1 / 21
1.契約結婚1
しおりを挟む
「ではこれで契約は成立した」
「はい」
「確認になるが、決して私を愛する事はしないでくれ」
「勿論ですわ」
「私が君を愛する事はない」
「解っております」
「万が一、君が私を愛する事があれば……」
「そのような事は天地がひっくり返ってもございません」
「……」
「契約書にもそう記載しておりますので、御安心ください」
「……そうだな」
「はい」
「だが、もしもという場合もある。その時はリード子爵家との事業は白紙に戻させてもらう。その旨、忘れずに」
「それは勿論ですわ。契約書にも書かれていますし。その時は契約通りに掛かった費用は全額子爵家持ちとなります」
「ふむ、良い覚悟だ。最初に言っておくが、私は友人の家であろうとも金にならない事をする気は全くない」
「はい。ビジネスに私情を挟まないのが私の信条です。もっとも兄は少々違うようですので、後から何か言ってくるかもしれませんね」
「君にかね?」
「いいえ、旦那様にです」
「私にか?」
「はい。兄は領地に行ったきりでこの五年程音沙汰ありません。父から元気に仕事をしているとしか聞いておりませんので」
「……随分疎遠だな」
「異性の兄妹などこのようなものですわ」
「……そうか。私は兄弟がいないので解らないがそうなのだろうな」
「ですから、兄から余計な金銭の話が出た場合は容赦なく切り捨ててくださって結構ですわ。友人だから、義理の兄弟になったのだからと甘い顔をすれば付け上がりますもの」
「ふっ、その通りだ。君は聡明な女性だ。これからよろしく頼む」
「こちらこそ」
私は差し出された手に自分の手を重ねて握り返しました。
こうして私と伯爵の契約結婚が成立致したのです。
私達の利害が一致している限り良好な関係を築いていけるでしょう。
寝室?
当然、別ですとも!
仮面夫婦にそんなものは必要としません。
――と、まぁそんな感じで始まった私達の結婚ですが、何故、このような契約結婚をしたかと言うとそれには訳があります。
それは今から半年前の事。
「アリックス、少しいいか?」
「お父様?お久しぶりですわね」
「ああ……」
「何か御用でも?」
「要がなければ来てはいけないのか?」
「そんな事はありませんが、お父様が私の屋敷に来るなど今までなかった事ですので」
警戒はしませんが、何か理由があると解釈するのが自然でしょう。
目を見開いて私を見る顔には「その通り」と書いてあるようです。
はあ……。どうやらこれは長くなりそうですね。仕方ありません。お茶の準備をいたしますか。
「それでどうされたんですか?」
紅茶を注ぎながら訊ねると、ようやく口を開き始めました。
本当に反応が遅いです。
「実はだな、最近になってお前の婚約話が浮上した」
「あらそうですか」
「なんだ。驚かんのか?」
「実家にいた頃に何度かあった事なので。それで?私の次の相手は誰でしょう?お兄様お勧めの例の男爵かしら?それとも三十歳年上の後妻かしら?」
「……すまん」
「まぁ、何の謝罪でしょう。当時、お兄様が仰った事でしょうか?それともお兄様が勝手に縁談を勧めようとした件でしょうか?」
「……」
「ほほっ。気にしてませんわ。お兄様からすれば『婚約者の心を繋ぎ留めれなかった私が悪い』という事ですものね。ただ、そういった内容は意地の悪い貴族内でのみ通用する事で、一般社会では通用しないという事はあの時に嫌と言う程理解なさってくださった筈ですわよね」
「あの子は領地に行ったきりだ」
「次期子爵ですもの。領地経営を勉強するのが遅かったくらいですわ」
「あの子も反省している」
「ええ、何かあればアレが自分だとバラされる事を恐れて、ですわよね」
「ぐぬぅ……そこまで言わなくても」
「事実ですので」
「しかしだな、そろそろ許してやったらどうだ?」
お父様、寝言は寝てから仰ってください。
兄が私にした仕打ちを忘れたのでしょうか?
それとも嫡男可愛さかしら?
