15 / 21
本編
15.二重の慶事
ファブラ王国のラミロ国王に第一子が誕生した。
待望の王子の誕生を機に、生母の身分を公表した。
カルーニャ王国のペトロニラ王女。
彼女はカルーニャ王国の失われた「王族の色」である「虹色の瞳」を持つものの、母親の出自が低いことから、ずっと虐げられていた「悲劇の王女」としてファブラ王国で語り継がれていくことになる。
なにはともあれ、ラミロ国王の世継ぎ誕生にファブラ王国の民は大いに喜んだ。
ペトロニラは王妃になった。
二重の慶事に国中が浮かれた。
「へ、へいか……。わ、私に王妃は無理でございます」
「無理?どうしてだ?ペトロニラは王子を産んだ。世継ぎの母が王妃にならずに誰がなるというのだ?」
「私は……その、あの……」
世継ぎ誕生に浮かれるファブラ王国で、ペトロニラは王妃として迎えられたが、本人は酷く狼狽えた様子で、私に「王妃の辞退」を何度も申し出ている。私がそんなことを許すと思っているのだろうか。
「既に公式発表も終わっている。違いました、間違いでした、は通用しない」
「で、ですが他に相応しい方は大勢おります」
「いや、いない」
「え……?」
まさか私が却下するとは思わなかったのだろう。
ペトロニラは驚いた様子で私を見た。
私はそんな妻を優しく見つめ返した。
「そなた以外を王妃に迎える気はない」
「……へ、陛下」
「相応しいかどうかは私が決めることだ」
「……」
泣きそうな顔で「滅相もございません」とか、言い出した妻。
そんな顔をしなくてもいいことなのに。
母国での扱いの酷さのせいだろう。まだまだ自己肯定感が低そうだ。
「私はそなた以外を王妃に迎えない。これは決定事項だ。よいな?」
「は、い……」
まだ何か言いたそうな妻に「話は終わりだ」と告げれば、彼女は諦めたように頷いた。
これでいい。
今はまだ……な。
口うるさい連中を黙らせるには十分だ。
“虹色の瞳”を持つ王妃。
この瞳の色は何も彼女の母国だけが特別視している訳ではない。
大陸の国中が憧れ崇拝しているもの。
それを蔑ろにした彼の国は相当のアホだ。
罪深いを通りこしたアホ。
価値を理解しない。理解したくない愚か者達に、ペトロニラは勿体ない。
ペトロニラが世継ぎを産み王妃になったことを聞きつけたのか、カルーニャ王国は非公式に接触してきた。
呆れるしかない要求に私は拒否の旨を伝えた。
非常識なことをしようとする哀れな国の為に答える義理などこちらにはないのでな。
『虹色の瞳を持つペトロニラ王女様を我が国の王女として正式にファブラ王国に嫁がしたい』
『ペトロニラ王女様はお優しい方。母国の窮状をしれば心を痛めますでしょう』
『どうでしょう。過去のことは水に流し、これから新たな関係を築けばいいのでは?』
呆れて物が言えないとはこのことか。
自分達がペトロニラに謝罪していないことを棚上げし、懲りずに連絡を取ってくる。
“馬鹿につける薬なし”とはよく言ったものだ。
「陛下、如何いたしましょう」
「放っておけ。また言ってくるようなら、賠償金の額を上乗せするぞ、とでも脅しておけ」
「かしこまりました」
あの国の連中は、本当に自分達が何をしたのか分かっていないらしい。
自分達の行いを棚に上げて、よくもまぁ懲りずに勝手なことばかり言ってくれるものだ。
ペトロニラが許しても私は奴らを許さない。
絶対に許してやるものか。
もう二度と近づけさせない。
それでもまぁ、最愛の妻の母国だ。
国としての形だけは残しておいてやろう。
慶事なのだ。
寛容に対応しよう。
血生臭い話しは、当分お預けだ。
私は妻の涙に弱いのでな。
待望の王子の誕生を機に、生母の身分を公表した。
カルーニャ王国のペトロニラ王女。
彼女はカルーニャ王国の失われた「王族の色」である「虹色の瞳」を持つものの、母親の出自が低いことから、ずっと虐げられていた「悲劇の王女」としてファブラ王国で語り継がれていくことになる。
なにはともあれ、ラミロ国王の世継ぎ誕生にファブラ王国の民は大いに喜んだ。
ペトロニラは王妃になった。
二重の慶事に国中が浮かれた。
「へ、へいか……。わ、私に王妃は無理でございます」
「無理?どうしてだ?ペトロニラは王子を産んだ。世継ぎの母が王妃にならずに誰がなるというのだ?」
「私は……その、あの……」
世継ぎ誕生に浮かれるファブラ王国で、ペトロニラは王妃として迎えられたが、本人は酷く狼狽えた様子で、私に「王妃の辞退」を何度も申し出ている。私がそんなことを許すと思っているのだろうか。
「既に公式発表も終わっている。違いました、間違いでした、は通用しない」
「で、ですが他に相応しい方は大勢おります」
「いや、いない」
「え……?」
まさか私が却下するとは思わなかったのだろう。
ペトロニラは驚いた様子で私を見た。
私はそんな妻を優しく見つめ返した。
「そなた以外を王妃に迎える気はない」
「……へ、陛下」
「相応しいかどうかは私が決めることだ」
「……」
泣きそうな顔で「滅相もございません」とか、言い出した妻。
そんな顔をしなくてもいいことなのに。
母国での扱いの酷さのせいだろう。まだまだ自己肯定感が低そうだ。
「私はそなた以外を王妃に迎えない。これは決定事項だ。よいな?」
「は、い……」
まだ何か言いたそうな妻に「話は終わりだ」と告げれば、彼女は諦めたように頷いた。
これでいい。
今はまだ……な。
口うるさい連中を黙らせるには十分だ。
“虹色の瞳”を持つ王妃。
この瞳の色は何も彼女の母国だけが特別視している訳ではない。
大陸の国中が憧れ崇拝しているもの。
それを蔑ろにした彼の国は相当のアホだ。
罪深いを通りこしたアホ。
価値を理解しない。理解したくない愚か者達に、ペトロニラは勿体ない。
ペトロニラが世継ぎを産み王妃になったことを聞きつけたのか、カルーニャ王国は非公式に接触してきた。
呆れるしかない要求に私は拒否の旨を伝えた。
非常識なことをしようとする哀れな国の為に答える義理などこちらにはないのでな。
『虹色の瞳を持つペトロニラ王女様を我が国の王女として正式にファブラ王国に嫁がしたい』
『ペトロニラ王女様はお優しい方。母国の窮状をしれば心を痛めますでしょう』
『どうでしょう。過去のことは水に流し、これから新たな関係を築けばいいのでは?』
呆れて物が言えないとはこのことか。
自分達がペトロニラに謝罪していないことを棚上げし、懲りずに連絡を取ってくる。
“馬鹿につける薬なし”とはよく言ったものだ。
「陛下、如何いたしましょう」
「放っておけ。また言ってくるようなら、賠償金の額を上乗せするぞ、とでも脅しておけ」
「かしこまりました」
あの国の連中は、本当に自分達が何をしたのか分かっていないらしい。
自分達の行いを棚に上げて、よくもまぁ懲りずに勝手なことばかり言ってくれるものだ。
ペトロニラが許しても私は奴らを許さない。
絶対に許してやるものか。
もう二度と近づけさせない。
それでもまぁ、最愛の妻の母国だ。
国としての形だけは残しておいてやろう。
慶事なのだ。
寛容に対応しよう。
血生臭い話しは、当分お預けだ。
私は妻の涙に弱いのでな。
あなたにおすすめの小説
飽きたと捨てられましたので
編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。
計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。
横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。
※7000文字前後、全5話のショートショートです。
※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。
あなたの隣に私は必要ですか?
らんか
恋愛
政略結婚にて、3年前より婚約し、学園卒業と共に嫁ぐ予定であったアリーシア。
しかし、諸事情により結婚式は延期され、次の結婚式の日取りさえなかなか決められない状況であった。
そんなアリーシアの婚約者ルートヴィッヒは、護衛対象である第三王女ミーアの傍を片時も離れようとしない。
月1回の婚約者同士のお茶会もすぐに切り上げてしまい、夜会へのエスコートすらしてもらった事がない。
そんな状況で、アリーシアは思う。
私はあなたの隣に必要でしょうか? あなたが求めているのは別の人ではないのでしょうかと。
* 短編です。4/4に完結します。
ご感想欄は都合により、閉じさせて頂きます。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。
エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。
──そして舞踏会の夜。
王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。
ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。
王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。
王国は“内乱寸前”へと傾いていく。
そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。
「僕と結婚してほしい。
僕以外が王になれば、この国は沈む」
冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。
「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」
エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。
それからの2人は──?
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。