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~第四章~
93.サバスside ~始まりの事件1~
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結論からいうと、資料は役に立った。
俺達が知りたかった事件の詳細、当時の在学生たちの今、マッド共は全て調べ上げていた。
正義と評して集団リンチで人を殺した少年以外にも、当時の在学生達……正確には王太子のクラスメイトの殆どが塀の中にいた。
それも全員、精神異常ということで。
「行き過ぎた正義感は毒にしかならないね」
エヴァンの呟きに俺も同意した。
『正義の名のもとに』で行われた殺人。
彼らの正義を肯定する者は誰もいない。
それはそうだろう。
自分の中に正義があろうとも、人を殺めて良い理由にはならない。
人を殺した時点でそいつはもう『悪人』であり『罪人』だ。
彼らが精神異常と判断されたのは動機もそうだが、その後も一切、反省も後悔もしていないという点だ。
反省や後悔はしなくても、自分が間違ったことをしたという認識はあるはずだ。
だが彼らにはそれすらない。
現実から目を逸らしているという訳でもなく、本気で『自分の行動は正しい』と信じ切っている。
そんな彼らは狂っているという一言で片付けていいのだろうか。
「きっかけはやっぱりオレフ王国のリーハイム王太子の件だよね」
「おそらくな」
というより、それしか思い浮かばない。
リーハイム王太子の件でタガが外れたのか。あるいは。
「『王太子は事故ではなく殺されていた』」
エヴァンが資料の一部を読み上げた。
「ああ、そうだな」
俺は頷いた。
その可能性は高いだろう。
リーハイム王太子の事故死を疑問に思う者は当時も多かったらしい。
だが、事故として処理された。
きな臭い事この上ない。
マッド共が言葉にせず資料を渡してきたことからして、この学校には事件の関係者がいる。または事件に関わっていた可能性の高い者がいると考えた方が良さそうだ。
その関係者に悟られないよう、エヴァンに資料を渡したのだろう。
「この学校に当時の関係者がいるのかな?」
「たぶんな」
「誰だろう?」
「……さぁな」
気になるが見当もつかない。
だが、四十前後の教師は気を付けておいた方がいいだろう。
マッド共も資料を寄越しただけで、誰が関係者なのかは言っていない。資料にも書かれていない。この当時の在学生を調べたら分かるかもしれないが、それならマッド共が言うだろうし……分からない。何かあるのか?
「先生達が資料を提供してくれたんだ。全部読んでから考えよう」
「……そうだね」
エヴァンは何か考えているようだ。
気になる事があるのか?
いや、それなら俺に言うか。
それにしてもこの膨大な資料。
とてもじゃないが一日では読み切れない。
俺達が知りたかった事件の詳細、当時の在学生たちの今、マッド共は全て調べ上げていた。
正義と評して集団リンチで人を殺した少年以外にも、当時の在学生達……正確には王太子のクラスメイトの殆どが塀の中にいた。
それも全員、精神異常ということで。
「行き過ぎた正義感は毒にしかならないね」
エヴァンの呟きに俺も同意した。
『正義の名のもとに』で行われた殺人。
彼らの正義を肯定する者は誰もいない。
それはそうだろう。
自分の中に正義があろうとも、人を殺めて良い理由にはならない。
人を殺した時点でそいつはもう『悪人』であり『罪人』だ。
彼らが精神異常と判断されたのは動機もそうだが、その後も一切、反省も後悔もしていないという点だ。
反省や後悔はしなくても、自分が間違ったことをしたという認識はあるはずだ。
だが彼らにはそれすらない。
現実から目を逸らしているという訳でもなく、本気で『自分の行動は正しい』と信じ切っている。
そんな彼らは狂っているという一言で片付けていいのだろうか。
「きっかけはやっぱりオレフ王国のリーハイム王太子の件だよね」
「おそらくな」
というより、それしか思い浮かばない。
リーハイム王太子の件でタガが外れたのか。あるいは。
「『王太子は事故ではなく殺されていた』」
エヴァンが資料の一部を読み上げた。
「ああ、そうだな」
俺は頷いた。
その可能性は高いだろう。
リーハイム王太子の事故死を疑問に思う者は当時も多かったらしい。
だが、事故として処理された。
きな臭い事この上ない。
マッド共が言葉にせず資料を渡してきたことからして、この学校には事件の関係者がいる。または事件に関わっていた可能性の高い者がいると考えた方が良さそうだ。
その関係者に悟られないよう、エヴァンに資料を渡したのだろう。
「この学校に当時の関係者がいるのかな?」
「たぶんな」
「誰だろう?」
「……さぁな」
気になるが見当もつかない。
だが、四十前後の教師は気を付けておいた方がいいだろう。
マッド共も資料を寄越しただけで、誰が関係者なのかは言っていない。資料にも書かれていない。この当時の在学生を調べたら分かるかもしれないが、それならマッド共が言うだろうし……分からない。何かあるのか?
「先生達が資料を提供してくれたんだ。全部読んでから考えよう」
「……そうだね」
エヴァンは何か考えているようだ。
気になる事があるのか?
いや、それなら俺に言うか。
それにしてもこの膨大な資料。
とてもじゃないが一日では読み切れない。
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