【完結】離婚の危機!?ある日、妻が実家に帰ってしまった!!

つくも茄子

文字の大きさ
37 / 54
番外編~イートン校の誇りが守られた日~

37.交換留学1

しおりを挟む
 本来のイートン・カレッジサマースクールは夏休みに行われます。当然、寮生はいません。
 この話の留学制度は全くのオリジナルで展開しています。
 

 ********

 


 イートン校はイギリス屈指の名門校である。
 数多くの著名人を輩出してきたイートン校の存在は多くの学校に大きな影響を与えてきた。良い面も悪い面も含めて――――
 
 
 それは遠く離れた日本も例外ではない。
 日本が開国した際、西洋の学校教育を充実させるためにイートン校を参考にして造られた学校は数多く、交換留学を盛んに行っていた。




「どうするべきか……」

「どうするもなにも今回は無しという事でいいじゃないか」

「いや、そうもいかないだろう。先方になんと説明するんだ?」

「それこそ適当に言っておけばいい。寮の改築とかなんとか」

「適当すぎる。そんな言い訳が通用するか!」

「なんだと!!」

 教師達は頭を悩ませていた。

「し、しかし寮生活を送れば嫌でもバレるのは必須だ」

「いや、その前にマクスタードの所業を知れ渡る訳には……我が国の恥を晒すことになる」

「だからと言って交換留学だぞ!? 彼と交流させるのは危険だ!!!」

「ならば、どうしろと?」

 皆一様に押し黙り頭を抱えた。
 
「やはり、今年の受け入れは見送るべきだと思いますが」
 
「しかし毎年恒例の行事だ。それも断われば我が校の格に関わる問題になるかもしれない!!」

 教師達は結論を出す事ができなかった。
 どちらに転んでも面子を潰すことになる。面子もプライドも全て捨ててしまえば楽だろうがそれだけは決してできない選択であった。結局、答えが出ることはなかった。

 そして後日。結論を出した彼らは決断を下す事となる。
 
「今年も例年通り受け入れる」と。


 知らない人が聞けば捨て身の選択としか思えないだろう。だが彼らの思いはそれではなかった。むしろ逆――――今こそイートン校の威厳を示すべき時だと決意したのだ。










「はい?もしかしてロイドの事ですか?」

 日本人の留学生たちは既にロイド・マクスタードを知っていた。
 イートン校の教員たちは一瞬、何を言われているのか分からなかった。

「えっと、つまり君達は彼と親しいということかね?」

 教員の一人が質問をした。
 
「はい。彼が日本に留学してきた時からずっと交流を続けています」

 日本人留学生の少年はとても爽やかな笑顔を見せた。
 そうして教師達は気付いた。
 あの学生は交換留学で日本に赴いていたと。受け入れる事に頭を悩ませていたが、既に危険物を出国させていた事実に思い至り顔面蒼白になった。


 誰だよ?!許可出した奴は!!!内心叫びながら責任者は出てこいと怒鳴りつけたくなった。
 因みに、許可申請を出したのはミュレー前学長である。
 それを後に知った教員一同は卒倒しそうになったのは言うまでもない。ミュレー前学長は大らかだ。細かい事は気にしない。それは大雑把な性格とも言えた。


 なんにせよ、ロイド・マクスタードは一ヶ月、日本に滞在していた。
 日本にも寮は存在する。
 だが、留学生の希望によってホストファミリーの元で暮らす事ができた。

 これまた最悪な事に、ロイド・マクスタードは「日本の一般家庭の生活を体験したい」という理由でホストファミリーとの生活を希望した。

 これを知った教員の数名は卒倒した。

 自国の恥を既に晒していたのだから当然だろう。

 日本人留学生はロイド・マクスタードが生活能力無しの男である事を理解していたのだ。



 


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

処理中です...