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20年後
27.公爵視点2
しおりを挟む国王となった兄と二人三脚で血反吐を吐く思いで基盤を整えた。そうして気付いたら十年が経過していた。二年前に待望の世継ぎを儲けた兄。国内は安定していた。そうすると、どうだろう。周囲の者達が「嫁を貰え」と煩い。どうやらいつまでも独り身の私に男色家の噂が出ているようだ。
冗談じゃない!
私は異性愛者だ!!
平和になったらなったで別の厄介事が起きるらしい。
バカげた噂を払拭させるために嫁探しが急務になった。
公爵夫人になれる女性。
そして兄家族の障害にならない家柄。
国内では少々難しかった。
「ロベール王国の貴族はどうだ?」
「ロベール王国ですか?」
「ああ、最近、かの国の貴族が他国との繋がりを欲しているそうだ」
「王太子が廃嫡されたと聞きましたが……」
「それもあるのだろうな。王太子は空席のままらしい」
「それはまた」
兄の話を聞いて、ロベール王国の貴族でもいいかもしれないと思った。
国外の繋がりを求めているのなら、こちらに都合の良い条件を飲ませる事も出来る。外国籍の女性なら兄夫婦とその子供たちに丁寧に接するだろう。悪くないと判断した。
それから半年後、結婚式を目前とした私の前にミリアリアが現れた。
彼女は一ヶ月前に未亡人となっていた。
私がこの男ならばと見込んだ彼は、もうこの世にはいない。
枷が外れた。
あの時、彼女の手を取るべきでは無かった。
それでも……。
私の耳元で悪魔が囁いた。
“花嫁は他国の女性。この国では何の力もない伯爵令嬢だ。立場はこちらが上だ”
今思い返しても、傲慢な考えだ。
何も知らずに嫁いで来た異国の花嫁。
結婚式が終わると同時に幽閉した。
そして、十八年後、今度は私が幽閉されている。
神殿からの破門宣告は混乱を呼んだ。
国内だけでなく国外からも厳しい批判にさらされた。
そんな中で起きたのだ、王太子の婚約解消。
大国側が断ってきた。
他国の花嫁を無慈悲に扱う国に王女を嫁がす事はできない――――
レオーナを引き合いに出された。
あの大国は元々レオーナのファンだったな。
報復のつもりだろうか?
そう思った。
個人的な感情で婚約を解消するなど以ての外だ。文句を言わなければと息巻いていた私に王太子は冷ややかだった。
「バカですか。これは普通の反応です。他国の貴族令嬢が無碍に扱われて死因が謎に包まれているんですよ?花嫁側からしたらこの国に嫁ぐ事態が罰ゲームのようなものだ」
「そんなことは!」
「あるんです。残念ながら。公爵が知らなかっただけです。いや、この場合見なかったと言った方がいいのかもしれませんね」
「どういうことだ?」
「王女との婚約は二年前に決まりましたが、それ以前は酷い物だったでしょう」
「ひどい?」
何のことだ?
酷いとは?
「あぁ、もう結構。公爵が王家に全く興味がないのは理解できました。十代後半になっても婚約者一人いない王太子なんて大陸中探しても私だけでしょう」
王太子の言葉に絶句した。
婚約者がいなかった?
兄上からは「決めかねているんだ。候補はいるんだがな」と――
あれは嘘だったのか?
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