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~後涼殿の章~
第38話悪意ある噂、疑われた更衣
しおりを挟む「懐妊……!?」
「『後涼殿』を追われた更衣殿が?」
「なんとも奇妙な事もあるものよ」
「まことに。もう、桐壺の更衣以外の女人が懐妊する事は無いと思っていたのに」
「いや、弘徽殿の女御様にはお召がある」
「かの女御様は特別よ」
「しかし…おかしくは無いか?」
「何がだ?」
「後涼殿の更衣殿は今は『淑景北舎』のはず。どうやって帝の寵愛を得たのだ?」
「そういえば……」
「もしや、主上の御子ではないのではあるまいか?」
「まさか!」
「ここだけの話、更衣には他の者が忍んでいるのではないかという噂がある」
「そのような噂など聞いた事は無いぞ?」
「噂は一部しか出回っていないらしい。『後涼殿』を上局にされた方の女房達が申していた」
「随分、詳しいではないか。また、新しい女人を口説き落としたのか?」
「内裏の情報を知るのにはこの手が一番よいのだ」
「悪よの」
「「「「「「ほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっ!!!!」」」」」」
――桐壺の局――
「ふてい?じゃれが?(訳:不貞?誰が?)」
「元後涼殿の更衣様の事を悪し様に噂する者がいるのです」
「なんじぇ?(訳:なんで?)」
桐壺の更衣の評判が悪いのは分かる。
だって、桐壺帝の寵愛を一身に受けて既に内裏の女御と更衣の全てを敵にまわしている。
母の良い噂なんて生まれてこのかた聞いた事がない。
その点、元後涼殿の更衣は『教養ある淑やかな更衣殿』だ。
局を追い払われた一件からしても、桐壺の更衣の被害者として同情されてきた。
「主上の寵愛は今まで桐壺の更衣様の御身にだけございました。
唯一の例外は弘徽殿の女御様でございますが、これは右大臣家の威光もあっての事と囁かれておりましたが、元後涼殿の更衣様には確かな後ろ盾がございません。
言い方は悪いですが、半ば捨てられた更衣として有名であったのも不味かったのです。
『一体、何時、帝の御手がついたのか』と疑問に思う者達が出てきてもおかしくはない状況なのです」
「こーいはきたやまにどうこうしてちゃよ?(訳:更衣は北山に同行してたよ?)」
「二の宮様、元後涼殿の更衣様が主上たちと同行なさった事は一部の者しか存じあげません。
その一部の者の多くは桐壺の更衣様の御実家の家人達なのです。
勿論、同行された女房達の多くも桐壺の更衣様付きの女房が殆どでございます。
この度の桐壺の更衣様の二度目の懐妊は誠に目出度いながらも、一方で、内裏の勢力を危うくさせてもいらっしゃるのです」
どういうこと?
勢力っていっても、母親にそんな力はないよ?
他の妃達が陰口を叩くように、更衣の母が何人皇子を産んだ処で臣籍に降るのは目に見えている。良くて、『無位の親王』だ。
「うしろだてがにゃいのに?(訳:後ろ盾がないのに?)」
「それがそうとも言えないのです」
なにかあるの?
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