【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子

文字の大きさ
47 / 78

第47話新たな王~ユリウス王子side~


「そなたらを招集した理由は言わずともわかっておるな?」


 三年ぶりの父上の叱責。
 だが、今回は眉間に深い皺を刻みこみ渋い表情を露わにしていた。こんな父上は初めてだ。


「時間が解決すると安易に思っていたのがいけなかったのか。ユリウス、そなたが考えている以上にブリリアント嬢の価値は高い」

「アレにそのような価値はございません!帝国皇女の血を引いているから何だと言うのです!肝心なのは我が国の王家の血です!黒髪黒目の両親にない色を持つアレは紛い物の公爵令嬢。不義密通の末に生まれた咎人です。父上、今からでも遅くはありません。帝国に謝罪と賠償を請求いたしましょう!」

「ユリウス、それは誰に入れ知恵だ?ブリリアント嬢が公爵の娘でないと申すか……たわけ者!!!」

「ち、ちちう……え?」

「ブリリアント嬢は間違いなく帝国と王国に血をひく姫だ!両親の色を持たない?愚かな!彼女は公爵夫人の母君である前皇后陛下に瓜二つだ!黒髪も黒い目も何もかも祖母君から受け継いだものだ!」

「なっ!?」

「大方、予算を引かれた腹いせに奴らが流布したものだ。そんなものに惑わされるとは嘆かわしい」

 父上の剣幕に、僕も友人達も恐れおののいた。
 まさか、小娘が祖母似だとは思わなかったのだ。だいたい、母方の祖母などしらん!
 

「公爵家は帝国に赴いた。恐らく戻っては来ないだろう。婚約も白紙になったことでシャイン公爵家との縁も切れた。私も、そなたらも責任を取らねばならん。分かるな。特にユリウス、そなたの責任は重大だ」

 一体なにを言われるのだ?

「諸外国の目もある。誰の目から見ても公平な罰を与えねばならない。だが、その一方で、そなたらは未成年。未成年の子の罪は親が取るのが道理。故に、これより、私は息子の責任を取り譲位を宣言する!ユリウス王太子、これより、そなたが国王だ」

「!?」

 
 ざわっ!!

 周囲が一気に騒がしくなった。


「陛下、お考え直しください!」

「ユリウス殿下に国王は務まりません!!」

「まだ若すぎます!」

「黙れ!これは決定事項だ!ユリウス王太子、これへ!」
 
 父上は口煩い家臣達を一喝すると、玉座に上がるように命じる。
 僕が王座の前に歩み出ると、父上自らが頭上に王冠を載せてくださった。そして、マントを肩にかけてくれたのだ。…………これが王族としての責務なのだと身にしみて理解する。同時に、今まで自分が如何に恵まれていたのかを知ることになった。王侯貴族にとって、命より大切なものはない。それは王位も同じだったのだ。この国のために尽くしてくれた臣下たちのために、僕は覚悟を決めるしかなかった。
 
「父上、謹んでお受け致します。必ずや、この国を繁栄させ民の安寧を約束いたします!」

 こうして、僕は十八歳という異例の若さで即位したのであった。
 友人たちもまた親から爵位を受け継ぎ、僕の側近になる事が決定した。

 晴れやかな僕達とは裏腹に古参の家臣が真っ青になっていた事に全く気付くことも無く、未来は明るいと疑わなかった。調査の結果、公爵家に冤罪をかけたことも忘れ、すべてが順風満帆にいくと信じていた。


 国中の貴族を集めた戴冠式。
 豪華絢爛の舞台に酔いしれた。
 だから、気付かなかった。
 式典の参列者に諸外国の重鎮が少なかったことを。

 数日後、国王命令として、母上を後宮から王宮に移した。
 王妃は既に王宮を出て実家の侯爵家に戻っていたので、邪魔する者は誰もいなかった。父上が手配したのか、王妃の猶子ではなくなっていた。即位したので必要がなくなったと解釈した僕は深く考えることはしなかった。
 
「まあ、これでゆっくり出来る。母上にもこれから楽をさせてあげれます」

 僕のその言葉を聞いたときの母上の顔が強張っていたのに気づくことが出来なかった。

 そして、退位した父上が隠遁先に選んだのが王都から一番遠い場所であったことにも疑問に思わなかったのである。

 




 

感想 75

あなたにおすすめの小説

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢、元婚約者を裏で裁きます

音無響一
ファンタジー
王城の大広間で、リリアーナ・エルヴァルトは婚約者である王太子から一方的に婚約破棄を言い渡される。罪を捏造され、断罪され、国外追放。誰も味方のいない中、彼女は一切の弁明をせず静かに受け入れた。 だがその夜。 彼女は別の顔を持つ。 王都の闇で依頼を受け、悪を裁く裏稼業の元締め。 今度の標的は――自分を断罪した元婚約者。 婚約は終わった。だが清算はまだ終わっていない。 表では悪役令嬢。裏では裁く側。 これは、断罪された令嬢が王都の闇を静かに切り裂く物語。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。