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8.元婚約者の父親side
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馬鹿な子ほど可愛い――と言うのは本当だ。
実際、私と妻は馬鹿な一人息子が可愛かった。
社交的で明るい。
だが、勉強は嫌い。
幼少期から家庭教師を何度変えても成績が上がらなかった。
それでも私達夫婦が安心していられたのは息子の婚約者が優秀だったからだ。
友人の娘でもある。
しっかり者の優等生の彼女なら息子を任せられると確信していた。
だと言うのに――
「ありがとうございます、父上!」
「……」
「漸く彼女の素晴らしさを認めてくださったのですね!」
「……」
息子のジェフリーが婚約者のアリックスを一方的に婚約を解消した。「他に好きな女がいる」という理由で……。
その相手が男爵家の娘。
しかも庶子だと言うではないか。
二人揃って不貞を働いた自覚がなかった。しかも男爵家は結婚に乗り気だった。まぁ、そうだろうな。庶子の娘が貴族としての繋がりを持てるのだ。目を覆いたくなるような略奪愛だというのにだ。被害者であるアリックスが二人に慰謝料は賠償金を請求する事がなかったせいかもしれない。アリックスにはその権利があったにも拘わらずそうしなかった。何故か提案をしてきた。契約書まで用意して。その事にもっと疑問を持つべきだった。今となってはもう遅いが。
ジェフリーもジェフリーだ。浮気は不貞。これは浮気の罪に当たるのだ。アリックスに慰謝料を支払うのが筋というものだ!そもそも何故アリックスが慰謝料の支払いを要求しなかったのかを考えるげきだったのだ!
「父上が結婚を認めてくださって良かった!やっぱり家族に祝福されて結婚したいですから!」
本当は認めたくない。
あの男爵家の娘はジェフリーよりも頭が悪い。聞けば同じクラスメイトだというではないか。成績も下の下。礼儀作法もお粗末なものだ。辛うじてマナーを守れる程度だ。
あれでは領地経営もまともに出来ないだろう事は嫌でも分かる。
ジェフリーは嫡男だ。
お馬鹿な子だが嫁が賢ければ問題なく過ごせる――筈だったのに。
教育に失敗したせいだな。
もっと厳しく躾けるべきだった。
いや、アリックスが優秀だから彼女がいれば心配ないと放置した結果がコレか。笑えないな。
しかし、もう結婚に反対はできない。認めるしかない状況だった。
父親の嘆きを知らずに喜びに満ち溢れている息子に現実を突きつける事にした。
「ジェフリー、子爵家は分家から養子を貰う事にした」
「え……?」
「その子はまだ十歳になったばかりだが中々優秀だ」
「ち、父上……?」
「今から本格的に教育を施せば十分間に合う」
「は……?」
「だからな、ジェフリー。お前の義弟になる子供に爵位を譲る」
「っ!?」
「学園を卒業するまでは屋敷にいても構わない。だが、卒業後は家を出て行く事を勧める。勿論、恋人と暮らすのも構わない。結婚も勝手にすればいい。一応、祝い金は渡すが卒業後は家名を名乗る事は認めない」
「父上!?」
「安心しろ。籍は残しておいてやる。ただし我が家に無駄飯ぐらいの穀潰しはいらない。卒業後は自分で生計を賄うと約束するように」
「父上……何故、ですか……?僕は跡取りで……」
「お前は跡取りの資格を失った」
「な……何故……?」
どうやら息子は何も知らないらしい。
「ジェフリー、お前をモデルにしたとしか思えない本が出版されている」
「は?」
「人目を憚ることなく堂々と不貞を働く下半身が緩い男女のコメディ小説だ」
「へ?」
「読めば解るが、お前達を題材にしているとしか思えん。しかも売れている」
「……っ!?」
フィクションとなっているが読めばそれがジェフリーの話だと分かる。
恐らくアリックスが関わっている筈だ。作者と知り合いか、それとも雇ったのか……。リード子爵は「知らない」の一点張りだが、あの顔は何か隠している。それが何かは分からないが、ジェフリーを次の当主にする訳にはいかない。
信用問題に発展するからだ。
いや、本当は違う。言い訳にしかならない。本当の理由は小説の中の恥知らずな恋人達のモデルが息子だと知られたくないからだ。今でも社交界で嗤われているのだ。これ以上、恥を晒す事はできない。
妻は茶会でそれを話題にされ、「まるで御子息のような男性ね」「人目を気にせずに行為に励むだなんて。そういえば私の息子から聞きましたけれど、下級クラスの生徒が草陰で行為に及んでいるのを見かけた事があるとか。ええ、誰とは言いませんけどね」「破廉恥な行為に勤しむ貴族モドキが増えない事を祈るしかありませんわ」などと言われ、笑われる日々に遂に限界がきた。心を病み、床に伏した。
実際、私と妻は馬鹿な一人息子が可愛かった。
社交的で明るい。
だが、勉強は嫌い。
幼少期から家庭教師を何度変えても成績が上がらなかった。
それでも私達夫婦が安心していられたのは息子の婚約者が優秀だったからだ。
友人の娘でもある。
しっかり者の優等生の彼女なら息子を任せられると確信していた。
だと言うのに――
「ありがとうございます、父上!」
「……」
「漸く彼女の素晴らしさを認めてくださったのですね!」
「……」
息子のジェフリーが婚約者のアリックスを一方的に婚約を解消した。「他に好きな女がいる」という理由で……。
その相手が男爵家の娘。
しかも庶子だと言うではないか。
二人揃って不貞を働いた自覚がなかった。しかも男爵家は結婚に乗り気だった。まぁ、そうだろうな。庶子の娘が貴族としての繋がりを持てるのだ。目を覆いたくなるような略奪愛だというのにだ。被害者であるアリックスが二人に慰謝料は賠償金を請求する事がなかったせいかもしれない。アリックスにはその権利があったにも拘わらずそうしなかった。何故か提案をしてきた。契約書まで用意して。その事にもっと疑問を持つべきだった。今となってはもう遅いが。
ジェフリーもジェフリーだ。浮気は不貞。これは浮気の罪に当たるのだ。アリックスに慰謝料を支払うのが筋というものだ!そもそも何故アリックスが慰謝料の支払いを要求しなかったのかを考えるげきだったのだ!
「父上が結婚を認めてくださって良かった!やっぱり家族に祝福されて結婚したいですから!」
本当は認めたくない。
あの男爵家の娘はジェフリーよりも頭が悪い。聞けば同じクラスメイトだというではないか。成績も下の下。礼儀作法もお粗末なものだ。辛うじてマナーを守れる程度だ。
あれでは領地経営もまともに出来ないだろう事は嫌でも分かる。
ジェフリーは嫡男だ。
お馬鹿な子だが嫁が賢ければ問題なく過ごせる――筈だったのに。
教育に失敗したせいだな。
もっと厳しく躾けるべきだった。
いや、アリックスが優秀だから彼女がいれば心配ないと放置した結果がコレか。笑えないな。
しかし、もう結婚に反対はできない。認めるしかない状況だった。
父親の嘆きを知らずに喜びに満ち溢れている息子に現実を突きつける事にした。
「ジェフリー、子爵家は分家から養子を貰う事にした」
「え……?」
「その子はまだ十歳になったばかりだが中々優秀だ」
「ち、父上……?」
「今から本格的に教育を施せば十分間に合う」
「は……?」
「だからな、ジェフリー。お前の義弟になる子供に爵位を譲る」
「っ!?」
「学園を卒業するまでは屋敷にいても構わない。だが、卒業後は家を出て行く事を勧める。勿論、恋人と暮らすのも構わない。結婚も勝手にすればいい。一応、祝い金は渡すが卒業後は家名を名乗る事は認めない」
「父上!?」
「安心しろ。籍は残しておいてやる。ただし我が家に無駄飯ぐらいの穀潰しはいらない。卒業後は自分で生計を賄うと約束するように」
「父上……何故、ですか……?僕は跡取りで……」
「お前は跡取りの資格を失った」
「な……何故……?」
どうやら息子は何も知らないらしい。
「ジェフリー、お前をモデルにしたとしか思えない本が出版されている」
「は?」
「人目を憚ることなく堂々と不貞を働く下半身が緩い男女のコメディ小説だ」
「へ?」
「読めば解るが、お前達を題材にしているとしか思えん。しかも売れている」
「……っ!?」
フィクションとなっているが読めばそれがジェフリーの話だと分かる。
恐らくアリックスが関わっている筈だ。作者と知り合いか、それとも雇ったのか……。リード子爵は「知らない」の一点張りだが、あの顔は何か隠している。それが何かは分からないが、ジェフリーを次の当主にする訳にはいかない。
信用問題に発展するからだ。
いや、本当は違う。言い訳にしかならない。本当の理由は小説の中の恥知らずな恋人達のモデルが息子だと知られたくないからだ。今でも社交界で嗤われているのだ。これ以上、恥を晒す事はできない。
妻は茶会でそれを話題にされ、「まるで御子息のような男性ね」「人目を気にせずに行為に励むだなんて。そういえば私の息子から聞きましたけれど、下級クラスの生徒が草陰で行為に及んでいるのを見かけた事があるとか。ええ、誰とは言いませんけどね」「破廉恥な行為に勤しむ貴族モドキが増えない事を祈るしかありませんわ」などと言われ、笑われる日々に遂に限界がきた。心を病み、床に伏した。
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