味わかんない……。
もうサリスのことなんて知らない!言われなくても先に寝てやるっ……。

その日は疲れていたのか、すぐに眠りにつけた。
「イヴ、イヴ」
「え?」
何で、ここにグレイがいるの…?
「顔色が悪いよ。大丈夫かい?」
「何で、ここにグレイがいるの?」
「何でって、ここはセレーヌ王宮じゃないか。」
「私、ベルツェにいたはずなのに、なんで」
「ベルツェ?何の話だい?」
「だ、だって戦争に負けて私は……」
「どうしたんだイヴ。変な夢でも見たのかな」
「ち、違う。現実のはずなの。」
「怖い夢を見たんだね、かわいそうに……。抱きしめてあげる」
「グレイ、聞いて」
「愛しているよイヴ。」
違う、私の居場所はここではない。グレイの腕の中はもう私の居場所じゃない。なのに、振りほどけない。それが、嫌と感じてしまった。



「グレイ……」
「おい、起きろイヴ」
「ん……、朝か。」
「うなされていたぞ。」
「えっ?あれ、夢か。」
「……イヴ」
「何?」
「ドサッ!!」
「わっ」
ベッドに押し倒された。
「元婚約者の名前をその口で二度と呼ぶなと言ったはずだが?」
「ち、違う。あれは寝言です!」
「ほぉ?夢の中の時間までお前の元婚約者は俺との時間を邪魔するか。まったく憎たらしい」
「き、昨日から何なのです!あなたは、私に何がしたいの?」
「今ハッキリとわかったよ。俺が抱いている感情は……」
サリスの顔が近づいてくる。
「嫉妬だよ」
耳元で囁かれて、体がビクンと跳ねた。
「嫉妬……?」
「そうだ。俺はイヴが元婚約者の名を口にする度、抱く感情は罪悪感などではなく、嫉妬。」
「……」
「昨日の質問に答えてあげよう。イヴは俺の道具ではなく妻だ。君のことを大事に思っているから心配してる。」
「サリス……」
「だが、夫の言いつけを守らない妻にはしおきが必要だな」
「えっ」
ちょ、ちょっと待って。私今から何され……
「ガブっ」
「っ!?」
首筋に噛み付かれた。
「ちょっと、待って……!や、やめてってば!」
サリスが首筋から口を離し、フッと笑った。
「嫌がる顔もそそるな……。いいか?しっかり自覚しろ。未来永劫お前は俺の妻だ。他の男を見ることは許さない。……今から分からせてやる。」
「んんっ……!?んっ……ふっ」
強引なキスだった。でも、長くなるうちに、どんどん甘くなっていく。
こんなに強引なのに、私の手に絡ませた手は、優しく握られている。
「ぷはっ……、急に何するのよっ」
「ちゃんと言わないとお前はそういうのに疎そうだからな。」
「失礼な……」
「とにかく、元婚約者の名前を呼ぶなよ。
まぁ今日は俺のことで頭がいっぱいだろうがな」
その自信はどこから来るのよ!?……でも実際そうなりそうだ。
「わかった。サリスが嫌だと言うのなら口にしたりしませんわ。」
「よろしい。」
「こんなことして楽しい?」
「楽しいさ」
サリスが指で顎をクイッと上げてきて、目が合う。
「嫌がる顔や快楽に溺れそうな顔をするお前を見るのはたまらないな。」
「は!?誰が気持ちいいなんて言ったのよ!!」
「顔がそう言ってるんだよ」
何この人、ドSなの!?
「身も心も、血の一滴さえも全て俺に委ねろ。他の誰にも捧げられるものがないように。」
「……本気で言ってます?」
「ああ、大真面目だ。」
「ならばあなたも私に身も心も、血の一滴さえも、私に委ねて下さいますか」
「もちろんだ。この身も心も、血の一滴さえも、お前の物だよイヴ。」
その返事に微笑んだ。
「ならばその気持ちに応えましょう。この身も心も、血の一滴さえも、あなたの物です、サリス。」
ドクンドクンと、心臓がうるさい。
顔が熱い、耳が熱い。こんな激しいキスをしたのも初めて。こんなに嬉しいことを言われたのも初めて。……この気持ちをはやく整理しないと、すぐ飲み込まれてしまいそうだ。


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