ああ、もしかするとアレが原因でしょうか?
「はい」
「確認になるが、決して私を愛する事はしないでくれ」
「勿論ですわ」
「私が君を愛する事はない」
「解っております」
「万が一、君が私を愛する事があれば……」
「そのような事は天地がひっくり返ってもございません」
「……」
「契約書にもそう記載しておりますので、御安心ください」
「……そうだな」
「はい」
「だが、もしもという場合もある。その時はリード子爵家との事業は白紙に戻させてもらう。その旨、忘れずに」
「それは勿論ですわ。契約書にも書かれていますし。その時は契約通りに掛かった費用は全額子爵家持ちとなります」
「ふむ、良い覚悟だ。最初に言っておくが、私は友人の家であろうとも金にならない事をする気は全くない」
「はい。ビジネスに私情を挟まないのが私の信条です。もっとも兄は少々違うようですので、後から何か言ってくるかもしれませんね」
「君にかね?」
「いいえ、旦那様にです」
「私にか?」
「はい。兄は領地に行ったきりでこの五年程音沙汰ありません。父から元気に仕事をしているとしか聞いておりませんので」
「……随分疎遠だな」
「異性の兄妹などこのようなものですわ」
「……そうか。私は兄弟がいないので解らないがそうなのだろうな」
「ですから、兄から余計な金銭の話が出た場合は容赦なく切り捨ててくださって結構ですわ。友人だから、義理の兄弟になったのだからと甘い顔をすれば付け上がりますもの」
「ふっ、その通りだ。君は聡明な女性だ。これからよろしく頼む」
「こちらこそ」
私は差し出された手に自分の手を重ねて握り返しました。
こうして私と伯爵の契約結婚が成立致したのです。
私達の利害が一致している限り良好な関係を築いていけるでしょう。
寝室?
当然、別ですとも!
仮面夫婦にそんなものは必要としません。
――と、まぁそんな感じで始まった私達の結婚ですが、何故、このような契約結婚をしたかと言うとそれには訳があります。
それは今から半年前の事。
「アリックス、少しいいか?」
「お父様?お久しぶりですわね」
「ああ……」
「何か御用でも?」
「要がなければ来てはいけないのか?」
「そんな事はありませんが、お父様が私の屋敷に来るなど今までなかった事ですので」
警戒はしませんが、何か理由があると解釈するのが自然でしょう。
目を見開いて私を見る顔には「その通り」と書いてあるようです。
はあ……。どうやらこれは長くなりそうですね。仕方ありません。お茶の準備をいたしますか。
「それでどうされたんですか?」
紅茶を注ぎながら訊ねると、ようやく口を開き始めました。
本当に反応が遅いです。
「実はだな、最近になってお前の婚約話が浮上した」
「あらそうですか」
「なんだ。驚かんのか?」
「実家にいた頃に何度かあった事なので。それで?私の次の相手は誰でしょう?お兄様お勧めの例の男爵かしら?それとも三十歳年上の後妻かしら?」
「……すまん」
「まぁ、何の謝罪でしょう。当時、お兄様が仰った事でしょうか?それともお兄様が勝手に縁談を勧めようとした件でしょうか?」
「……」
「ほほっ。気にしてませんわ。お兄様からすれば『婚約者の心を繋ぎ留めれなかった私が悪い』という事ですものね。ただ、そういった内容は意地の悪い貴族内でのみ通用する事で、一般社会では通用しないという事はあの時に嫌と言う程理解なさってくださった筈ですわよね」
「あの子は領地に行ったきりだ」
「次期子爵ですもの。領地経営を勉強するのが遅かったくらいですわ」
「あの子も反省している」
「ええ、何かあればアレが自分だとバラされる事を恐れて、ですわよね」
「ぐぬぅ……そこまで言わなくても」
「事実ですので」
「しかしだな、そろそろ許してやったらどうだ?」
お父様、寝言は寝てから仰ってください。
兄が私にした仕打ちを忘れたのでしょうか?
それとも嫡男可愛さかしら?
ああ、もしかするとアレが原因でしょうか?
178
あなたにおすすめの小説
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる