悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

文字の大きさ
28 / 85
20年後

27.公爵視点2

しおりを挟む

 国王となった兄と二人三脚で血反吐を吐く思いで基盤を整えた。そうして気付いたら十年が経過していた。二年前に待望の世継ぎを儲けた兄。国内は安定していた。そうすると、どうだろう。周囲の者達が「嫁を貰え」と煩い。どうやらいつまでも独り身の私に男色家の噂が出ているようだ。

 冗談じゃない!
 私は異性愛者だ!!

 平和になったらなったで別の厄介事が起きるらしい。
 
 バカげた噂を払拭させるために嫁探しが急務になった。
 
 公爵夫人になれる女性。
 そして兄家族の障害にならない家柄。

 国内では少々難しかった。

「ロベール王国の貴族はどうだ?」

「ロベール王国ですか?」

「ああ、最近、かの国の貴族が他国との繋がりを欲しているそうだ」

「王太子が廃嫡されたと聞きましたが……」

「それもあるのだろうな。王太子は空席のままらしい」

「それはまた」

 兄の話を聞いて、ロベール王国の貴族でもいいかもしれないと思った。
 国外の繋がりを求めているのなら、こちらに都合の良い条件を飲ませる事も出来る。外国籍の女性なら兄夫婦とその子供たちに丁寧に接するだろう。悪くないと判断した。


 それから半年後、結婚式を目前とした私の前にミリアリアが現れた。
 彼女は一ヶ月前に未亡人となっていた。

 私がこの男ならばと見込んだ彼は、もうこの世にはいない。

 枷が外れた。

 あの時、彼女の手を取るべきでは無かった。
 それでも……。

 私の耳元で悪魔が囁いた。

 “花嫁は他国の女性。この国では何の力もない伯爵令嬢だ。立場はこちらが上だ”
 

 今思い返しても、傲慢な考えだ。
 何も知らずに嫁いで来た異国の花嫁。
 結婚式が終わると同時に幽閉した。


 そして、十八年後、今度は私が幽閉されている。



 神殿からの破門宣告は混乱を呼んだ。
 国内だけでなく国外からも厳しい批判にさらされた。
 
 そんな中で起きたのだ、王太子の婚約解消。
 大国側が断ってきた。


 他国の花嫁を無慈悲に扱う国に王女を嫁がす事はできない――――

 
 レオーナを引き合いに出された。
 
 あの大国は元々レオーナのファンだったな。
 報復のつもりだろうか?
 そう思った。
 個人的な感情で婚約を解消するなど以ての外だ。文句を言わなければと息巻いていた私に王太子は冷ややかだった。

「バカですか。これは普通の反応です。他国の貴族令嬢が無碍に扱われて死因が謎に包まれているんですよ?花嫁側からしたらこの国に嫁ぐ事態が罰ゲームのようなものだ」

「そんなことは!」

「あるんです。残念ながら。公爵が知らなかっただけです。いや、この場合見なかったと言った方がいいのかもしれませんね」

「どういうことだ?」

「王女との婚約は二年前に決まりましたが、それ以前は酷い物だったでしょう」

「ひどい?」

 何のことだ?
 酷いとは?

「あぁ、もう結構。公爵が王家に全く興味がないのは理解できました。十代後半になっても婚約者一人いない王太子なんて大陸中探してもだけでしょう」

 王太子の言葉に絶句した。
 婚約者がいなかった?
 兄上からは「決めかねているんだ。候補はいるんだがな」と――

 あれは嘘だったのか?
 

 

しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?

雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。 理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。 クラリスはただ微笑み、こう返す。 「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」 そうして物語は終わる……はずだった。 けれど、ここからすべてが狂い始める。 *完結まで予約投稿済みです。 *1日3回更新(7時・12時・18時)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

処理中です...