偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第三章~

54.アンハルト国王side

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 アヴィド・パッツィーニ。

 パッツィーニ侯爵家の次男となった男は最悪だった。
 王女と婚約していながら他の女達に手を出すことはやめず、夜会での振る舞いは常軌を逸しているほどだ。既婚者とも関係を持っていると専らの噂だ。そのことで相手側の家族が激怒しているという噂もある程だ。

 宰相の娘には婚約者がいる。
 そんな娘にまで手を出そうとする始末だ。
 高位貴族の令嬢としてキッパリと断り、婚約者である公爵子息にも諌められて大人しくなるなら良いのだが……そうはならなかった。逆に執着するようになり、より一層手に負えなくなったらしい。

 先週の夜会で宰相の娘を無理やり連れ出そうとして反撃にあった。
 そして牢屋に入れられ、今に至るというわけだが。

『ふざけるなよ!この俺にこんなことしやがってタダで済むと思うなよ!』

『俺は侯爵家の息子だぞ!こんなことして良いと思っているのか!!』

『王女の婚約者だ!王族になるんだぞ!それがどう言う事か分かっているのか!?』

 反省の色など全くないどころか、喚き散らすばかりの男に看守達はうんざりしているらしい。

 貞操観念など全くなく、己の欲望に忠実で他人のことなどお構いなしの男だ。
 そんな男と王女が結婚しなければならぬとは悪夢以外の何物でもない。

 偽物と判明した時点で王女との婚約を白紙にしようと動いた。

 だが……。



『何を仰るのですか。アヴィド・パッツィーニ侯爵子息と王女殿下の婚約は内外に知られております。今更、婚約の白紙は無理というものです』

『アレは偽物ではないか!!』

『それが何か?』

『なっ!?』

 宰相を始め、家臣達は偽物の侯爵子息との婚約を続行させようとしていた。

『そもそも、サビオ殿を偽物として国外追放したのです。アヴィド・パッツィーニを偽物と告発すればサビオ殿以上の罪に問われることになります。そうなれば我が国の威信に関わる大問題に発展します』

『だが!』

『それに、神殿側が彼を偽物とは認めないでしょう』

『我々が神殿を告発すればいい!!』

『現段階で信用されていない我が国の言い分など誰も信じませんよ。そのことは陛下もお分かりでしょう?』

 宰相の言葉にグッと言葉を飲み込むしかなかった。

『それでは……』

『はい。アヴィド・パッツィーニはこのまま本物として扱います。ご安心ください。彼が王家の血筋に連ならないように事前に処理はしてあります』

『それはつまり……!』

『えぇ。彼には子供ができないようにしておきました』

 そう言ってニヤリと笑った宰相にゾッとした。
 何時の間に!?
 アヴィドが黙って従うとは到底思えない!

 私は疑問だった。
 その答えは直ぐに返ってきた。



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