【完結】平安時代絵巻物語~皇子の挑戦~

つくも茄子

文字の大きさ
34 / 119
~北山の章~

第34話閑話 内大臣(蔵人の中将の父親)side 

しおりを挟む

「なんだと!?寝言を言うのも大概にせよ!帝を迎えに北山の寺院に二の宮様と共に出向いたと思ったら女に誑かされて戻るとは何事だ!!!」

「父上……」

「その田舎娘はお前の地位と財産が目当てだ!そんな事も分からんのか!!!」

「違います!かの姫君は私が内大臣家の息子だということは一切知りません!世慣れない姫なのです。幼くして父君を亡くし、尼になった母君の代わりに必死に女主人であろうとする姿に惹かれたのです。自分に仕えている者にも心を配って守ろうとする。仕える者の不始末は主人である自分のせいだと思う責任感の強い女子なのです。その一方で、自分を含めた家の者たちに対する侮辱行為は決して許さない誇り高さもある。私など姫君に刃で喉元を突き付けられたほどです」

「……物騒な姫だな」

「何を言いうのです!誇りを傷つけられたら屈することなく相手を殺す覚悟を持つ!自分の仕える者達も守ろうとする責任の強さ、相手を処罰するために武器を持つ気骨、惚れ惚れする誇り高さではないですか!」

「……だがな、お前には中務卿なかつかさきょうみやの姫君との縁組があるのだぞ?」

「お断りください!」

「なに!?」

「北山の姫君を『北の方』として迎えますので、中務卿なかつかさきょうみやの姫君を娶ることは出来ません」

「……ひなびた田舎娘は『側室』にして、中務卿なかつかさきょうみやの姫君を『正室』にすればいいだろう」

「お断りします!私の妻は唯一人『北山の姫君』だけであります!」

「……何時までも子供のような事は言うな。後ろ盾のある、両親が揃った姫君を妻に娶った方が今後の出世も期待できるのだ!なにより、お前を大事に扱ってくれる!!!」

「御安心ください、父上。私は出世に全く興味がありません!」

「~~~~~っ。少しは興味を持て!お前は私の一人息子なんだぞ!」

「お言葉ですが、父上。同僚たちは出世欲に取り付かれた輩ばかり。見ていて嘆かわしいほどです。お互いに競い合い高め合うならいざ知らず、相手の足を引っ張るばかりの輩など友とは呼べません。何度、世の無常を感じた事か分からない程です。しかし、北山の姫君を見て思ったのです。私の悩みなど取るにならぬ事なのだと。今を必死に生きている姫君に強さは私に世俗の尊さを教えてくれたのです」

息子よ……何を言っているのだ?
私には理解出来んぞ?

「既に我が家の宝剣も渡してあります!」

「……い、いま、なんと言った……?」

「はい。ですから家宝の宝剣を北山の姫君にお渡ししてきました!お互いの再会の約束として!」

「お、お、お……」

「父上?如何いかがされました?」

「愚か者!!!暫く謹慎しておれ!!!!」

「父上!?」

あの宝剣を田舎娘に渡しただと~~~~!?
アレはただの家宝ではない!

天智天皇様から下賜された品だ!藤原氏の直系の証ともいえる代物を!!






数日後――



はぁ~~~~~~……。
一人息子だからと甘やかした事はない。
大臣家の嫡男ゆえに厳しく躾けたつもりでいたが……まさか女でつまずくとは。


大殿おおとの

生駒いこまか。先の按察使あぜちの大納言の姫君の件、分かったか?」

「はい。大納言家で尼になられた母君とわずかばかりの家人たちとで暮らしておいででした。
周辺の聞き込みもしてきましたが、美しく淑やかな姫君だと、悪くいうものはおりませんでした。とても若様が申されたような『女武将』のような噂は一切聞きませんでした。ただ……」

「なんだ?」

「どうやら姫君には将来を誓い合った良い人が居るという噂が……」

「なに!?」

まさかと思うがうちの馬鹿息子ではあるまいな!

「随分と身なりの良い男のようで、どこかの宮家の当主ではないかという話です」

ほっ。息子ではなかったか。

「なら、奴の片思いということか。
それなら話は早い。生駒、大納言家の姫君から我が家の宝剣を返して貰ってこい」

「畏まりました」

結婚の約束した相手のいる姫だ。
あの馬鹿息子も目が覚めるだろう。
なに、長い人生、女に振られる事の十や二十は普通にある事だ。





翌日――



「相手は、兵部卿の宮だと?」

「はい。ですが…どうも様子がおかしいのです」

「どういうことだ?」

「大納言家の女房たちから聞いた話ですが兵部卿の宮様の姫君への求婚は兵部卿の宮様の独り相撲のようなのです」

「そうなのか?だが噂になっておるのだろう?」

「はい。兵部卿の宮様は周辺で噂を流して姫君との婚姻を迫っているようなのです」

「……追い詰めて婚姻に持っていくつもりなのだろう」

「はい、そのようです。家人たちは勘気な本妻のいる兵部卿の宮様を婿として迎え入れるつもりは無いようですが、かといって他に求婚者もいらっしゃらない御様子でした」

「美しい姫君なのだろう?……兵部卿の宮か…」

「はい、兵部卿の宮様が『近々、亡き按察使大納言の姫と婚儀を行う予定だ』と吹聴しているのが原因のようです。他の者ならいざ知らず、流石に兵部卿の宮様を相手取って姫君に求婚する強者はいないようで」

うちの馬鹿息子は名乗りを上げたぞ?
しかし兵部卿の宮の想い人か…厄介だな。

「それと…」

生駒いこま

「若様が、先ほど馬にまたがって出て行かれたのですが……」

な、なに~~~~~~~!!!
あの馬鹿が!!!

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...