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~第一章~
12.エルside
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「こんな……間違ってます」
「間違いでも何でもない。何度言えば理解できる?」
「だ、だってこんな……」
「君はもう聖女候補でも何でもないんだ。手続きが終われば出て行くのは当然だろう」
私は今、神殿を追い出されようとしていました。
あの後、仕方なく書類にサインをしたというのに。
「わ、私以外に誰が聖女になれるというのです!」
たまらなくなって叫んでしまいました。
だって、そうでしょう?
今まで聖女になるために辛い修行を耐えてきたと言うのに!!
「納得できません!!」
次期聖女。
それも確定同然でした。
なのに――
「君が選んだことだ」
「何を!!」
「それとも死刑のほうが良かったのかね? 司法取引で君は別人として生まれ変わったんだ。エル」
「わ、私は!」
「聖女候補のエルミアは死んだ。修行中の不幸な事故によってな」
淡々と言い放つ司祭に殺意が湧きます。
私の名前と経歴を奪ったのは神殿でした。
その上、神殿内部の情報を漏らさないための処置としてつけられた首輪。魔石が埋め込まれ、一見すると凝った造りのオシャレなアクセサリーですけど、私が自分の正体や神殿の事を喋ると魔力を流され首を締め上げる代物です。
「くっ……」
悔しくて唇を噛みしめる事が出来ません。
司祭だけでなく、神殿の方々にどれだけ抗議しても取り合ってもらえませんでした。
三日前――
『これでは死刑囚と変わりません!!』
『これはおかしな事を言う。死刑囚よりも自由がある。外に出られるんだ。君の望んだ自由な生活だ』
『ち、違います! 私の望みは!』
『聖女になる事か?それとも惚れた男と結婚して普通の生活を送る事か?どちらももう無理だ。聖女になる最大の条件である清らかな身ではもうないだろう?それでは聖女にはなれない』
『それは……ですが私にはまだ…………』
『回復魔法があるという気か?そんなものは聖女候補としてのおまけにすぎない。そもそも表向きの理由に過ぎないものだ。真の理由は君の持つ予知能力だ』
意味が分かりませんでした。
予知とは何ですか?!
私にそんな力はありません!
その前に予知した記憶なんて全くなかったのです。
『……私、予知なんて……』
『していたんだ。君が自分自身で気付かなかっただけだ。なにしろ、夢で見ただけの内容をただ喋っていただけだからな。君が気付かなかったとしても別段不思議ではない。だがね、この予知の力こそが聖女の証でもあった』
『なら……』
『だが今の君にその力はない。いや、消失したと言った方がいいだろうな』
『え?』
『あのスパイと深い仲になった事で未来視の能力を失った。まぁ、代々の聖女は結婚を機にその地位を降りる事が決められている。何故か分かるか?純潔で無くなるからだ。たまに大聖女と呼ばれる偉人もでるが、彼女達は己の力の有用性を理解している者ばかりだ。国と神殿に選ばれた男と婚姻するよりも生涯神殿での生活で得られる特権に重きを置く者達だ。辞めていく聖女は君のように何も知らずに聖女の地位につく』
『そ、そんなのって……』
『さて、話はここまでだ。荷物をまとめて出て行きなさい。それが身のためだ』
大聖女と讃えられた女性達は書物の中で記載されているような清廉潔白な人達ではないと言われ、余計に混乱しました。
結婚して神殿を去った聖女のその後を記した書物が一切ない理由を今更ながらに察して私は無知以外の何物でもなかったのです。
こうして私は神殿を追い出されました。
「間違いでも何でもない。何度言えば理解できる?」
「だ、だってこんな……」
「君はもう聖女候補でも何でもないんだ。手続きが終われば出て行くのは当然だろう」
私は今、神殿を追い出されようとしていました。
あの後、仕方なく書類にサインをしたというのに。
「わ、私以外に誰が聖女になれるというのです!」
たまらなくなって叫んでしまいました。
だって、そうでしょう?
今まで聖女になるために辛い修行を耐えてきたと言うのに!!
「納得できません!!」
次期聖女。
それも確定同然でした。
なのに――
「君が選んだことだ」
「何を!!」
「それとも死刑のほうが良かったのかね? 司法取引で君は別人として生まれ変わったんだ。エル」
「わ、私は!」
「聖女候補のエルミアは死んだ。修行中の不幸な事故によってな」
淡々と言い放つ司祭に殺意が湧きます。
私の名前と経歴を奪ったのは神殿でした。
その上、神殿内部の情報を漏らさないための処置としてつけられた首輪。魔石が埋め込まれ、一見すると凝った造りのオシャレなアクセサリーですけど、私が自分の正体や神殿の事を喋ると魔力を流され首を締め上げる代物です。
「くっ……」
悔しくて唇を噛みしめる事が出来ません。
司祭だけでなく、神殿の方々にどれだけ抗議しても取り合ってもらえませんでした。
三日前――
『これでは死刑囚と変わりません!!』
『これはおかしな事を言う。死刑囚よりも自由がある。外に出られるんだ。君の望んだ自由な生活だ』
『ち、違います! 私の望みは!』
『聖女になる事か?それとも惚れた男と結婚して普通の生活を送る事か?どちらももう無理だ。聖女になる最大の条件である清らかな身ではもうないだろう?それでは聖女にはなれない』
『それは……ですが私にはまだ…………』
『回復魔法があるという気か?そんなものは聖女候補としてのおまけにすぎない。そもそも表向きの理由に過ぎないものだ。真の理由は君の持つ予知能力だ』
意味が分かりませんでした。
予知とは何ですか?!
私にそんな力はありません!
その前に予知した記憶なんて全くなかったのです。
『……私、予知なんて……』
『していたんだ。君が自分自身で気付かなかっただけだ。なにしろ、夢で見ただけの内容をただ喋っていただけだからな。君が気付かなかったとしても別段不思議ではない。だがね、この予知の力こそが聖女の証でもあった』
『なら……』
『だが今の君にその力はない。いや、消失したと言った方がいいだろうな』
『え?』
『あのスパイと深い仲になった事で未来視の能力を失った。まぁ、代々の聖女は結婚を機にその地位を降りる事が決められている。何故か分かるか?純潔で無くなるからだ。たまに大聖女と呼ばれる偉人もでるが、彼女達は己の力の有用性を理解している者ばかりだ。国と神殿に選ばれた男と婚姻するよりも生涯神殿での生活で得られる特権に重きを置く者達だ。辞めていく聖女は君のように何も知らずに聖女の地位につく』
『そ、そんなのって……』
『さて、話はここまでだ。荷物をまとめて出て行きなさい。それが身のためだ』
大聖女と讃えられた女性達は書物の中で記載されているような清廉潔白な人達ではないと言われ、余計に混乱しました。
結婚して神殿を去った聖女のその後を記した書物が一切ない理由を今更ながらに察して私は無知以外の何物でもなかったのです。
こうして私は神殿を追い出されました。
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