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番外編~イートン校の誇りが守られた日~
37.交換留学1
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本来のイートン・カレッジサマースクールは夏休みに行われます。当然、寮生はいません。
この話の留学制度は全くのオリジナルで展開しています。
********
イートン校はイギリス屈指の名門校である。
数多くの著名人を輩出してきたイートン校の存在は多くの学校に大きな影響を与えてきた。良い面も悪い面も含めて――――
それは遠く離れた日本も例外ではない。
日本が開国した際、西洋の学校教育を充実させるためにイートン校を参考にして造られた学校は数多く、交換留学を盛んに行っていた。
「どうするべきか……」
「どうするもなにも今回は無しという事でいいじゃないか」
「いや、そうもいかないだろう。先方になんと説明するんだ?」
「それこそ適当に言っておけばいい。寮の改築とかなんとか」
「適当すぎる。そんな言い訳が通用するか!」
「なんだと!!」
教師達は頭を悩ませていた。
「し、しかし寮生活を送れば嫌でもバレるのは必須だ」
「いや、その前にマクスタードの所業を知れ渡る訳には……我が国の恥を晒すことになる」
「だからと言って交換留学だぞ!? 彼と交流させるのは危険だ!!!」
「ならば、どうしろと?」
皆一様に押し黙り頭を抱えた。
「やはり、今年の受け入れは見送るべきだと思いますが」
「しかし毎年恒例の行事だ。それも断われば我が校の格に関わる問題になるかもしれない!!」
教師達は結論を出す事ができなかった。
どちらに転んでも面子を潰すことになる。面子もプライドも全て捨ててしまえば楽だろうがそれだけは決してできない選択であった。結局、答えが出ることはなかった。
そして後日。結論を出した彼らは決断を下す事となる。
「今年も例年通り受け入れる」と。
知らない人が聞けば捨て身の選択としか思えないだろう。だが彼らの思いはそれではなかった。むしろ逆――――今こそイートン校の威厳を示すべき時だと決意したのだ。
「はい?もしかしてロイドの事ですか?」
日本人の留学生たちは既にロイド・マクスタードを知っていた。
イートン校の教員たちは一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「えっと、つまり君達は彼と親しいということかね?」
教員の一人が質問をした。
「はい。彼が日本に留学してきた時からずっと交流を続けています」
日本人留学生の少年はとても爽やかな笑顔を見せた。
そうして教師達は気付いた。
あの学生は交換留学で日本に赴いていたと。受け入れる事に頭を悩ませていたが、既に危険物を出国させていた事実に思い至り顔面蒼白になった。
誰だよ?!許可出した奴は!!!内心叫びながら責任者は出てこいと怒鳴りつけたくなった。
因みに、許可申請を出したのはミュレー前学長である。
それを後に知った教員一同は卒倒しそうになったのは言うまでもない。ミュレー前学長は大らかだ。細かい事は気にしない。それは大雑把な性格とも言えた。
なんにせよ、ロイド・マクスタードは一ヶ月、日本に滞在していた。
日本にも寮は存在する。
だが、留学生の希望によってホストファミリーの元で暮らす事ができた。
これまた最悪な事に、ロイド・マクスタードは「日本の一般家庭の生活を体験したい」という理由でホストファミリーとの生活を希望した。
これを知った教員の数名は卒倒した。
自国の恥を既に晒していたのだから当然だろう。
日本人留学生はロイド・マクスタードが生活能力無しの男である事を理解していたのだ。
この話の留学制度は全くのオリジナルで展開しています。
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イートン校はイギリス屈指の名門校である。
数多くの著名人を輩出してきたイートン校の存在は多くの学校に大きな影響を与えてきた。良い面も悪い面も含めて――――
それは遠く離れた日本も例外ではない。
日本が開国した際、西洋の学校教育を充実させるためにイートン校を参考にして造られた学校は数多く、交換留学を盛んに行っていた。
「どうするべきか……」
「どうするもなにも今回は無しという事でいいじゃないか」
「いや、そうもいかないだろう。先方になんと説明するんだ?」
「それこそ適当に言っておけばいい。寮の改築とかなんとか」
「適当すぎる。そんな言い訳が通用するか!」
「なんだと!!」
教師達は頭を悩ませていた。
「し、しかし寮生活を送れば嫌でもバレるのは必須だ」
「いや、その前にマクスタードの所業を知れ渡る訳には……我が国の恥を晒すことになる」
「だからと言って交換留学だぞ!? 彼と交流させるのは危険だ!!!」
「ならば、どうしろと?」
皆一様に押し黙り頭を抱えた。
「やはり、今年の受け入れは見送るべきだと思いますが」
「しかし毎年恒例の行事だ。それも断われば我が校の格に関わる問題になるかもしれない!!」
教師達は結論を出す事ができなかった。
どちらに転んでも面子を潰すことになる。面子もプライドも全て捨ててしまえば楽だろうがそれだけは決してできない選択であった。結局、答えが出ることはなかった。
そして後日。結論を出した彼らは決断を下す事となる。
「今年も例年通り受け入れる」と。
知らない人が聞けば捨て身の選択としか思えないだろう。だが彼らの思いはそれではなかった。むしろ逆――――今こそイートン校の威厳を示すべき時だと決意したのだ。
「はい?もしかしてロイドの事ですか?」
日本人の留学生たちは既にロイド・マクスタードを知っていた。
イートン校の教員たちは一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「えっと、つまり君達は彼と親しいということかね?」
教員の一人が質問をした。
「はい。彼が日本に留学してきた時からずっと交流を続けています」
日本人留学生の少年はとても爽やかな笑顔を見せた。
そうして教師達は気付いた。
あの学生は交換留学で日本に赴いていたと。受け入れる事に頭を悩ませていたが、既に危険物を出国させていた事実に思い至り顔面蒼白になった。
誰だよ?!許可出した奴は!!!内心叫びながら責任者は出てこいと怒鳴りつけたくなった。
因みに、許可申請を出したのはミュレー前学長である。
それを後に知った教員一同は卒倒しそうになったのは言うまでもない。ミュレー前学長は大らかだ。細かい事は気にしない。それは大雑把な性格とも言えた。
なんにせよ、ロイド・マクスタードは一ヶ月、日本に滞在していた。
日本にも寮は存在する。
だが、留学生の希望によってホストファミリーの元で暮らす事ができた。
これまた最悪な事に、ロイド・マクスタードは「日本の一般家庭の生活を体験したい」という理由でホストファミリーとの生活を希望した。
これを知った教員の数名は卒倒した。
自国の恥を既に晒していたのだから当然だろう。
日本人留学生はロイド・マクスタードが生活能力無しの男である事を理解していたのだ。
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