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~ロクサーヌ王国編~
9.転生者
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裁判所からの帰り道。
私は馬車の中で物思いにふけっておりました。
それはとも言うのも――
私は、いつの間に悪役令嬢になったのかと言う事です。
そもそも物語に公爵令嬢を断罪する場面なんて存在しなかったはず。
生前と申しますか、前世と言いますか……私、ブランシュ・クリスティーネ・ヴァレリーは実は転生者なのです。そして、この世界は前世でアニメ化された人気小説の世界でした。
もっとも――
『この世界は私の前世で人気の小説だったの!』
『私は生まれ変わった人間よ!』
『実は転生者で既にアラフォー世代よ!!』
……などと言えば「頭は大丈夫か!?」と心配されて精神病棟に隔離されるのがオチですから誰にも言ってませんけれど。
まぁ、自分が転生者だと気付いたのは比較的早い段階だったせいもあるでしょう。
私が記憶を取り戻したのは五歳の時。屋敷の階段から誤って転げ落ちた衝撃で前世?の記憶が蘇り、ここが小説の世界だと気付いたのが始まりなのです。きっと頭を強く打ったのが原因でしょう。だって思いっきりコブができていたんですもの!絶対にそう!
殴れば元に戻る、という言葉?はあながち間違いではないのだと実感した瞬間でした。
気絶した私が次に目を覚ました場所は寝室のベッドの中、医者に診察され終わった時でした。一気に流れ込んできた過去の記憶に頭がパニックに陥り、絶叫したのは良い思い出です。
その後も――
『ココはぢょこ!?』
『わたちはだあれ?』
『ちょうぜつちぇかい!!』
『いちぇかいちぇんせい!?』
……と、まぁ……怪しげな言葉を発したようなのですが、如何せん、頭を強くぶつけたショックと幼児退行以上に拙い口調だった事が幸いしました。誰も私の言葉を理解する者がいなかったのです。その後、暫く高熱で魘された事から周囲は「怪我の後遺症で記憶が一時期あやふやになっているのだろう」とされていました。
熱が下がって、元気いっぱいに屋敷中を駆けまわっても「お元気なられてよかった」と使用人たちに囁かれていた位ですから。本当に幼児の時に記憶が戻ったのは幸運としか言いようがありません。
それは、私の小説世界での立ち位置にも大きく関わる事だったのです。
『ロクサーヌの祈り』
それが小説の題名。
小説のタイトルにちなんで、この国は「ロクサーヌ王国」といいます。
物語は、ヒロインのクロエ・ライトが王立学園に編入してくるところから始まります。
ヒロインであるクロエは、これまた王道設定というべきか男爵家の庶子の生まれ。彼女は母親と共に市井で暮らしていたのですが、母親を亡くし途方にくれていたところに父親を名乗る紳士に引き取られたのです。回想していると何だか怪しい詐欺のような展開ですわね。まともな大人が傍にいれば間違いなく通報される案件です。それと言うのも、この世界は誰もが魔法を使えるという訳ではないからです。しかも、クロエの回復魔法は希少価値も高い。彼女の能力に目を付けて「父親と名乗っている」と思われてもおかしくありません。
学園側も希少価値の高いクロエの存在を考慮して編入を認めた位です。学園側は、平民から貴族になった背景を鑑みて王子率いる生徒会メンバーにクロエの世話を任すのですが、そこからクロエと五人の攻略対象たちの愛と友情の物語になっていくのです。
因みに、小説の中での私の立場は『王子の亡き婚約者候補』でした。
私は馬車の中で物思いにふけっておりました。
それはとも言うのも――
私は、いつの間に悪役令嬢になったのかと言う事です。
そもそも物語に公爵令嬢を断罪する場面なんて存在しなかったはず。
生前と申しますか、前世と言いますか……私、ブランシュ・クリスティーネ・ヴァレリーは実は転生者なのです。そして、この世界は前世でアニメ化された人気小説の世界でした。
もっとも――
『この世界は私の前世で人気の小説だったの!』
『私は生まれ変わった人間よ!』
『実は転生者で既にアラフォー世代よ!!』
……などと言えば「頭は大丈夫か!?」と心配されて精神病棟に隔離されるのがオチですから誰にも言ってませんけれど。
まぁ、自分が転生者だと気付いたのは比較的早い段階だったせいもあるでしょう。
私が記憶を取り戻したのは五歳の時。屋敷の階段から誤って転げ落ちた衝撃で前世?の記憶が蘇り、ここが小説の世界だと気付いたのが始まりなのです。きっと頭を強く打ったのが原因でしょう。だって思いっきりコブができていたんですもの!絶対にそう!
殴れば元に戻る、という言葉?はあながち間違いではないのだと実感した瞬間でした。
気絶した私が次に目を覚ました場所は寝室のベッドの中、医者に診察され終わった時でした。一気に流れ込んできた過去の記憶に頭がパニックに陥り、絶叫したのは良い思い出です。
その後も――
『ココはぢょこ!?』
『わたちはだあれ?』
『ちょうぜつちぇかい!!』
『いちぇかいちぇんせい!?』
……と、まぁ……怪しげな言葉を発したようなのですが、如何せん、頭を強くぶつけたショックと幼児退行以上に拙い口調だった事が幸いしました。誰も私の言葉を理解する者がいなかったのです。その後、暫く高熱で魘された事から周囲は「怪我の後遺症で記憶が一時期あやふやになっているのだろう」とされていました。
熱が下がって、元気いっぱいに屋敷中を駆けまわっても「お元気なられてよかった」と使用人たちに囁かれていた位ですから。本当に幼児の時に記憶が戻ったのは幸運としか言いようがありません。
それは、私の小説世界での立ち位置にも大きく関わる事だったのです。
『ロクサーヌの祈り』
それが小説の題名。
小説のタイトルにちなんで、この国は「ロクサーヌ王国」といいます。
物語は、ヒロインのクロエ・ライトが王立学園に編入してくるところから始まります。
ヒロインであるクロエは、これまた王道設定というべきか男爵家の庶子の生まれ。彼女は母親と共に市井で暮らしていたのですが、母親を亡くし途方にくれていたところに父親を名乗る紳士に引き取られたのです。回想していると何だか怪しい詐欺のような展開ですわね。まともな大人が傍にいれば間違いなく通報される案件です。それと言うのも、この世界は誰もが魔法を使えるという訳ではないからです。しかも、クロエの回復魔法は希少価値も高い。彼女の能力に目を付けて「父親と名乗っている」と思われてもおかしくありません。
学園側も希少価値の高いクロエの存在を考慮して編入を認めた位です。学園側は、平民から貴族になった背景を鑑みて王子率いる生徒会メンバーにクロエの世話を任すのですが、そこからクロエと五人の攻略対象たちの愛と友情の物語になっていくのです。
因みに、小説の中での私の立場は『王子の亡き婚約者候補』でした。
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