40 / 78
第40話三年前~ブリリアントside~
しおりを挟むあれだけ申し伝えた筈ですのに!
何故ですの?
念を押して伝えたでしょう?
まあ、ユリウス王子のドタキャンは今に始まった事ではありません。というよりも、何時もドタキャンと言った方が正しいでしょうね。
「申し訳ございません」
頭を下げている護衛騎士が気の毒でなりません。
あら?そう言えば、この方は……。
「以前もユリウス殿下の護衛をされていましたが、本来はシュゼット側妃の護衛騎士ではありませんでしたか?」
「はい。シュゼット様からユリウス様の護衛を仰せつかりました」
「そうですか」
「ユリウス様は三ヶ月前に准将を賜っておられます。此度の長期休暇は、王宮の騎士団たちと共に演習に同行なさっていらっしゃいます。シャイン公爵令嬢に伝え忘れたのは私の不注意でございます。公爵令嬢には度重なる無礼の数々申し訳ございません」
今年の五月五日に王太子ユリウスは准将を賜った。
これは、王家の旧来からの習わしでもあり、ユリウス王子が軍に所属した訳ではありません。そのため、演習など本来は不要なもの。というよりも、准将という位そのものが名誉職になるのです。
私に会うのがそれほど嫌なのですね。それとも貿易外交を軽く考えているとしか思えない態度にも腹が立ちます。今回はユリウス王子の顔見せの意味もあり、近隣諸国の外交官が多数参加していらっしゃいます。
「宜しいですわ。今回も殿下は不参加と言う事で話は進めさせていただきます」
「申し訳ございません。ユリウス様は、最近、公務に出られる機会が増えられましたので公爵令嬢とのお約束に食い違いが生じているのだと思われます」
それは、私の通達に不備があると言いたいのかしら?
こちらは事前に通知しているのです。責任転嫁も甚だしい。
だいたい公務と言いますが、まさか退役軍人達との集いのことを言っているのではないでしょうね。
そんな集まりに王太子が出席する必要はありません。むしろ王族は参加すべきではないと思いますけど?ただ単に面倒だからと適当な理由を付けて欠席されているだけでしょうに。
本当に呆れてしまいます。
老人の愚痴に付き合うよりも他国の外交官や使節団と交流を持つ方が余程有意義だとお考えにならないのかしら? それともその程度の事も考えられない程に脳筋だという事を知らしめたいのかしら?
ああもう、頭が痛くなりそうですわ。
能筋でも、見てくれは最高級品。
私が考案したデザインのダイヤモンドを身に付けて美しく装えば、いい広告塔になったでしょう。男性物の装飾品の売り上げが上昇したかもしれないというのに。普段から無駄な装飾は一切身に付けずシンプルな装いでいる所為で流行には疎い処か着飾る事に意味を見いだせていないように感じます。どれだけ美しく着飾っても「派手だ」「贅沢過ぎる」等と褒め言葉一つでない有り様。外交貿易の要であるシャイン公爵家の娘が地味にしてどうすると言うのでしょう。この国の最大の産業であるダイヤモンドを売るために着飾っているのです。贅沢?当たり前でしょう。地味な装いでは売れる物も売れないと言うものです。ましてや、この国のダイヤモンドの質は他国より劣っているのですから、デザイン自体に価値を見出して貰わないといけませんのよ。それなのに、何度申し上ても理解されないどころか、最近は「煩い」と怒鳴りつける有様。
あの馬鹿王太子のせいで我が国の国力が低下したらどうしてくれるのです。本当に、嘆かわしいこと。これは何か手を打たねばなりませんわね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,053
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる