3 / 54
本編
3.保護者は姉
しおりを挟む暫く待つとドアホンが鳴り誰かが入ってきた。軽やかな足音を立てながら現れた人物。それは、姉のオリヴィアだった。
「お邪魔するわよ」
俺の姿を見ると姉はにやりと意地悪く笑うとズカズカと部屋の中に入ってくる。遠慮という単語は姉の辞書にはないらしい。
「やっぱりこうなったのね。アンタって本当にバカ」
腕を組んで罵る姉の態度が鼻について仕方なかったけど文句は飲み込んでおく。だって今の状況は分が悪いし、姉に勝てる気が全くしないからだ。優秀な姉はこの国でも名の知れた大学に通い、卒業後は弁護士の道に進んだ。今は事務所を立ち上げている。国際弁護士として超優秀な女性だ。頭はキレるし、見た目も整っていてスタイルもいい。バリバリ仕事が出来る女の理想形だろう。そんな姉の一番の特技が「口」。論理的思考で相手を言い負かす術とでも言うべきだろうか。とにかく理論で敵をねじ込むのが昔から得意な姉だ。
弁護士という職業はまさに姉のためにあるようなものだろう。天職そのものだ。
姉を敵に回した弁護士と検察官は大抵泣いて白旗を上げる。泣くまでイジメ倒すとまで言われている。ついたあだ名は「鉄の女」。どこの首相だ。第二のマーガレット・サッチャー と陰で囁かれている。まあ、何が言いたいのかと言うと、俺が口で勝てる相手じゃないという事だ。
「とりあえずアンタ、シャワー浴びなさい」
「は?」
「臭いのよ。玄関に置いてある消臭スプレーを使わなかったみたいね。全体的に臭いけど、足が特に臭いわ。鼻が曲がりそうなくらいにね。だから近寄らないでちょうだい」
「……」
たった一人の弟に言うセリフじゃない。
もっと他に言い方があるだろ。革靴をはいてる人間の大半は足が臭いはずだ。俺だけじゃない。いや、その前に国の半分以上の男の足裏は臭い筈だ!
「何ぼさっとしてるの、さっさと行きなさい」
傷心中の弟を労わる気持ちはないのかな?でも姉に逆らうと後が怖いのを知っているので大人しく従った。なにしろ、口がまわるのと同じくらいに手と足が出るから。何度、鉄骨制裁を受けた事か……。
その後、何故か姉が用意してくれた服に着替えさせられ、マンションを後にした。
「姉さん、何処に行くの?」
「生活能力皆無のあんたでも人間の生活ができる場所よ」
どういう意味だ!?
まるで俺が人間の生活ができないみたいじゃないか!!
失礼過ぎる。
後部座席に座っているエリックなんか姉に同意すると言わんばかりに頷いているし。あんまりだ。二人とも俺を何だと思ってるんだよ!!
40
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる